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分母を見れば行き先が決まる|有理関数の積分をどの手で解くか

多項式を多項式で割った形を有理関数という。この形の積分は、必ず解ける。しかも打つ手は 4 つしかない[1]。

問題は、どの手を選ぶかである。分母と分子を見て順に判定すれば、迷わずに行き先が決まる。

分子の次数を下げる

分母を因数分解する

分子が分母の微分か見る

残りを分解して積分する

上から順に確かめるだけでよい。以下ではこの流れを 1 段ずつたどる。

判断の地図

分岐は分母の形で決まる。1 枚にまとめると次のようになる。

第 1 段:分子の次数を下げる

分子の次数が分母以上なら、まず割り算をする。商と余りに分ければ、多項式の積分と真分数の積分に分かれる。

左辺のままでは手が出ないが、右辺なら定数と既知の形の和になる。分子の次数を下げるだけで景色が変わる。

例 1:割り切れる場合

なので、割ると多項式だけが残る。

割り切れるなら、そこで話が終わる。

例 2:割った余りが残る場合

第 2 項は の置換で になる。

第 2 段:分子が分母の微分か見る

割り算のあと、分子と分母を見比べる。分子が分母の導関数なら、その場で になる[2]。

分母を微分すると で、分子と一致している。分解の必要がない。

定数倍のずれなら調整できる。 なら を前に出せばよい。

第 3 段:分母を因数分解する

因数分解できれば部分分数分解へ回る。できるかどうかは判別式で決まる。

次式 なら、 の符号を見る。 で 2 つの 1 次式の積、 で分解できない。

例 3:1 次式の積に分かれる

と置く。分母を払うと になる。

を代入して 、 を代入して である。

代入する値は、分母が になる を選ぶ。片方の項が消えて係数が 1 発で出る。

例 4:もっとも簡単な分解

である。通分して確かめられる。

例 5:差の形

が前に出る。 で、2 つの根の差が だからである。

第 4 段:分解できないなら平方完成

なら 1 次式の積にできない。平方完成して の形にし、三角置換へ回す[3]。

例 6:

分母を平方完成する。

と置くと である。

で 、係数 が前に出る。

分子が 1 次式の場合は 2 つに割る

分母が既約な 2 次式で、分子が 1 次式のときは、 の部分と定数の部分に分ける。

例 7:

分子を の項と定数の項に分ける。

第 1 項は 型、第 2 項は三角置換である。

と が両方出てくる。既約 2 次式が分母にあるときの典型的な答えの形になる。

分子に の項がある

型に整えて にする

分子が定数だけ

平方完成して三角置換へ回す

判定の順番をまとめる

見るところ条件行き先
分子の次数分母以上割って帯分数に
分子と分母微分の関係
分母の判別式部分分数分解
分母の判別式平方完成と三角置換

この 4 つで有理関数はすべて片づく。上から順に当てはめれば、選択に迷うところがない。

有理関数の積分に「解けない」はない。 と三角置換と多項式の 3 つに必ず落ちるためである。

難しく見える形でも、割り算と因数分解で整理すれば、既知の部品の和になる。

参考文献

Partial fraction decomposition. Wikipedia(英語).
Logarithmic derivative. Wikipedia(英語).
Trigonometric substitution. Wikipedia(英語).
多項式を多項式で割った形の積分に、解けないものはありません。打つ手は 4 つだけ。分子の次数が分母以上なら割って帯分数に、分子が分母の微分なら $\log$、分母が因数分解できれば部分分数分解、できなければ平方完成して三角置換へ。判別式の符号が最後の分岐を決めます。分子が $1$ 次式なら $\dfrac{f'}{f}$ の部分と定数の部分に割る。答えに $\log$ と $\pi$ が同居するのはそのためです。