重心の求め方と運動〜投げた物体の重心が描く放物線
回転しながら飛ぶハンマーの軌跡は、目で追うと複雑です。柄の先も頭も、上がったり下がったりしながら進む。
それでも 点だけは、きれいな放物線を描きます[2]。その点が重心で、物体を 個の粒子として扱ってよい場所になる。
重心は質量で重みをつけた平均の位置
質点がいくつかあるとき、重心の位置は次の式で決まります[3]。
ふつうの平均は全部を同じ重みで足しますが、こちらは質量を重みにする。重い質点のほうへ寄った位置になります。
方向も 方向も同じ形の式で出る。向きごとに独立して計算できます。
例:2 つのおもりの重心
に 、 に を置きます。
真ん中の ではなく、重いほうへ 寄りました。距離の比は 対 で、質量の比の逆になっている。
てこのつり合いと同じ形になります。重心は、支えたときにつり合う点でもある。
複雑な形は分けて足す
一様な板なら、質量のかわりに面積を重みにできます。板を長方形や三角形に切り分け、それぞれの重心を出して足し合わせる[1]。

例:L 字の板の重心
横 、縦 の部分と、横 、縦 の部分に分けます。面積は と 。
左下を原点にとると、それぞれの重心は と になる。
重心は です。この点は板の外にある。L 字やドーナツのように、重心が物体の内部にない形はふつうにあります。
穴があいた板は引き算で出す
切り抜いた部分を、負の質量を持つ図形として足します[1]。分けて足すのと同じ式が使え、符号だけが変わる。
辺 の正方形から、右上の 辺 の正方形を切り抜いた板を考えます。
もとの正方形は面積 で重心は 、切り抜いた部分は面積 で重心は 。
も同じ計算で になります。切り抜いたぶんだけ、重心が反対側へずれた。
重心が動くのは外から力が加わったときだけ
物体を細かい質点の集まりと見て、 つずつ運動方程式を書いて足します。質点どうしが及ぼし合う力は、作用反作用で対になって消える[3]。
残るのは外から加わった力だけです[4]。その合計を と書く。
全質量が重心に集まった 個の粒子として扱ってよい、と読めます。これを重心の運動の法則という[4]。
内部でどれだけ複雑に動いていても、重心の動きには効きません。回転していても、ばねで振動していても同じ。
空中で分裂しても重心は変わらない
打ち上げ花火が上空で開くとき、破片は四方へ飛び散ります。それでも破片全体の重心は、開く前と同じ放物線をたどる。
火薬が押し出す力は、破片どうしが及ぼし合う内力だからです[4]。合計すると になり、重心には効きません。
外から加わっているのは重力だけになる。だから重心は、何ごともなかったように落ち続けます。
物体の内部で及ぼし合う力。作用反作用で対になり、合計すると消える。重心の動きを変えない
外から加わる力。重力や垂直抗力や摩擦がこれにあたる。合計が重心の加速度を決める
吊るして探す
計算しにくい形でも、実験なら重心を出せます[2]。物体の 点を糸で吊るし、糸の延長線を書き込む。
別の点で吊るして同じ線を引くと、 本の線が交わります。その交点が重心にあたる。
吊るした物体が回らずに止まるのは、重力の作用線が支点を通っているときだけ。この条件が重心の位置を教えてくれます。
厳密には、重心と質量中心は別の言葉です。重力が場所によらず一様なら、 つは同じ点になる。
質量の分布だけで決まる点。重力がない宇宙空間でも定義でき、物体の回転や衝突の基準として使われる。
分裂したあとの重心
ばねや火薬が押し出す力は、系の内側でやりとりされるだけです。外からの力が加わらなければ、重心は何も起きていないかのようにふるまう。
静止した の物体が、内部のばねの力で と に分かれました。 のほうが右へ で動いたとき、重心はどう動きますか。
- 右へ で動く
- 左へ で動く
- 静止したまま動かない
- 右へ で動く
















ばねの力は内力なので、重心には効きません。外力の合計が 0 なら重心の加速度も 0 で、もともと静止していた重心は静止したまま。3.0 kg のほうが左へ 2.0 m/s で動くことは、運動量保存から出ます。