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10 乗を展開せずに済ませる〜定積分と漸化式(ウォリス積分)

を、次数下げで求めるのは現実的でない。 乗を展開する手間が大きすぎる。

代わりに、 乗の積分と 乗の積分を結ぶ式を作る。部分積分を 1 回当てるだけで出てくる[1]。

あとは と から 2 つずつ飛ばして上っていけばよい。ウォリス積分と呼ばれる形である。

漸化式を作る

を と の積と見て、 のほうを積分側に置く[2]。

境界項は消える。上端では 、下端では だからである。

残った積分の を に直す。ここで が戻ってくる。

について解く。移項して で割るだけ。

出発点の 2 つ

と は直接計算できる。

漸化式は 2 つ飛ばしなので、偶数の列と奇数の列が別々に伸びる。 が出るのは偶数の側だけになる。

値を並べる

漸化式を順に当てると、次のように決まっていく。

偶数の列奇数の列

のように、前の値に分数を掛けるだけで進む。

例 1: を求める

乗を展開する必要がない。分数を 3 つ掛けるだけで済む。

例 2: を求める

奇数の側には が出ない。出発点の に が入っていないためである。

cos でも同じ値になる

と置換すると、 になり区間も同じ に戻るためである。

では と が鏡写しになっている。片方の結果がそのまま使える。

が大きくなるほど山が右へ寄って細くなる。 の部分が累乗で急に小さくなるためである。

指数関数でも漸化式が作れる

同じ手が他の形にも効く。 を考える。

、 として部分積分する。

こちらは 1 つ飛ばしではなく、1 つずつ下りる。出発点は である。

例 3: を求める

順に計算する。

である。 の原始関数を求めなくても、3 段で値が出た。

tan の累乗でも作れる

には、部分積分を使わない漸化式がある。

と書き直す[3]。

前半は の置換で出る。符号がマイナスなので、偶数段と奇数段で交互に符号が変わる。

漸化式を作る手順

乗を 乗と 1 つに分ける

部分積分または恒等式で書きかえる

が戻ってきたら移項する

出発点を直接計算する

が右辺に戻ってくるところが鍵になる。戻ってこなければ、そのまま次数の下がった積分として使えばよい。

漸化式が作れるのは、 乗の積分が 乗や 乗の積分と結びつくときである。部分積分で次数が 1 下がる構造を使っている。

出発点さえ計算できれば、あとは何乗でも掛け算で届く。展開する必要がなくなる。

例 4: を求める

偶数なので から上る。

分子は奇数の積 、分母は偶数の積 である。約分して となり、 を掛けて上の値になる。

乗を展開する道と比べれば、手間の差は歴然としている。

参考文献

Wallis' integrals. Wikipedia(英語).
Integration by parts. Wikipedia(英語).
List of integrals of trigonometric functions. Wikipedia(英語).
$\int_0^{\pi/2}\sin^{10}x\,dx$ を次数下げで解くのは手に負えません。$n$ 乗と $n-2$ 乗を結ぶ式を作れば、分数を掛けるだけで届きます。部分積分を $1$ 回当てて $I_n$ が右辺に戻ってきたら、移項して $I_n = \dfrac{n-1}{n}I_{n-2}$。$2$ つ飛ばしなので偶数と奇数で列が分かれ、$\pi$ が残るのは偶数側だけ。多項式と指数関数の積、$\tan$ の累乗でも同じ手が効きます。