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コリオリの力とフーコーの振り子:台風が渦を巻くしくみ

北半球の台風は、いつも反時計回りに渦を巻きます。南半球では時計回り。赤道の上では台風そのものができません。

向きを決めているのはコリオリの力です。地球が回っているために現れる見かけの力で、動いているものだけに働く[2]

回る円盤の上で投げてみる

回転する円盤の中心から、外へ向けてボールを転がします。地面に立って見ていれば、ボールはまっすぐ進む。

ところが円盤に乗っている人には、そう見えません。自分と床が回っているぶん、ボールが横へそれていくように見えます。

ボールには何もしていません。見ている側が回っているだけ。それでも、円盤の上で運動方程式を使いたければ、この曲がりを説明する力が要ります。

大きさは速さと角速度で決まる

その力がコリオリの力です。大きさは物体の速さと、座標系の回る角速度の両方に比例します[2]

係数の は、 つの効果が重なることから出ます。物体が外へ進むぶん円周の長さが変わる効果と、進む向きが回る効果[2]

向きは速度に垂直です。速さを変えず、向きだけを曲げる。仕事をしない点は向心力と同じになります。

地球では緯度が効く

地球の自転の角速度は、 日で 周ぶんです。恒星に対して 周する時間は 秒なので、次の値になる。

ただし地表を水平に動く物体には、この全部が効くわけではありません。自転の軸は、その土地の鉛直方向とずれているからです。

効くのは自転ベクトルの鉛直成分だけ。緯度を とすると になります[4]

をコリオリ係数といい、 と書きます。水平に動く物体の加速度は になる[1]

北半球では進行方向の右へ、南半球では左へそれます[2]。赤道では なので、そもそも働きません。

例:緯度 35 度で吹く風

を使います。

で動く空気なら、加速度は です。重力加速度の 万分の ほど。

分では横へ しかずれません。ところが 時間では になります。時間の 乗で効くので、長く続く運動ほど無視できなくなる。

慣性円という円運動

ほかに力が働かなければ、コリオリの力だけで円運動になります。向心力が になる場合を解けばよい。

なら半径 です。周期は 時間ほどになります。

海の表層の流れに、この大きさの円が観測されます。慣性円と呼ばれる運動です。

台風が渦になる仕組み

低気圧の中心へ向かって、まわりから空気が吹き込みます。この空気が右へそれる。

まっすぐ中心へ入るはずの流れが、少しずつ右へ曲げられて、結果として中心のまわりを回る流れになります。北半球で反時計回りになるのはこのためです[2]

やがて気圧の差による力とコリオリの力がつり合い、等圧線に沿って流れるようになる。この状態の風を地衡風といいます。

北半球

進行方向の右へそれる。低気圧のまわりは反時計回り、高気圧のまわりは時計回りになる

南半球

進行方向の左へそれる。低気圧のまわりは時計回りで、北半球とすべて逆向きになる

赤道付近では が小さすぎて渦が作れません。台風が赤道上で発生しないのは、この理由によります。

フーコーの振り子

年、フーコーはパリのパンテオンに長さ の振り子を吊るしました[4]。おもりは の球です。

振り子の振動面は空間に対して向きを保ちます。地面のほうが下で回るので、床から見ると振動面が回って見える[3]

回る速さは緯度で決まります。 日あたり です[1]

北極23.9 時間で 1 周
パリ(緯度 48.9 度)32 時間で 1 周、1 時間に 11 度
東京(緯度 35.7 度)41 時間で 1 周
赤道回らない

パンテオンで観測された 時間あたり 度という値が、そのまま地球の自転の証拠になりました[4]。天体を見なくても、室内の実験だけで自転が示せた点に意味があります。

振り子の振動面が回るのは、床が回っているからです。慣性系から見れば、振動面はずっと同じ向きを保っている。

力が働かない物体が等速直線運動を続ける座標系。地球の表面は回転しているので、厳密には慣性系ではない。

洗面台の渦には効かない

排水口の渦の向きがコリオリの力で決まる、という話がありますが、これは正しくありません。

に対し、水が流れるのは数十秒です。そのあいだにコリオリの力が生む速度変化は、水面の傾きや容器の形が生む流れに比べてはるかに小さい。

効くかどうかは、運動が続く時間で決まります。台風は何日も続くので効き、洗面台は 分ももたないので効かない。

曲がる向きを確かめる

南半球で、北へ向かって飛ぶ飛行機があります。コリオリの力によって、どちらへそれますか。

  • 東へそれる
  • 西へそれる
  • 北へそれる
  • 南半球では働かない
__RESULT__

南半球では進行方向の左へそれます。北を向いて立ったときの左は西なので、西へそれる。北半球なら右、つまり東へそれます。向きは進行方向を基準に決まるので、まず進む向きを決めてから左右を当てる。

つまずきやすいところ

止まっている物体にもコリオリの力が働くと考えると外します。現れるのは動いているときだけ。
北半球では必ず東へそれる、と覚えると誤りです。それるのは進行方向の右になる。
コリオリの力が仕事をすると考えると合わない。速度に垂直なので、仕事は です。
遠心力と同じものと考えると外れる。遠心力のほうは、静止していても働く力。
赤道でも働くと思うと誤りです。水平方向のそれは になって消える。
フーコーの振り子が 時間で 周すると考えると外します。極を離れるほど時間は延びる。

参考

Coriolis Force - The Physics Hypertextbook
Rotierende Bezugssysteme - Physik Libre
The Foucault pendulum - the physics involved - University of New South Wales
Le Pendule de Foucault - Université de Nantes
回る円盤の上でまっすぐ転がしたボールは、乗っている人には曲がって見えます。この曲がりを説明するための見かけの力がコリオリの力で、大きさは $2m\omega v$。地表では自転ベクトルの鉛直成分だけが効くので、緯度 $\varphi$ が入って $f = 2\Omega\sin\varphi$ になります。緯度 $35$ 度の $10\ \mathrm{m/s}$ の風なら $1$ 分で $1.5\ \mathrm{m}$、$1$ 時間で $5.4\ \mathrm{km}$ のずれ。低気圧へ吹き込む風が右へそれて反時計回りになる仕組み、フーコーの振り子が $1$ 日に $360^\circ\sin\varphi$ だけ回る理由、洗面台の渦には効かない理由まで。