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重心系で見る弾性衝突〜速度が反転するだけになる見方

の球が秒速 で、止まっている の球に弾性衝突します。答えは秒速 と 。

公式に代入しても出ますが、覚える式が 本あって符号を間違えやすい。重心といっしょに動きながら見ると、式が要らなくなります。

その視点では、どちらの球も速度の向きが反転するだけ[1]。大きさは変わりません。

弾性衝突は条件が 2 本

衝突では運動量がいつでも保存します。弾性衝突では、これに運動エネルギーの保存が加わる[2]。

未知数が つで式も 本なので解けます。ただし 本目が 乗を含むので、素直に解くと計算が重い。

本目を 次の式に置きかえられます。整理すると、次の関係が出てくる[2]。

近づく速さと遠ざかる速さが等しい、という意味です。相対速度は大きさが変わらず、符号だけが反転する。

重心はぶつかっても等速で動き続ける

球をまとめて つの系と見ると、外から力がはたらいていません。だから重心は等速直線運動を続けます[4]。

例の値では 。衝突の前も後も、この速さで動き続ける点があります。

その点といっしょに動く座標系を重心系といいます。この系では、 球の運動量の和がいつでも です[3]。

重心から見ると符号が変わるだけ

重心系での速度を と書きます。運動量の和が なので、 球は必ず反対向きに動いている。

衝突後も運動量の和は 、運動エネルギーの和も変わりません。この つを同時に満たすのは、両方の速さがそのままで向きだけが逆になる場合だけです[1]。

すり抜けて何も起きない場合を除けば、これしか残りません。弾性衝突の中身は、重心系で見れば向きの反転だけです。

重心の速度 V を引いて重心系へ移る

両方の速度の符号を反転させる

V を足して地上の系へ戻す

例:3 kg と 1 kg で試す

を引きます。重心系での速度は 、。

符号を反転させて 、。ここへ を足して戻します。

引き算、符号の反転、足し算。 乗はどこにも出てきません。

公式で書くとこうなる

同じ手順を文字のまま進めると、教科書の公式が出ます[2]。

、、、 を入れると、、。先ほどと一致します。

覚えておくなら公式より手順のほうが軽い。符号の入れ替わりで迷う場所がなくなります。

極端な場合を読む

質量の比を変えると、公式の意味が見えてきます[2]。

質量が等しいとき

なら 、。速度がそっくり入れかわる。止まっている球に当てれば、当てた球が止まる

軽い球が重い球に当たるとき

なら 。壁ではね返るのと同じで、相手はほとんど動かない

重い球が軽い球に当たるとき

なら 。当てた側はほぼ減速せず、当てられた側が 倍の速さで飛ぶ

ビリヤードで手球と的球の質量が等しいのは、 本目の場合にあたります。まっすぐ当てれば手球はその場に止まる。

例:中性子をどう遅くするか

原子炉では、生まれたばかりの速い中性子を減速させます。 回の衝突で相手に渡せるエネルギーの割合は、質量の比で決まる。

中性子と水素の原子核は質量がほぼ等しいので、この値が 。 回の正面衝突で全部渡せます。

炭素なら 、鉛では しかありません。減速材に水や黒鉛を使い、鉛を使わない理由がこの式にあります。

質量の近いものどうしのほうがよく効く。重い相手にぶつけても、はね返ってくるだけでエネルギーが移りません。

エネルギーは 2 つに分かれる

系の運動エネルギーは、重心の動きぶんと、重心から見た動きぶんに分かれます[3]。

は 体をまとめて 体に読み替えるときの質量です。 項目は重心の運動で、衝突では変わりません。

例の値で計算します。、、相対速度は 。

合計 で、はじめの と一致しました。

衝突で失えるのは 項目だけです。完全に合体する衝突では が熱や変形に変わり、 は残る。運動量保存が 項目を守っているためです。

どんな衝突でも、重心の運動エネルギーは減りません。だから運動エネルギーがすべて失われる衝突は、重心が止まっている場合に限られます。

正面から同じ運動量でぶつかる 球なら なので、全部を失って両方が止まれる。

検算のしかた

答えが出たら、 つを確かめます。運動量の和と、運動エネルギーの和です。

例では、前が 、後が 。エネルギーは前が 、後が 。

もう一つ軽い確かめがあります。相対速度の符号が反転しているかどうか。前は 、後は 。

この 番目は暗算で終わります。公式の符号をどこかで間違えていると、まずここで合わなくなる。

静止している質量 の球に、同じ質量 の球が速さ で弾性衝突します。衝突後の様子はどれですか。

  • 当てた球が止まり、当てられた球が で動く
  • 両方が で同じ向きに動く
  • 当てた球が ではね返る
__RESULT__

重心の速度は です。重心系では両球が で近づき、反転して で遠ざかる。地上へ戻すと と になります。

重心といっしょに動きながら見る。この乗り換えを覚えておくと、衝突の問題は引き算と符号の反転に化けます。

出典

Timon Idema. *4.8: Elastic Collisions in the COM Frame*/04:_Momentum/4.08:_Elastic_Collisions_in_the_COM_Frame). Mechanics and Relativity, TU Delft / Physics LibreTexts.
Richard Fitzpatrick. *Collisions in 1-dimension*. Classical Mechanics, University of Texas at Austin.
Jimmy Roussel. *Problème à deux corps*. Femto-Physique, cours de mécanique classique.
Bernhard Schnizer. *Systeme von Massenpunkten*. Analytische Mechanik, TU Graz.
3 kg の球が秒速 4 m で 1 kg の球に弾性衝突すると、答えは秒速 2 m と 6 m。公式に代入しても出ますが、符号で迷う場所が 2 か所あります。重心の速度を引いてから見ると、どちらの球も速さがそのままで向きだけが反転する。あとは重心の速度を足して戻すだけです。2 乗はどこにも出てきません。等質量なら速度が入れかわること、原子炉の減速材に鉛を使わないこと、合体しても重心の運動エネルギーだけは残ることも、同じ見方から出てきます。