sinθ+cosθ=21 という条件だけで、sinθcosθ も sin3θ+cos3θ も決まります。
角そのものは求めません。両辺を 2 乗して、sin2θ+cos2θ=1 を使うだけ[1]。
sinθ と cosθ を入れかえても形の変わらない式が、この計算で扱える対象になる。
入れかえても変わらない式
x+y や xy は、x と y を入れかえても同じ式のまま。こうした式を対称式と呼びます[2]。
x2+y2 も x3+y3 も対称式。一方 x−y は入れかえると符号が変わるので、対称式ではない。
対称式は、和 x+y と積 xy の 2 つだけで書き直せます[2]。この 2 つが土台になる。
三角比では sin2θ+cos2θ が 1 に固定されています。ここが普通の文字式と違う点になる。
和を 2 乗すると積が出てくる
s=sinθ+cosθ と置きます。両辺を 2 乗して展開する。
s2=sin2θ+2sinθcosθ+cos2θ
sin2θ+cos2θ の部分が 1 になるので、式が短くなります[3]。
s2=1+2sinθcosθ
正方形の面積を 4 枚に分けた図です。青と緑を足すと 1 になり、残る 2 枚が 2sinθcosθ を表す。
積のほうを p と書けば、s2=1+2p。これを移項すると p が出ます。
p=2s2−1
例:和が 1/2 のとき積を出す
s=21 を代入する。
p=2(21)2−1=241−1=−83
積が負なので、sinθ と cosθ の符号が違うと分かる。この範囲では sinθ が正なので、cosθ が負、つまり θ は鈍角です。
差の 2 乗も同じ材料で出る
(sinθ−cosθ)2 を展開すると、真ん中の項の符号だけが変わる。
(sinθ−cosθ)2=1−2p
和の 2 乗が 1+2p、差の 2 乗が 1−2p。足すと 2 になり、引くと 4p になる。
例:差の絶対値を出す
さきほどの p=−83 を使う。
(sinθ−cosθ)2=1+43=47
∣sinθ−cosθ∣=27≒1.323 になる。
差そのものの符号は、これだけでは決まりません。鈍角なら sinθ>0>cosθ なので差は正になる。
3 乗の和
x3+y3=(x+y)3−3xy(x+y) という展開を使います。文字を三角比に置きかえる。
sin3θ+cos3θ=s3−3ps
s2=1+2p を使うと、もっと短い形になります。
s3−3ps=s(s2−3p)=s(1+2p−3p)=s(1−p)
例:3 乗の和を出す
s=21、p=−83 を代入する。
sin3θ+cos3θ=21(1+83)=21×811=1611
1611=0.6875 です。展開の形から入っても同じ値が出る。
s と p さえ手元にあれば、何乗の和でも順に作れる ようになります。
4 乗なら 2 乗の結果を、5 乗なら 3 乗の結果を土台にする。
4 乗の和は積だけで決まる
sin4θ+cos4θ を、2 乗の和から作る。
sin4θ+cos4θ=(sin2θ+cos2θ)2−2sin2θcos2θ=1−2p2
s が消えて p だけが残りました。偶数乗では和の情報が要らなくなる。
例:4 乗の和を出す
p=−83 なので p2=649。
1−2×649=1−329=3223
3223=0.71875。4 乗の和は、いつも 21 以上 1 以下に収まります。
s のとりうる範囲
(sinθ−cosθ)2=1−2p は 2 乗なので、0 以上です。だから p≦21。
s2=1+2p に入れると s2≦2 になり、∣s∣≦2 が出ます[3]。
0∘ から 180∘ に限ると、下側にも制限が付きます。sinθ≧0 かつ cosθ≧−1 なので、s≧−1[4]。
まとめると −1≦s≦2 です。上限は θ=45∘、下限は θ=180∘ でとる。
sinθ+cosθ=2 のとき、sinθcosθ の値はどれですか。
__RESULT__
p=2s2−1=22−1=21 です。s が上限の 2 なので θ=45∘ にあたり、sin45∘cos45∘=21 と直接計算しても合います。
例:値から角を決める
s=2 なら p=21 でした。(sinθ−cosθ)2=1−1=0 なので、sinθ=cosθ。
この範囲で正弦と余弦が等しくなるのは 45∘ だけです。
s=1 の場合は p=0 になる。積が 0 なので、sinθ か cosθ の一方が 0 です。答えは 0∘ と 90∘ の 2 つ。
sinθ+cosθ=21 のとき、sin3θ+cos3θ の値はどれですか。
__RESULT__
p=−83 なので、s(1−p)=21×811=1611 です。81 は s3 の値で、3ps を引き忘れた場合の答えになります。
条件が和で与えられても積で与えられても、s と p の一方が決まればもう一方も決まります。あとは作りたい式を s と p で書き直すだけ。
出典
Steven Butler. Notes from Trigonometry. Section 5.4, The Pythagorean identities. Eric W. Weisstein. *Symmetric Polynomial*. MathWorld, Wolfram Research. Section 4.21, Identities. NIST Digital Library of Mathematical Functions. *Trigonometric functions*. Encyclopedia of Mathematics, European Mathematical Society.
sinθ + cosθ = 1/2 という条件だけで、sinθcosθ も 3 乗の和も 4 乗の和も決まります。角そのものは求めません。和を 2 乗して sin の 2 乗 + cos の 2 乗 = 1 を使うと、s の 2 乗 = 1 + 2p が出る。あとは作りたい式を s と p で書き直すだけです。1 辺が sin + cos の正方形を 4 枚に切る図で、この関係が面積として見えます。差の 2 乗が 1 - 2p になること、3 乗の和が s(1-p) にまとまること、4 乗の和からは s が消えること、s のとりうる範囲が -1 以上 2 の平方根以下になる理由まで。
p=2s2−1=22−1=21 です。s が上限の 2 なので θ=45∘ にあたり、sin45∘cos45∘=21 と直接計算しても合います。