終端速度と空気抵抗〜雨粒の速さが増えなくなるまで
直径 の雨粒は、秒速 ほどで落ちてきます。雲の高さが でも でも、地面に着くときの速さは変わりません。
自由落下なら で秒速 に達する計算です。実際にそうなっていたら、雨の日に外へ出られない。
空気抵抗が速さとともに増え、あるところで重力とつり合うためです。そこから先は加速しません。
空気抵抗には 2 つの型がある
抵抗の大きさは速さで決まりますが、決まり方が 通りあります[2]。
遅くて小さいものでは、速さに比例します。粘性が効く領域で、球ならストークスの法則が使えます[1]。
速くて大きいものでは、速さの 乗に比例します。前方の空気を押しのける効果が主になる領域です[1]。
は形で決まる抵抗係数、 は空気の密度、 は進行方向から見た断面積。ふだん目にする落下は、ほとんどがこちらの型です。
つり合ったところで頭打ちになる
乗の型で、重力とつり合う速さを出します。
これが終端速度です[1]。質量が大きいほど速く、断面積が大きいほど遅い。
質量は平方根で効くので、 倍重くしても 倍にしかなりません。効き方が鈍い。
例:雨粒
直径 の水滴の質量は 、断面積は です。球の抵抗係数を 、空気の密度を とします。
直径が になると秒速 ほど[3]。これが雨粒のだいたい上限で、これより大きい水滴は落ちながら分裂します。
大きいほど速いのは、質量が半径の 乗で増えるのに対し、断面積は 乗でしか増えないためです。 は半径の平方根に比例して伸びる。
例:霧の粒は落ちてこない
直径 の霧の粒では、速さも大きさも小さいので比例の型を使います[1]。
ストークスの法則と重力をつり合わせると、次の形になります。
秒速 。 落ちるのに 日近くかかります。
雲が浮いて見えるのはこのためです。浮いているのではなく、落ちる速さがゆっくりすぎて、上昇気流に負けている。
乗の型。秒速 で落ちてくる
比例の型。秒速 で、事実上浮いている
例:スカイダイバー
質量 、大の字の姿勢で断面積 、抵抗係数 とすると、終端速度は秒速 です[1]。
頭から突っ込む姿勢に変えると、断面積が 、抵抗係数も に下がります。同じ人の終端速度が秒速 まで上がる。
質量は変わっていません。変わったのは形だけです。
| 姿勢 | 断面積 | 終端速度 |
|---|---|---|
| 大の字 | ||
| 頭から |
パラシュートを開くと断面積が一気に増え、終端速度は秒速 ほどに落ちます。着地できる速さまで下げるのが、あの布の役目です。
近づき方は指数的
乗の型で運動方程式を解くと、速さの時間変化が出ます。
のとき なので、終端速度の に達します[2]。
大の字のスカイダイバーなら 秒。飛び降りて 秒ほどで、もう最高速に近い。
厳密には終端速度に届きません。いくら待っても そのものにはならず、限りなく近づくだけです。
落ち始めの数秒は、空気抵抗がまだ小さいので自由落下とほぼ同じに動きます。
だから短い距離の落下実験では、抵抗を無視した式でも十分合う。距離が伸びるほど合わなくなる。
投げ上げは対称でなくなる
抵抗がなければ、上りにかかる時間と下りにかかる時間は同じでした。戻ってきたときの速さも初速と同じ。
抵抗があると、この対称性が崩れます。上りでは重力と抵抗が同じ向きにはたらくので減速が速く、下りでは向きが逆になるので加速が鈍い。
結果として、上りより下りのほうが長くかかります。戻ってきたときの速さも、投げ上げた速さより小さい。
上りは重力と抵抗が同じ向きにはたらく
下りは重力と抵抗が逆を向く
上りのほうが短時間で終わる
戻ってきた速さは初速より小さい
大きいものほど速く落ちる
同じ形で大きさだけ違う物体を比べます。質量は長さの 乗、断面積は 乗で増える。
大きいほど速い。半径 のひょうは時速 を超えます[3]。
逆に小さいものほど落ちにくい。虫が高いところから落ちても平気なのは、この効き方のためです。体重に対して断面積が大きく、終端速度が低い。
見積もりで確かめる
終端速度の式は、単位で組み立てを確かめられます。 は 、 も で 。両辺そろっています。
もう一つの確かめ方は極端な場合です。 を に近づければ は無限に大きくなり、抵抗のない自由落下に戻る。 を大きくすれば は に近づき、落ちなくなります。
どちらも予想どおりの向きに動きました。式を書き写すときに や を分子と分母で入れ替えていると、この確認で気づけます。
同じ材質でできた つの球があり、片方の半径がもう片方の 倍です。終端速度の比はいくつですか。
落ちるものの速さは、重さではなく重さと断面積の比で決まる。雨粒と霧、人とパラシュート、どれも同じ 本の式の上に並んでいます。















質量は半径の 3 乗、断面積は 2 乗で増えるので、vT は半径の平方根に比例します。4=2 で 2:1 です。