n=1∑∞2nn の項は 0.5、0.5、0.375、0.25、0.15625 と減っていきます。隣どうしの比は 2nn+1 で、21 に向かう。
比が 1 より小さい値に落ち着くなら、その級数は収束します[1]。実際この和は 2 です。
部分和を閉じた形に書けなくても、項の減り方だけで収束するかどうかが判定できる。それが比判定法と根判定法です。
比判定法
an=0 の級数について、隣の項との比の極限を ρ とします[1][2]。
ρ=n→∞limanan+1
0≤ρ<1 なら絶対収束し、ρ>1 または ρ=∞ なら発散します[1]。ρ=1 のときは何も言えません[1][2]。
なぜ効くのか
ρ<1 のとき、ρ と 1 のあいだに数 r をとります。r=2ρ+1 とすればよい。
比が ρ に向かうので、ある番号 N から先では anan+1<r になります。
そこから ∣aN+k∣<∣aN∣rk が出ます。項が公比 r の等比数列より小さく押さえられました。
k=0∑∞∣aN∣rk=1−r∣aN∣<∞
判定法の中身は、等比級数と比べることです。r を 1 より小さくとれる点が効いています。
例:階乗が入る形
n=1∑∞n!2n を判定します。比をとると階乗がきれいに約分されます[1]。
anan+1=(n+1)!2n+1⋅2nn!=n+12→0
ρ=0<1 なので収束します[1]。和は e2−1 です。
∑2nn! なら比は 2n+1→∞ で発散。階乗が分母にあるか分子にあるかで結論が変わります。
例:n 乗が入る形
n=1∑∞nnn! の比を計算します。
anan+1=(n+1)n+1(n+1)!⋅n!nn=(n+1n)n→e1
e1=0.3679<1 なので収束します。(1+n1)n→e がここで効いています。
根判定法
項の n 乗根の極限で判定する方法もあります[1][4]。
ρ=n→∞limn∣an∣
結論は比判定法と同じです。ρ<1 で収束、ρ>1 で発散、ρ=1 では判定できません[1][4]。
コーシーの根判定法とも呼ばれます[4]。
例:全体が n 乗になっている形
n=1∑∞(4n2+5n2+3n)n を判定します。n 乗根をとると指数が消えます[1]。
n∣an∣=4n2+5n2+3n→41
ρ=41<1 で収束します[1]。比をとる道もありますが、こちらのほうが手数が少ない。
∑(logn)n1 でも同じです。n∣an∣=logn1→0 なので収束します。
比判定法が向く形
階乗や連続する積が入っている。n!、(2n)!、n(n+1) など
根判定法が向く形
全体が n 乗になっている。(cn+dan+b)n、(logn)n1 など
ρ=1 では何も言えない
境目では判定が止まります。実際、ρ=1 の級数には収束するものも発散するものもあります[2]。
∑n1 の比は n+1n→1 で発散します。∑n21 の比は (n+1n)2→1 で収束します[2]。
同じ ρ=1 から、正反対の結論が出ている。この場合は別の判定法へ移ります。
比の値だけを見ていては、この差に気づけません。
ρ=1 が出たら、その判定法では決着しません[1][2]。
p 級数の形と比べる、積分と比べる、交代級数として扱う。別の道具へ移る合図になる。
例:x が入る級数
n=0∑∞n!xn を判定します。x を定数と見て比をとります。
anan+1=n+1∣x∣→0
どんな x でも ρ=0 なので、すべての実数で収束します。この和が ex です。
∑nxn なら比は n+1n∣x∣→∣x∣。∣x∣<1 で収束、∣x∣>1 で発散します。
∣x∣=1 は判定できません。x=1 は調和級数で発散、x=−1 は交代級数で収束します。境目で挙動が分かれる。
判定の順番
まず一般項が 0 に向かうかを見る。向かわなければ発散で終わり。
一般項が 0 に向かうかどうかの確認は、いちばん軽くて速い[3]。そこで落ちる級数を先に外しておきます。
n=1∑∞n23n はどうなりますか。
__RESULT__
比は 3(n+1n)2→3 です。ρ=3>1 なので発散します。分母の n2 では、分子の 3n に追いつけません。
根判定法の側も確かめます。
n=1∑∞(3n+42n+1)n はどうなりますか。
__RESULT__
n 乗根をとると 3n+42n+1→32 です。ρ=32<1 なので収束します。全体が n 乗の形なので、根判定法がそのまま効きます。
比か根の行き先を 1 と比べる。これだけで多くの級数が片づきます。境目の ρ=1 に落ちたときだけ、別の道具を探します。
参考文献
*Ratio and Root Tests*. Calculus Volume 2, OpenStax. Claus Michael Ringel. *Folgen und Reihen*. Leitfaden Funktionen, Universität Bielefeld. Root Test. Wolfram MathWorld.
$\sum\frac{n}{2^{n}}$ の隣どうしの比は $\frac{n+1}{2n} \to \frac{1}{2}$。$1$ より小さいので収束します。部分和を閉じた形に書けなくても、項の減り方だけで判定できる。中身は等比級数との比較で、$\rho$ と $1$ のあいだに $r$ をとれば項が $Cr^{n}$ 以下に収まります。階乗が入る $\frac{2^{n}}{n!}$ や $\frac{n!}{n^{n}}$ は比、全体が $n$ 乗の形は根。$\rho = 1$ では $\sum\frac{1}{n}$ と $\sum\frac{1}{n^{2}}$ が正反対になり、判定が止まります。
比は 3(n+1n)2→3 です。ρ=3>1 なので発散します。分母の n2 では、分子の 3n に追いつけません。