登らずに木の高さを出す - 仰角と俯角を使う三角比の測量
木から メートル離れて、こずえを見上げた角が 。それだけで木の高さが メートルと出ます。
測量で直接測れるものは 2 つしかありません。角と距離だけ[1]。
そこから、届かない場所の長さを計算で埋める。三角比はそのための道具になっている。
仰角と俯角
水平線を基準にして、見上げた角を仰角、見下ろした角を俯角と呼びます[2]。
どちらも水平からの角です。真上や真下からの角ではない。

高さと水平距離をつなぐのは正接です。 という形になる。
例:木の高さを測る
木の根元から メートル離れた地点に立つ。こずえを見上げた角が でした。
メートルほど。歩数で距離を測り、角度計で角をとるだけで数字が出ます。
目の高さを足し忘れない
測った角は、目の位置からの角です。木の根元からの角ではない。
計算で出るのは、目の高さより上の部分だけになります。地面から測った高さにするには、目の高さを足す。
が返すのは、目の高さを基準にした上向きの分 です。
身長 メートルなら目の高さはおよそ メートル。この分を最後に足す。
例:ビルの高さを目の高さ込みで出す
ビルから メートル離れ、屋上を見上げた角が 、目の高さが メートルとします。
これに を足して メートル。足し忘れると パーセントほど低く出ます。
俯角は下向きの角
高い場所から下を見るときは俯角を使います。三角形の形は仰角のときと変わらない。
見下ろす側の水平線と、見上げられる側の水平線は平行です。だから俯角と、下から見上げた仰角は等しくなる。
地面に立って上を見る。高さ = 水平距離 × 正接
高い場所から下を見る。水平距離 = 高さ ÷ 正接
同じ直角三角形を、どちらの頂点から読むかの違いにすぎない。
例:灯台から船までの距離
海面から メートルの高さにある灯台から、船を見下ろした角が でした。
水平距離はおよそ メートル。俯角が小さいほど船は遠くにいます。
川を渡らずに幅を測る
対岸の目印を決めます。その正面に立ち、岸に沿って直角に メートル歩く。
歩いた先から目印を見ると、進行方向との角が測れます。この角と歩いた距離で、川幅が出る。

角が なら、川幅は メートル。
歩くのは岸沿いだけ。水に入らずに幅が決まります。
底に立てないときは 2 地点から測る
山の高さを測る場合、真下に立てません。水平距離が分からないので、正接に入れる数がない。
そこで一直線上の 2 地点から仰角をとります。地点の間の距離を測れば、高さが決まる[1]。
高さを とすると、それぞれの地点から真下までの水平距離は と になる。
例:2 地点から山の高さを出す
メートル離れた 2 地点から仰角をとったところ、 と でした。
水平距離の差が、この メートルにあたる。
メートル。検算すると 、 で、差が に戻る。
表から角を引く
長さを 2 つ測れば、逆に角が出ます。正接の値を作ってから、表で近い値を探す。
| 測った量 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 隣辺 40、対辺 25 | 25 / 40 | 正接 0.625 |
| 表を引く | 0.6249 の行 | およそ 32 度 |
角度計がなくても、巻き尺 2 回で角が決まります。三角比の表は、この向きにも使える。
高さ メートルのビルの屋上から、地上の地点を俯角 で見ました。水平距離はどれですか。
- メートル
- メートル
- メートル
三角形をつないで遠くまで測る
長い距離を巻き尺で測るのは現実的ではありません。そこで三角形を数珠つなぎにする。
基線を 1 本だけ正確に測り、あとは角を測って計算で伸ばしていく。これが三角測量です[3]。
アメリカの国土測量では、ニューヨークから始めた網をメイン州へ、さらにニューオーリンズへと広げました。1871 年には大陸を横断する精密な三角網が組まれた[3]。
例:山頂から地球の半径を出す
11 世紀の学者アル・ビールーニーは、この考えを地球そのものに当てました[4]。
まず 2 地点から仰角をとって丘の高さを求める。次に丘へ登り、水平線を見下ろす俯角を測ります。

見える限界の点では、視線が地球に接します。接線と半径は直角に交わる。
丘の上の水平線は半径と直角なので、俯角を とすると中心の角も になります。
丘の高さ メートル、俯角 を入れると キロメートル。
アル・ビールーニーが実際に得た値は、現代の値と パーセントほどの差でした[4]。パンジャブのナンダナ砦での測定[4]。
水平距離 メートルの地点から仰角 で塔の先端を見ました。目の高さを無視すると、塔の高さはどれですか。
- メートル
- メートル
- メートル
なので です。 は 、 は にあたります。
測れるのは角と距離だけ。そこから届かない長さを埋めていく手つきが、測量という仕事の中身です。














tan25∘=0.4663 なので 60÷0.4663=128.7 です。28.0 は 60×tan25∘、142.0 は 60÷sin25∘ にあたり、こちらは斜めの距離になります。