sin70∘ と cos20∘ は、どちらも 0.940 です。sin25∘ と cos65∘ も同じ 0.423。
足して 90∘ になる角どうしで、正弦と余弦が入れかわる。表を見比べると、上から読んだ列と下から読んだ列がぴったり重なります。
理由は直角三角形を 1 つ描けば見えます。角をとり替えて読むだけの話。
2 つの鋭角は足して 90 度
三角形の内角の和は 180∘。直角三角形では 90∘ を直角が使うので、残る 2 つの鋭角の和も 90∘ になる[1]。
一方を θ とすれば、もう一方は 90∘−θ。この 90∘−θ を θ の余角と呼びます[2]。
余弦と余接という名前の「余」は、この余角を指す。
左の三角形で対辺だった辺が、右では隣辺になっています。斜辺だけは動かない。
対辺と隣辺が入れかわる
θ から見た対辺は、90∘−θ から見れば隣辺です[1]。斜辺は共通なので、割り算の分母は変わらない。
sinθ=ca,cos(90∘−θ)=ca
同じ分数を、違う角の名前で呼んでいるだけ。
入れかわるのは 対辺と隣辺の役割 だけで、辺の長さそのものは 1 ミリも動きません。
呼び名が変わるので、正弦と余弦の値が交代して見える。
3 つの公式にまとめる
正弦と余弦は入れかわり、正接は逆数になります[3,4]。
sin(90∘−θ)=cosθ,cos(90∘−θ)=sinθ,tan(90∘−θ)=tanθ1
正接だけ形が違うのは、分子と分母がそっくり入れかわるためです。ba が ab になる。
例:70 度と 20 度
70∘+20∘=90∘ なので、この 2 つは余角どうし。
sin70∘=cos20∘=0.9397,cos70∘=sin20∘=0.3420
表を引くときに、どちらか片方が載っていれば足りる。
例:65 度と 25 度、50 度と 40 度
cos65∘=sin25∘=0.4226 になります。sin65∘=cos25∘=0.9063。
50∘ と 40∘ も余角どうし。sin50∘=cos40∘=0.7660 になる。
角が 45∘ に近づくと、正弦と余弦の値も近づきます。45∘ ちょうどで一致する。
正接どうしは掛けて 1
tan(90∘−θ)=tanθ1 を移項すると、掛け算の形になる。
tanθ×tan(90∘−θ)=1
tan50∘=1.1918、tan40∘=0.8391 です。掛けると 1.0000 になる。
一方が分かればもう一方も出るので、正接の表も半分で足ります。
単位円では対称移動になる
角 θ の点は (cosθ,sinθ) でした。余角 90∘−θ の点は (sinθ,cosθ)。
x 座標と y 座標が入れかわっている。これは y=x という直線について折り返した位置になります。
30∘ の点は (23,21)、60∘ の点は (21,23) です。座標が入れかわっている。
表が 45 度までで足りる理由
数表を作るとき、0∘ から 90∘ まで全部を並べる必要はありません。
46∘ から 89∘ までの正弦は、44∘ から 1∘ までの余弦と同じ値です。だから半分載せれば足りる。
0∘ から 45∘ までの行に、45∘ から 90∘ までの情報がすべて入っています。
| 知りたい値 | 等しい値 | 読む場所 | | sin 73 度 | cos 17 度 | 17 度の行 |
| cos 81 度 | sin 9 度 | 9 度の行 |
| tan 68 度 | 1 / tan 22 度 | 22 度の行 |
表の左端に 0∘ から 45∘、右端に 90∘ から 45∘ を刻んでおけば、同じ行を左右から読み分けられる。
例:三角比を余角で言いかえる
sin82∘ を余角に直します。90∘−82∘=8∘ なので cos8∘ に等しい。
cos77∘ なら sin13∘ になります。tan71∘ は tan19∘1。
角が 45∘ を超えていたら余角へ移す。この習慣を持っておくと、表も暗算も軽くなります。
cos62∘ と等しい値はどれですか。
__RESULT__
90∘−62∘=28∘ なので、cos62∘=sin28∘ になります。sin62∘ は cos28∘ と等しい別の値で、どちらも 0.883 です。cos62∘ のほうは 0.469 になります。
2 乗して足すと 1 に戻る
余角の関係を、平方の和に当てはめます。sin(90∘−θ)=cosθ を代入する。
sin2θ+sin2(90∘−θ)=sin2θ+cos2θ=1
正弦だけを 2 つ並べた式なのに、値が 1 に固定される。
例:25 度と 65 度で確かめる
sin25∘=0.4226、sin65∘=0.9063。
0.42262+0.90632=0.1786+0.8214=1.0000
sin210∘+sin280∘ でも、sin244∘+sin246∘ でも同じ 1 になる。足して 90∘ でありさえすればよい。
tan35∘×tan55∘ の値はどれですか。
__RESULT__
35∘+55∘=90∘ なので余角どうしです。tan(90∘−θ) は tanθ の逆数なので、掛けると 1 になります。実際の値は 0.7002×1.4281=1.0000 です。
余角の公式は、新しい関係を足しているわけではありません。1 つの直角三角形をどちらの角から読むか、それだけの違いを式にしたものです。
参考
*Introductory trigonometry*. The Improving Mathematics Education in Schools (TIMES) Project, AMSI and ICE-EM. Eric W. Weisstein. *Complementary Angles*. MathWorld, Wolfram Research. Right Triangle Trigonometry. Algebra and Trigonometry 2e, OpenStax. Table 4.16.2, Elementary Properties. NIST Digital Library of Mathematical Functions.
直角三角形の 2 つの鋭角は足して 90 度になるので、同じ三角形を反対の角から読むと対辺と隣辺が交代します。値そのものは動かず、呼び名だけが入れかわる。そこから sin(90 度 - θ) = cos θ、cos(90 度 - θ) = sin θ、tan(90 度 - θ) は tan θ の逆数という 3 本が出ます。単位円では y = x についての折り返しにあたり、座標がそのまま入れかわる。数表が 45 度までで足りる理由、tan 35 度と tan 55 度を掛けると 1 になること、sin の 2 乗を足すと 1 に戻ることまで計算例で追いました。
90∘−62∘=28∘ なので、cos62∘=sin28∘ になります。sin62∘ は cos28∘ と等しい別の値で、どちらも 0.883 です。cos62∘ のほうは 0.469 になります。