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直線をぜんぶ引くと曲線が残る - クレローの微分方程式と特異解

の一般解は です。傾きの違う直線が並んだだけのもの。

ところが という放物線も、この方程式を満たします。 にどんな数を入れても出てこない解です。

直線の族と、その族すべてに接する曲線。クレローの微分方程式では、この 2 つが同時に解になります[1]。

直線が並ぶ形

と置きます。クレローの微分方程式は次の形です[2]。

に掛かるのが そのもので、残りは だけの関数 。 と が絡み合う項がありません。

を定数 に固定すると になり、傾き で切片 の直線。 は傾きから切片を決める規則を持っているだけです。

微分すると 2 つに割れる

両辺を で微分します。左辺は 、右辺は積の微分と合成関数の微分で次のようになる。

両辺から が消えて、残るのは 1 つの積です。

積が なので、どちらかの因子が になる。この分岐がそのまま解の 2 系統に対応します[3]。

の側

傾きが動かない。 で固定され、直線が 1 本ずつ出てくる

の側

傾きが場所とともに変わる。曲線が 1 本だけ出てくる

どちらも捨てられません。片方だけを解と呼ぶと、方程式を満たす関数をとりこぼします。

一般解

なら です。もとの式に戻すと になる。

確かめは代入だけで済みます。 なので右辺は となり、左辺と一致する。

任意定数を 1 つ含んでいるので、1 階の方程式の一般解として過不足がありません[2]。

直線は 1 本ずつ独立に引かれているのに、下側だけがきれいに縁どられます。この縁が、もう一方の解です。

特異解

のほうを見ます。 を残したまま、 と を で表す。

は、もとの式 に を入れただけ。 をパラメータとする曲線が 1 本決まります。

これが特異解です。 に値を入れて作れる解ではありません[1]。

特異解が本当に解であること

パラメータ表示から傾きを計算します。 で微分すると次のようになる。

なら、割り算ができます。

この曲線の上では、傾きがちょうどパラメータ に等しい。あとは代入するだけです。

もとの方程式に戻りました。 が効いたのは、割り算の 1 か所だけ。

が 1 次式だと になり、この割り算が止まります。

そのときは特異解が現れない。あとの節で実際に確かめる。

包絡線として見る

曲線族 の包絡線は、 と から を消して求めます[4]。

一般解を と書けば、 での偏微分は次のとおり。

さきほど出た と同じ式です。特異解は直線族の包絡線にほかなりません。

包絡線の各点には、そこで接する直線が 1 本あります。だから同じ点を 2 つの解が通る。

例:

一般解は 。特異解は から 、つまり です。

に入れます。

放物線 が特異解になりました。検算すると で、。左辺に戻ります。

例:

符号を変えるだけで、放物線が上下ひっくり返ります。

の一般解は 。 なので です。

を入れて [4]。今度は放物線の内側を接線が埋めます。

例:円が出てくる

なので です。

2 乗して足すと が消えます。

半径 の円。一般解 は、この円の接線を傾きごとに並べたものです。

例:はしごが描く曲線

長さ の棒を、両端を 軸と 軸に付けたまま滑らせます。棒が通った跡の境目は、どんな曲線か。

切片を 、 とすると棒は で、長さの条件が です。

傾きが なので 。長さの条件に入れると から次が出ます。

棒の式は なので、 のクレロー型でした。

を計算して代入します。

乗して足すと、 がきれいに消えます。

アステロイドと呼ばれる曲線です。はしごを壁に立てかけて滑らせたとき、届かない隅の形がこれになります。

棒そのものが一般解の 1 本ずつ、隅を縁どる曲線が特異解です。

特異解が現れない形

と 1 次式にとると になります。

一般解は 、つまり 。どの直線も点 を通ります。

からは しか出てこず、 が決まらない。1 点に集まる束には、接する曲線がありません[1]。

が かどうかで、絵がここまで変わります。境目の曲線が出るか、1 点につぶれるか。

特異解があるとき

が真に曲がっている。 なら直線族は 1 点に集まらず、境目の曲線ができる

特異解がないとき

が 1 次式。 で直線族が束になり、包絡線が 1 点につぶれる

一意性が破れる場所

特異解の上に点をとると、そこを通る解が 2 つあります。包絡線そのものと、その点で接する直線。

初期値を包絡線の上に置いた問題は、解が 1 つに決まりません。ピカールの定理が使えない場所です。

方程式を について解くと、理由がはっきりします。 を の 2 次方程式と見ると次のとおり。

根号の中が になるのは 、つまり です。特異解と一致しました。

2 つの枝がここでくっつくので、右辺は について微分できなくなる。リプシッツ条件が壊れます[1]。

逆に作る

曲線が先にあるとき、その接線全体を表す方程式はクレロー型になります[1]。

放物線 の点 での接線は 。傾きを と書けば です。

代入して 。 のクレロー方程式でした。

特異解を計算すると から 、 となり、。もとの放物線に戻ります。

曲線を 1 本決める

各点の接線を傾きで表す

クレロー型の方程式が出る

特異解としてもとの曲線が戻る

例:解を全部書き出す

、 です。一般解は ()。

から とすると、 の範囲で次が出ます。

特異解は 、つまり の上半分です。 の符号を負にとれば下半分も出ます。

一般解特異解

の形が変わると特異解の姿も変わりますが、手順は 4 例とも同じでした。

検算のしかた

特異解を得たら、必ずもとの方程式に入れ直します。パラメータを消す途中で符号を落としやすいためです。

なら を作り、 を計算して に戻るかを見る。

接することも確かめられます。特異解の点 での傾きを とし、直線 がその点を通るかどうか。通れば包絡線です。

の特異解として正しいものはどれですか。

__RESULT__

なので 、 です。 となり、、。2 つを組み合わせると 、つまり になります。

直線族を書き、その境目を探す。クレロー方程式の解き方は、この 2 段だけです。

参考文献

Clairaut equation. Encyclopedia of Mathematics.
Clairaut's Differential Equation. Wolfram MathWorld.
Vladimir Dobrushkin. *Clairaut Equations*. Applied Mathematics 33, Brown University.
Russell Herman. *Other First Order Equations*/01%3A_First_Order_ODEs/1.04%3A_Other_First_Order_Equations). A First Course in Differential Equations for Scientists and Engineers.
$y = xy' + (y')^2$ の解は直線族 $y = cx + c^2$ ですが、放物線 $y = -x^2/4$ も同じ方程式を満たします。両辺を微分すると $(x + f'(p))p' = 0$ という積になり、傾きが固定される側から直線が、もう一方から曲線が 1 本出る。この曲線は直線族の包絡線で、$c$ にどんな値を入れても作れない特異解。$f(p) = a\sqrt{1+p^2}$ なら円が現れ、長さを決めた棒の両端を軸に付けて滑らせるとアステロイドになります。$f$ が 1 次式のときだけ特異解は出ません。包絡線の上では 2 つの解が同じ点を通るため、初期値問題の一意性も崩れる。