∫exsinxdx に部分積分を当てると ∫excosxdx が残る。もう一度当てると、こんどは最初の積分がそのまま戻ってくる。
繰り返しても簡単にならない。ところが、戻ってきた積分を未知数と見て方程式を解けば答えが出る[1]。
∫exsinxdx=2ex(sinx−cosx)+C
多項式のときは次数が下がって終わったが、こちらは下がらない。代わりに、堂々巡りそのものを利用する。
なぜ戻ってくるのか
ex は微分しても積分しても形が変わらない。sinx は 2 回微分すると符号だけ変わって戻る。
どちらの因子も、2 回の操作で出発点に帰ってくる。だから積分全体も 2 回で一周する。
2 回当てて方程式にする
I=∫exsinxdx、J=∫excosxdx と置く。ex を積分側に固定して 2 回当てる。
1 回目は f=sinx、g′=ex とする。
I=exsinx−∫excosxdx=exsinx−J
2 回目は J に当てる。f=cosx なので f′=−sinx である。
J=excosx+∫exsinxdx=excosx+I
J を消すと I についての方程式になる。
I2II=exsinx−(excosx+I)=ex(sinx−cosx)=2ex(sinx−cosx)+C
移項して 2 で割るだけ。積分記号が両辺に出てくる形を、そのまま連立方程式として扱っている[3]。
例 1:excosx
J=excosx+I に、求めた I を代入する。
J=excosx+2ex(sinx−cosx)=2ex(2cosx+sinx−cosx)=2ex(cosx+sinx)+C
sin 版と cos 版で、括弧の中の符号だけが違う。
一般の形
∫eaxsinbxdx も同じ手順で解ける。分母に a2+b2 が出る[2]。
∫eaxsinbxdx=a2+b2eax(asinbx−bcosbx)+C
∫eaxcosbxdx=a2+b2eax(acosbx+bsinbx)+C
a=b=1 を入れると、分母が 2 になって前の答えに戻る。
例 2:e2xsin3x
a=2、b=3 なので a2+b2=13 である。
∫e2xsin3xdx=13e2x(2sin3x−3cos3x)+C
公式を覚えなくても、その場で 2 回部分積分すれば同じ式が出る。試験では導けるほうが安全になる。
例 3:e−xcos2x
a=−1、b=2 で a2+b2=5 である。
∫e−xcos2xdx=5e−x(−cos2x+2sin2x)+C
a が負でも式はそのまま使える。
例 4:∫0πexsinxdx
原始関数に代入する。sinπ=0、cosπ=−1 である。
=[2ex(sinx−cosx)]0π=2eπ(0+1)−21⋅(0−1)=2eπ+1
eπ≈23.14 なので、値はおよそ 12.07 になる。
例 5:∫0π/2excosxdx
=[2ex(cosx+sinx)]0π/2=2eπ/2(0+1)−21+0=2eπ/2−1
赤い曲線の高さの差が、青い面積になっている。原始関数と定積分の関係が 1 枚に収まっている。
途中で選び方を変えないこと
2 回目の部分積分では、1 回目と同じ側を微分側に置く。ex を積分側に固定したまま進める。
途中で入れかえると、部分積分の式をそのまま逆にたどることになり、0=0 という当たり前の式に落ちる。
同じ側を保つ
ex を積分側に固定。2 回目で I が戻り、方程式が立つ
途中で入れかえる
もとの式へ引き返すだけ。I=I となって何も出ない
参考文献
Paul Dawkins. *Integration by Parts*. Paul's Online Notes, Lamar University.
$\int e^x \sin x\,dx$ は部分積分を 2 回当てても簡単になりません。もとの積分がそっくり戻ってきます。そこで戻ってきたものを未知数と見て、移項して $2$ で割る。$e^x$ は微分しても変わらず、$\sin x$ は $2$ 回で符号だけ変えて戻るので、必ず一周する仕組みです。$e^{ax}\sin bx$ の分母が $a^2+b^2$ になる理由、途中で微分側を入れかえると $0 = 0$ に落ちる事情まで扱います。