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直角でないと三平方の定理はどれだけずれるか?その差が余弦定理

直角三角形では が成り立ちます。直角でない三角形では、この等式が崩れる。

を固定したまま角 を開くと、向かいの辺 は長くなります。閉じれば短くなる。 からどれだけずれるかを式にしたものが余弦定理です。

垂線を下ろすと三平方の定理が 2 回使える

頂点 から辺 に垂線を下ろし、その足を とします。

直角三角形 から が出る。 から の向きへ だけ進んだ位置なので、 です。

残った直角三角形 に、もう一度三平方の定理を当てます。

展開すると にまとまり、余弦定理の形になる。

鈍角では垂線が外に落ちる

が鈍角なら は負です。 も負になり、 をはさんで の反対側にくる。

より長くなり、 もその分だけ伸びます。計算の途中は鋭角のときと 1 行も変わりません。

長さを正の数だけで扱うなら、鋭角と鈍角で場合分けが要ります。 に符号を持たせると、その分岐が式のなかに吸収される。

ずれの大きさが

を入れると で、最後の項が消える。

三平方の定理は余弦定理の特別な場合になる。 は、直角からどれだけ外れたかをそのまま測っている項です。

が鋭角なら なので より小さく、鈍角なら大きくなる。

例:60 度と 120 度で比べる

を固定して を変えます。 です。

なら

なら なら です。

同じ 2 辺でも、挟む角が 60 度から 120 度へ開くと向かいの辺は 3.61 から 6.08 まで伸びる。

3 辺だけで角の種類が分かる

を比べるだけで、 の種類は決まる。 の符号がそのまま大小に出るためです。

とすると なら は鋭角、 なら で鈍角と分かる。

角の値を求めずに、鋭角三角形か鈍角三角形かだけを判定できる。

原論では長方形だった

余弦定理は という記号ができる前からありました。ユークリッドの『原論』第 2 巻の命題 12 と命題 13 がそれにあたります[1]

命題 12 は鈍角三角形の話です。鈍角の向かいの辺の上の正方形は、鈍角をはさむ 2 辺の上の正方形の和より大きく、その差は「垂線が落ちる側の辺と、垂線が外に切りとった線分とでつくる長方形の 2 倍」だと述べています。

切りとった線分は にあたり、長方形の 2 倍が です。 を使わずに、同じ量を面積として言っている。

命題 13 は鋭角三角形で、こちらは正方形の和より小さくなり、切りとる線分は内側です。どちらの証明も垂線を下ろして三平方の定理を 2 回使う形で、上でたどった道すじと変わりません。

三角関数を使った形にまとめたのは 15 世紀サマルカンドのアル・カーシーだとされ、フランス語圏ではいまも「アル・カーシーの定理」と呼びます[2]

まちがえやすい点

は、 にはさまれた角です。添字をずらすときは 3 文字とも同時にずらす。

鈍角のときに の符号を手で反転させる誤りが起きる。 自体が負なので、式はそのままで足し算になる。

を出したところで止まる誤りも多い。 を求めるなら、最後に平方根まで戻します。

のとき、 はいくつですか。

__RESULT__

です。 なので となり、 になります。 は符号を逆にした値、 の項を落とした値です。

を決めても、挟む角が決まるまで は定まりません。 は、その挟む角のぶんをひとつの項に引き受けた形です。

参考

Euclid's Elements, Book II, Proposition 12 および Proposition 13. D E Joyce 編, Clark University.
Formule d'al-Kashi, loi des cosinus. BibM@th.
$b$ と $c$ を決めても、挟む角しだいで向かいの辺は変わります。$b = 4$、$c = 3$ なら $A = 60^\circ$ で $a \fallingdotseq 3.61$、$120^\circ$ で $6.08$ まで伸びる。頂点から垂線を下ろすと $AH = c\cos A$ が出て、直角三角形に三平方の定理を 2 回当てると $a^2 = b^2 + c^2 - 2bc\cos A$ になります。鈍角では垂線が外に落ちますが、$\cos$ の符号が場合分けを吸収する。$a^2$ と $b^2 + c^2$ の大小から角の種類が分かる話と、$\cos$ のない時代に『原論』が同じことを長方形の面積で述べていた話まで。