分母が x2+a2 や a2−x2 になっている積分は、答えに π が出てくる。円が隠れているからである。
∫01x2+1dx=4π,∫011−x2dx=2π
どちらも x を三角関数で置き換えると、被積分関数がまるごと消えて ∫dθ だけが残る。角そのものが答えになる形である[1]。
高校では定積分の形で扱う。不定積分のままだと θ を x に戻す必要があり、そこに逆三角関数が要るためである[2]。
分母が x2+a2 なら x=atanθ
1+tan2θ=cos2θ1 を使う[3]。x=atanθ と置くと、分母と dx が同じ形になって打ち消し合う。
x2+a2dx=a2tan2θ+a2=cos2θa2=cos2θadθ
割ると a1dθ になる。積分は角の差を測るだけの計算に変わる。
∫x2+a2dx=a1∫dθ=aθ+C
分母が a2−x2 なら x=asinθ
sin2θ+cos2θ=1 を使う。ルートの中が平方になる。
a2−x2dx=a2−a2sin2θ=acosθ=acosθdθ
こちらも割ると dθ だけが残る。a すら消える。
∫a2−x2dx=∫dθ=θ+C
θ の範囲は −2π≤θ≤2π にとる。この範囲なら cosθ≥0 なので、ルートを外すときに絶対値が要らない。
x が遠くまで走っても、対応する θ は 2π の手前で止まる。定積分の値が有限にとどまる理由がここにある。
積分区間を書きかえる
定積分では、上端と下端も θ の値に直す。x の値を代入して、対応する角を読む。
| x の値 | x=tanθ なら | x=sinθ なら | | 0 | θ=0 | θ=0 |
| 21 | — | θ=6π |
| 1 | θ=4π | θ=2π |
| 3 | θ=3π | — |
置換したあとは x に戻さない。角の値のまま代入して終わる。
例 1:∫01x2+1dx
a=1 なので x=tanθ と置く。x:0→1 に対して θ:0→4π である。
∫01x2+1dx=∫0π/4dθ=4π
被積分関数がすべて消えて、角の幅がそのまま答えになった。
例 2:∫03x2+1dx
上端が変わるだけ。tanθ=3 より θ=3π である。
∫03x2+1dx=3π
例 3:a が 1 でない場合
∫02x2+4dx
a=2 なので x=2tanθ と置く。x:0→2 に対して tanθ:0→1、つまり θ:0→4π。
∫02x2+4dx=21∫0π/4dθ=8π
a1=21 が前に出る。a が大きいほど値が小さくなる。
例 4:∫03x2+9dx
同じ形で a=3。x=3tanθ、θ:0→4π である。
∫03x2+9dx=31⋅4π=12π
上端が a に等しいときは、いつでも θ が 4π まで動く。答えは 4aπ になる。
例 5:係数が付いた形
∫01/24x2+1dx
先に u=2x と置いて標準形に直す。du=2dx、u:0→1 である。
=21∫01u2+1du=21⋅4π=8π
x2 の係数を 1 にしてから当てると、迷わずに済む。
例 6:∫011−x2dx
x=sinθ と置く。x:0→1 に対して θ:0→2π である。
∫011−x2dx=∫0π/2dθ=2π
被積分関数は x=1 で発散するのに、積分の値は有限にとどまる。角のほうで見ると、ただの 2π の幅である。
例 7:∫01/21−x2dx
sinθ=21 より θ=6π である。
∫01/21−x2dx=6π
例 8:半径が 1 でない場合
∫024−x2dx
a=2 なので x=2sinθ と置く。sinθ:0→22 より θ:0→4π。
∫024−x2dx=∫0π/4dθ=4π
こちらは a が前に出ない。分母の acosθ と dx の acosθ が完全に打ち消し合うためである。
x2+a21
x=atanθ。a1 が前に出る。答えは aθ
x=asinθ。係数は残らない。答えは θ そのもの
上端を伸ばすとどうなるか
∫0bx2+1dx の上端 b を大きくしていく。対応する角 θb は tanθb=b を満たす。
b をいくら大きくしても θb は 2π を超えない。したがって積分の値も 2π より小さいままである。
グラフの裾が長く伸びているのに、その下の面積が有限にとどまる。分母が x2 で増えるほど速く、裾が薄いためである。
例 9:対称性を使う
∫−11x2+1dx
被積分関数は偶関数なので、0 から 1 までを 2 倍すればよい。
=2∫01x2+1dx=2⋅4π=2π
置換する前に対称性を見ておくと、計算が半分で済む。
例 10:平方完成してから当てる
∫01x2−2x+5dx
分母をそのままでは形が合わない。平方完成する。
x2−2x+5=(x−1)2+4
u=x−1 と置けば標準形になる。u:−1→0 である。
∫−10u2+4du=21⋅4π=8π
最後は u=2tanθ で θ:−4π→0 となり、幅が 4π である。
分母が 2 次式のときは、まず平方完成して (x−p)2+q の形にする。q>0 なら tan の置換が当たる。
q<0 なら因数分解できるので、部分分数分解のほうへ回る。判別式で見分けられる。
参考文献
$x = a\tan\theta$ と置くと分母と $dx$ が打ち消し合い、$x = a\sin\theta$ と置くとルートが外れて $a$ まで消えます。残るのは $\int d\theta$ だけで、角の幅がそのまま答えになる。だから値に $\pi$ が現れます。積分区間も角の区間へ書きかえるので、$x$ に戻す必要はありません。上端をどこまで伸ばしても面積が $\dfrac{\pi}{2}$ を超えない理由、平方完成してから当てる形まで、定積分の計算例を 10 通り並べました。