xcosx のような積は、置換積分では手が出ない。cosx の中身を x と置いても、外の x が消えないためである。
こういう積を扱う道具が部分積分になる。積の微分公式をそのまま裏返しただけの式である[1]。
∫f(x)g′(x)dx=f(x)g(x)−∫f′(x)g(x)dx
右辺にも積分が残るが、f が微分されて簡単になっていれば、そちらのほうが解きやすい。積分を 1 段やさしい積分に置きかえる道具だと思えばよい。
積の微分公式から出る
積の微分公式を書く。
{f(x)g(x)}′=f′(x)g(x)+f(x)g′(x)
両辺を積分する。左辺は微分の積分なので f(x)g(x) に戻る。
f(x)g(x)=∫f′(x)g(x)dx+∫f(x)g′(x)dx
片方の積分を左へ移せば、部分積分の式になる。導出はこれだけで終わる。ブルック・テイラーが 1715 年に発表した手法とされる[4]。
図で見ると長方形の分割になる
u=f(x)、v=g(x) と置き、u と v の平面に曲線を描く。曲線の下側と左側に分けた 2 つの面積が、それぞれの積分にあたる[3]。
2 つを足すと長方形 uv になる。これが部分積分の式そのものである。
青が ∫vdu、赤が ∫udv である。合わせて長方形になるので、片方を長方形から引けばもう片方が出る。
どちらを微分側にするか
部分積分では、2 つの因子のうち片方を微分し、もう片方を積分する。選び方で難しさが大きく変わる。
原則は 1 つ。微分すると簡単になるほうを微分側に置く[2]。多項式は微分するたびに次数が下がるので、たいてい微分側になる。
右の選び方でも式としては正しい。ただし残った積分がもとより難しくなり、先へ進めない。
例 1:xcosx
f=x、g′=cosx とする。f′=1、g=sinx である。
∫xcosxdx=xsinx−∫1⋅sinxdx=xsinx+cosx+C
微分して確かめる。(xsinx+cosx)′=sinx+xcosx−sinx=xcosx となり、もとに戻った。
例 2:xex
f=x、g′=ex とする。g=ex である。
∫xexdx=xex−∫exdx=xex−ex+C=(x−1)ex+C
ex は何度積分しても形が変わらないので、積分側に置くのに向いている。
例 3:xsinx
g′=sinx なので g=−cosx になる。符号を落としやすいところ。
∫xsinxdx=−xcosx−∫(−cosx)dx=−xcosx+sinx+C
例 4:1 次式と指数関数
∫(x+1)e2xdx
f=x+1、g′=e2x とする。g=2e2x である。
=(x+1)2e2x−∫2e2xdx=2(x+1)e2x−4e2x+C=4(2x+1)e2x+C
g を求めるときに 21 が出る。この係数を忘れると答え全体がずれる。
定積分の場合
fg の部分に上端と下端を入れる。積分記号の外へ出た項も、区間で評価する。
∫abf(x)g′(x)dx=[f(x)g(x)]ab−∫abf′(x)g(x)dx
[fg] の値がその場で数になるので、残る積分だけを計算すれば終わる。
例 5:∫01xexdx
f=x、g′=ex とする。
∫01xexdx=[xex]01−∫01exdx=e−[ex]01=e−(e−1)=1
e が出てきて、そのまま消える。答えはちょうど 1 になる。
例 6:∫0πxsinxdx
∫0πxsinxdx=[−xcosx]0π+∫0πcosxdx=π+[sinx]0π=π+0=π
−πcosπ=π である。残った積分が 0 になり、π だけが残る。
例 7:∫0π/2xcosxdx
=[xsinx]0π/2−∫0π/2sinxdx=2π−[−cosx]0π/2=2π−1
部分積分を選ぶ目印
多項式と、三角関数または指数関数の積。多項式を微分側に置く。
logx が掛かっている形。log を微分側に置く。
同じ関数が 2 回微分すると戻ってくる形。2 回使って方程式にする。
3 番目は消去法である。まず置換を探し、当たらなければ部分積分に回るという順番になる。
置換積分
中身とその微分がセットで現れる形。∫2xcos(x2)dx のような合成関数
部分積分
無関係な 2 つの関数の積。∫xcosxdx のように中身と外が独立している
xcos(x2) なら置換、xcosx なら部分積分。似た見た目でも、中身が x2 か x かで手が変わる。
参考文献
Paul Dawkins. *Integration by Parts*. Paul's Online Notes, Lamar University.
$x\cos x$ のような積は置換では解けません。積の微分公式 $(fg)' = f'g + fg'$ を両辺積分して移項すれば、部分積分の式がそのまま出てくる。$u$-$v$ 平面では、曲線の下と左に分けた 2 つの面積を足すと長方形 $uv$ になるという図に対応します。選び方の原則は 1 つで、微分すると簡単になるほうを微分側へ。多項式ならたいてい微分側です。$x\cos x$ から定積分まで 7 通りの計算例を並べました。