正九十六角形で円周率を挟む〜アルキメデスの方法と三角関数の極限
半径 の円に正六角形を内接させると、周の長さは である。半周でみれば 。
正十二角形にすると 、正九十六角形なら 。円の半周である に、下から寄っていく。
外側から囲む正多角形をとれば、上からの評価も出る。アルキメデスはこの 2 つで を挟んだ[2]。
内側と外側から挟む
半径 の円に内接する正 角形を考える。中心から見た 1 辺の張る角は である。
二等辺三角形を半分に割ると、1 辺の長さは 。周の長さは になる。
外接する正 角形なら、1 辺は で、周は である。

円周は なので、半分にすると次の挟み方になる。
を増やすほど両側が近づく。どこまで近づくかを極限で確かめる。
両端とも に向かう
と置くと、 は にあたる。
外側も同じで、 である。
両端が同じ値に向かうので、はさみうちの原理から円の半周が だと決まる。三角関数の極限が、そのまま円周率の定義を支えている。
例:面積で挟んでも同じ
周ではなく面積で近づける道もある。内接する正 角形は、頂角 の二等辺三角形が 個集まった形である。
三角形 1 個の面積は なので、全体は 。
半径 の円の面積が であることが出た。周でも面積でも、同じ極限に落ちる。
アルキメデスが出した数値
アルキメデスは正六角形から始め、辺の数を倍にしていった。、、、、 の 5 段階である[2]。
| 内側から | 外側から | |
|---|---|---|
九十六角形で得られた評価が である[1][3]。小数にすると 。
2 つの平均をとると で、誤差はおよそ にとどまる[1]。

辺の数を倍にする手続き
辺を倍にするたびに三角関数の値を求め直す必要がある。半角の公式がその役目を果たす。
正六角形の から始めれば、平方根の計算だけで 、 と進める。
アルキメデスは三角関数を持たなかったので、幾何の作図と平方根の近似で同じことをやっている[1][2]。
辺の数を倍にする漸化式は、半角の公式そのものである。
角が半分になるので と を求め直す。平方根が 1 回ずつ増えていく。
近づく速さ
を倍にすると、上下の幅はおよそ になる。誤差が に比例するからである。
の展開から が出る。 なら である。
実際の差 と一致した。桁を 1 つ増やすには辺の数を約 3 倍にする必要がある。

窮尽法という名前
この考え方は窮尽法と呼ばれ、エウドクソスに始まるとされる[4]。アルキメデスが多彩に使いこなした[4]。
当時は極限の理論がなかったので、結論は背理法で述べられた[4]。求める量より大きいと仮定しても小さいと仮定しても矛盾する、という形である。
現代の言葉に直すと と書ける[4]。挟んで追いつめる手つきは、はさみうちの原理そのものになっている。
多角形の限界
多角形を使う方法は、17 世紀のファン・ケーレンが 35 桁を出したところで頭打ちになった[1]。
理論の進歩ではなく、計算の根気だけが競われる状態だったと評されている[1]。そのあと級数を使う方法に置きかわった。
自体の性質も分かってきた。リンデマンが 1882 年に超越数であることを示し、定規とコンパスで円と同じ面積の正方形を作れないと決着した[3]。
辺の数を倍にすると誤差が 4 分の 1 になる。桁を稼ぐには辺を大幅に増やす
項を 1 つ足すごとに桁が増える形が作れる。多角形より速い
半径 の円に内接する正 角形の周の長さは何に近づくか。
面積の側も確かめる。
はいくつか。
である。これは半径 の円の面積にあたる。 は周の長さ、 は係数を半分にした誤りになる。
円周率を「円周と直径の比」と言うだけでは値が出ない。多角形で上下から挟み、三角関数の極限でその幅を に潰す。そこではじめて数として決まる。














1 辺が 2sinnπ で n 本あるので、周は 2nsinnπ=2π⋅θsinθ の形になり 2π である。π は半周の値、n は辺の本数を答えたものになる。