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三角形を大きくしても sin は変わらない、直角三角形と三角比の定義

同じ角をもつ直角三角形は、大きさを変えていくらでも作れます。それでも 3 辺の比は 1 つに決まる。

この比に付いた名前が正弦、余弦、正接です。記号では 、、 と書く。

角を決めれば比が決まる。だから のように、三角形を指さずに角だけを書けば値が定まります。

拡大しても比は動かない

直角三角形を 2 倍に伸ばすと、3 辺はどれも 2 倍になります。比の分子と分母が同じ倍率で伸びるので、比をとった時点で倍率が消える。

相似な図形では対応する辺の比が変わりません[1]。拡大や縮小で動かないこうした量を不変量と呼ぶ。

辺の長さは動き続けるのに、下に出ている 2 つの数値は止まったまま。

角が 1 つ決まれば形が決まる

直角三角形には必ず直角があります。もう 1 つの鋭角を と決めると、内角の和から残る角が に定まる。

3 つの角がすべて一致するので、 が同じ直角三角形はどれも相似になる。2 つの角が等しければ相似、という条件です。

が同じなら比が同じ。逆に言えば、比の値は だけ で決まる量になります。

三角形の大きさも、置き方も、値には効いてこない。だから角の関数として書ける。

だから と と は、三角形ではなく角に対して定まる量になる。

3 つの比に名前を付ける

直角の向かい側にある辺を斜辺と呼びます。3 辺のうちこれがいちばん長い。

残る 2 辺は から見た位置で呼び分ける。 の向かい側が対辺、はさむほうが隣辺です。

対辺を 、隣辺を 、斜辺を と置く。3 つの比は次のように書けます[2]。

英語では対辺と隣辺と斜辺の頭文字を並べた語呂合わせが使われます[3]。日本語なら、筆記体の s、c、t の書き順で辺をなぞる覚え方が広く知られている。

例:辺が 3、4、5 の直角三角形

、、 とします。 なので、たしかに直角三角形になる。

割り切れる数がそろうので、最初の練習にちょうどよい三角形になっています。

例:2 倍に伸ばしても値は同じ

同じ三角形を 2 倍にすると、辺は 、、 になる。

分子も分母も 2 倍になり、約分で が消えます。値をそろえて並べると次のようになる。

辺の組正弦正接
3、4、50.60.75
6、8、100.60.75
1.5、2、2.50.60.75

、、 のように小数に落としても値は変わりません。倍率が何であっても約分で消えるため。

どちらの鋭角から見るかで入れかわる

対辺と隣辺は、 をどちらの鋭角にとるかで入れかわります。斜辺だけは動かない。

左下の角を とすれば です。右上の角を とすると、同じ辺が隣辺に変わる。

左下の角から見る

対辺が 3、隣辺が 4。正弦は 0.6、余弦は 0.8、正接は 0.75

右上の角から見る

対辺が 4、隣辺が 3。正弦は 0.8、余弦は 0.6、正接は約 1.33

と が同じ値になりました。 という関係から出てくる性質。

例:もう一方の角で読む

、、 の直角三角形をとります。

左下の角 では 、、。

右上の角 では 、、 に変わる。

正接どうしは逆数の関係です。 が成り立つ。

辺の長さを求める

比が分かっていて辺が 1 つ分かっていれば、残りの辺が出ます。使い方は 3 通りしかない。

角と斜辺から対辺を出す

角と隣辺から対辺を出す

角と対辺から斜辺を出す

定義の式を移項するだけです。 から と が出る。

例:斜辺と角から 2 辺を出す

斜辺が 、 とします。、 を使う。

対辺が 、隣辺がおよそ 。 となり、斜辺の 乗に戻ります。

例:2 辺から正接を出す

隣辺が 、対辺が の直角三角形を考えます。

正接の表を逆に引くと はおよそ 。角そのものを測らずに、2 辺の長さから角が決まります。

正接は正弦と余弦の比

3 つの比は独立ではありません。 と の比をとると が現れる。

斜辺 が約分で消えるだけの計算です。だから値を 2 つ覚えれば 3 つ目は作れる。

、 のとき、 の値はどれですか。

__RESULT__

です。 は と を掛けた値、 は分母と分子を逆にした値になります。

鋭角のときにとりうる値

斜辺は 3 辺のうちいちばん長い辺。対辺も隣辺も斜辺より短いので、 と は を超えません。

正接だけは事情が違います。角を に近づけると隣辺が に近づき、値はいくらでも大きくなる。

では が成り立つ。
同じ範囲で になる。
正接は で、上には限りがない。
角が大きくなると正弦は増え、余弦は減る。
正接は角とともに増え続ける。

や の答えが を超えたら、その時点で計算が誤っている。検算の手がかりになる性質です。

例:値から角の見当をつける

代表的な角の値を並べておくと、答えの妥当さがすぐ確かめられます。

角正弦余弦
30 度0.5000.866
45 度0.7070.707
60 度0.8660.500

と出たなら、 は と のあいだにあるはず。表と見比べるだけで桁の誤りが見つかります。

補足:半弦から来た名前

正弦という言葉は、円に張った弦の半分を指す語から来ている。最初の記録は 5 世紀インドの数学者アーリヤバタで、著書アーリヤバティーヤに半弦が出てきます[4]。

アーリヤバタはこれを「弓の弦の半分」を意味する語で呼びました。弓に見立てた図で、弦の中点から弧へ向かう部分は「矢」と呼ばれ、こちらが余弦に対応する。

半径を にとれば半弦の長さがそのまま正弦の値になる。円が大きくても小さくても比は同じという不変性が、当時すでに使われていました[4]。

同じ著書では、正三角形の性質から の正弦を と求めている[4]。

直角三角形の斜辺が 、対辺が のとき、 の値はどれですか。

__RESULT__

隣辺は です。 は隣辺を斜辺で割るので になります。 は正弦、 は正接の値です。

三角形の大きさを捨てて、角だけを残す。この 3 つの比がしていることはそれだけです。

参考文献

Steven Butler. Notes from Trigonometry. Lecture 5, Trigonometry with right triangles.
Right Triangle Trigonometry. Algebra and Trigonometry 2e, OpenStax.
Eric W. Weisstein. *Sine*. MathWorld, Wolfram Research.
Vijay A. Singh, Aneesh Kumar. *Aryabhata and the Construction of the First Trigonometric Table*. arXiv:2309.13577, 2023.
角を 35 度に保ったまま三角形を伸び縮みさせても、対辺と斜辺の比は動きません。直角に加えて鋭角が 1 つ決まれば残る角も決まるので、その形の直角三角形はどれも相似になる。辺の比が角だけの量になり、sin、cos、tan という名前が付いた理由がここにあります。3 対 4 対 5 と 6 対 8 対 10 で値がそろうこと、どちらの鋭角から見ると対辺と隣辺が入れかわるか、鋭角なら sin も cos も 1 を超えないこと。正弦という名前は、5 世紀インドで使われた「弓の弦の半分」を指す語から来ています。