sinx と cosx はそのまま積分できるが、sin2x や sin3xcos2x になると公式が当たらない。
打つ手は 2 つしかない。次数を下げるか、置換に持ちこむか。どちらを選ぶかは、指数が偶数か奇数かで決まる[1]。
積の形も同じで、sin3xcos2x のような形は積和公式で和に直せば、あとは 1 次式の積分になる。
2 乗は次数を下げる
2 倍角の公式 cos2x=1−2sin2x を sin2x について解く。
sin2x=21−cos2x,cos2x=21+cos2x
右辺はどちらも 1 次式の三角関数なので、そのまま積分できる。2 乗を消して角を 2 倍にする、という交換をしている[3]。
赤い破線が青に重なる瞬間が、振幅がちょうど 21 になったところ。sin2x は「高さ 21 の台の上で cos2x が振れている」形をしている。
例 1:sin2x と cos2x
∫sin2xdx∫cos2xdx=∫21−cos2xdx=2x−4sin2x+C=∫21+cos2xdx=2x+4sin2x+C
符号だけが違う。2 つを足すと x+C になり、sin2x+cos2x=1 と辻褄が合う。
例 2:sin4x は 2 回下げる
1 回下げても cos22x が残るので、もう一度下げる。
sin4x=(21−cos2x)2=41−2cos2x+cos22x=41(1−2cos2x+21+cos4x)=83−2cos2x+8cos4x
ここまで来れば 1 次式の積分だけになる。
∫sin4xdx=83x−4sin2x+32sin4x+C
偶数乗は、この手順を指数の半分だけ繰り返せば必ず片づく。
奇数乗は 1 つ残して置換する
sin3x では次数下げが使えない。代わりに sinx を 1 つ外へ出し、残りを cosx で書き直す。
sin3x=sinx⋅sin2x=sinx(1−cos2x)
こうすると t=cosx、dt=−sinxdx の置換がそのまま当たる。外へ出した sinx が dt に化ける。
例 3:sin3x
t=cosx と置く。dt=−sinxdx である。
∫sin3xdx=∫(1−cos2x)sinxdx=−∫(1−t2)dt=−t+3t3+C=−cosx+3cos3x+C
例 4:sin5x
同じ置換で通る。sin4x=(1−cos2x)2 と書き直す。
∫sin5xdx=−∫(1−t2)2dt=−∫(1−2t2+t4)dt=−t+32t3−5t5+C=−cosx+32cos3x−5cos5x+C
奇数乗は何乗でも、展開して多項式の積分に落ちる。
例 5:sin3xcos2x
sin の指数が奇数なので、sinx を 1 つ抜いて t=cosx と置く。
∫sin3xcos2xdx=∫(1−cos2x)cos2x⋅sinxdx=−∫(1−t2)t2dt=−∫(t2−t4)dt=−3cos3x+5cos5x+C
cos の側が偶数でも困らない。抜くのは奇数のほうと決まっている。
例 6:sin2xcos2x
両方偶数なので次数下げに回る。先に 2 倍角でまとめると速い。
sin2xcos2x=(sinxcosx)2=(2sin2x)2=4sin22x=41⋅21−cos4x=81−cos4x
∫sin2xcos2xdx=8x−32sin4x+C
積を和に直す
角の違う sin と cos の積は、積和公式で和になる[2]。
sinAcosB=21{sin(A+B)+sin(A−B)}
cosAcosB=21{cos(A+B)+cos(A−B)}
sinAsinB=21{cos(A−B)−cos(A+B)}
右辺は 1 次式の三角関数の和なので、そのまま積分できる。積のままでは手が出ないところ。
m と n をどう変えても、赤い破線は青い曲線から離れない。積が和に等しいという式が、そのまま重なりとして見えている。
例 7:sin3xcos2x
A=3x、B=2x を積和公式に入れる。
sin3xcos2x∫sin3xcos2xdx=21{sin5x+sinx}=21(−5cos5x−cosx)+C=−10cos5x−2cosx+C
例 8:cos5xcos3x
cos どうしなので 2 番目の公式を使う。
cos5xcos3x∫cos5xcos3xdx=21{cos8x+cos2x}=16sin8x+4sin2x+C
角が同じ sin2xcos2x のような形なら、2 倍角のほうが速い。sin2xcos2x=21sin4x である。
tan がらみは 1 + tan² を使う
tan の積分は cosxsinx と見て、t=cosx の置換で出る。
∫tanxdx=−log∣cosx∣+C
2 乗以上では、次の関係が効く。両辺を cos2x で割った形である。
1+tan2x=cos2x1
cos2x1 は tanx の導関数なので、∫cos2xdx=tanx+C となる。
tan の 2 乗以上では、1+tan2x=cos2x1 で書き直す手が定石になる。cos2x1 が tanx の導関数だからである。
t=tanx と置けば dt=cos2xdx となり、置換がそのまま通る。
例 9:tan2x
∫tan2xdx=∫(cos2x1−1)dx=tanx−x+C
−x を忘れやすい。tan2x と cos2x1 は 1 だけ違う。
例 10:tan3x
tanx を 1 つ残し、残りを書き直す。
tan3x=tanx(cos2x1−1)=cos2xtanx−tanx
前半は t=tanx、dt=cos2xdx の置換で ∫tdt=2tan2x になる。
∫tan3xdx=2tan2x+log∣cosx∣+C
手順のまとめ
| 形 | 見るところ | 打つ手 | | sin2x、cos4x | 指数が偶数 | 次数を下げる |
| sin3x、cos5x | 指数が奇数 | 1 つ抜いて置換 |
| sin3xcos2x | 奇数がある | 奇数のほうを抜く |
| sin3xcos2x | 角が違う積 | 積和公式 |
| tan2x、tan3x | tan の累乗 | 1+tan2 で書き直す |
参考文献
$\sin^2 x$ は $2$ 倍角で $\dfrac{1-\cos 2x}{2}$ に直せば $1$ 次式の積分になります。$\sin^3 x$ では次数下げが効かず、$\sin x$ を $1$ つ抜いて $t = \cos x$ と置く。指数が偶数か奇数かだけで打つ手が決まります。角の違う積は積和公式で和に直し、$\tan$ の累乗は $1 + \tan^2 x = \dfrac{1}{\cos^2 x}$ で書き換える。$\sin^4 x$ から $\tan^3 x$ まで 10 通りの計算例を並べました。