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微分方程式とは何か?答えが数ではなく関数になる方程式

方程式を解くとは、ふつう数を探すことです。 なら、答えは と の 2 つ。

微分方程式で探すのは数ではありません。未知の関数と、その導関数とを結びつけた等式が微分方程式で、答えは関数そのものになる[1]。

を満たす は という関数です。答えの住む世界が変わる。

未知数が関数になると何が変わるか

数を探すときの候補は、数直線に並ぶ点です。関数を探すときの候補は、平面に描ける曲線すべて。

探す先が桁違いに広いので、条件を満たすものが 1 本に絞れない。 も も を満たします。

微分すると消える定数のぶんだけ、解が横並びに残る。この余りをどう始末するかが、微分方程式の話の半分を占める。

解とは代入して成り立つ関数のこと

解の定義そのものは素朴です。その関数を方程式に代入して、考えている区間で等式が恒等的に成り立てばよい[3]。

判定は微分して代入するだけなので、解を見つけるより確かめるほうがずっと簡単。この非対称は最後まで付いて回る。

例:指数関数が解になることを確かめる

を微分します。指数関数は微分しても形が変わらないので です。

もとの と一致したので、 の解になりました。 がどんな値でも成り立つため、これは 1 本ではなく解の族。

とすると、恒等的に の関数が残る。これも立派な解の 1 つ。

階数は最高階の導関数で決まる

方程式に現れる導関数のうち、いちばん高い階数がその方程式の階数です[3]。

は 1 階、 は 2 階。 が何乗されていようと、階数の判定には関わらない。

階の方程式を解くと、任意定数が 個現れる。積分を 回するのだから、そのたびに定数が 1 つ増える、と読めば自然です。

例:階数を数える

3 つ並べて確かめます。

は 1 階。最高階が です。
は 2 階。 乗されていても階数は変わりません。
は 4 階。任意定数が 4 個必要になります。

乗が効くのは階数ではなく、線形かどうかの判定のほう。未知関数とその導関数について 1 次であるものを線形といい、 はこれを壊す[7]。

解は 1 本ではなく族になる

の解は です。 を動かすと、同じ形の放物線が上下に平行移動する。

平面のどの点にも、ちょうど 1 本の解曲線が通る。互いに交わらずに平面を埋め尽くす、この様子が一般解の姿です。

初期条件が 1 本を選び出す

を決めるには、通ってほしい点を 1 つ指定します。 で なら、 から 。

このような条件を初期条件、方程式と初期条件をあわせたものを初期値問題といいます[2]。区間の両端で条件を与えるやり方もあり、そちらは境界値問題と呼ぶ[3]。

どちらを課すかで、解が 1 つに決まるかどうかの事情が変わる。

例:初期条件から定数を決める

、 を解きます。一般解は先ほど確かめた です。

を代入すると なので 。求める解は になる。

一般解を書いてから条件を当てて定数を消す、という 2 段構え。微分方程式を解く作業は、たいていこの形をとる。

一般解と特殊解と特異解

階の方程式で、独立な任意定数を 個持つ解を一般解といいます。定数に具体的な値を入れたものが特殊解です[4]。

一般解のどの定数を選んでも出てこない解が、まれに存在する。これを特異解と呼びます[5]。

例:一般解の外にある解

を考えます。変数を分けて積分すると が得られる。

微分すると で、右辺も 。たしかに解です。

ところが恒等的に の関数も、両辺が になるので解になります。 をどう選んでも は恒等的に にはなりません。

この が特異解です。原点を通る解が無数にでき、初期条件を与えても 1 本に決まらなくなる。

解があること、1 つしかないこと

の右辺が連続なら、初期値問題には少なくとも 1 つ解が存在します。ペアノの存在定理[2]。

一意性まで欲しいときは、条件が 1 段きつくなる。 が について局所リプシッツなら解はただ 1 本で、これをピカール・リンデレフの定理と呼びます[5]。

さきほどの は の近くでリプシッツ条件を満たさない。だから一意性が壊れます。

存在だけを言う定理

右辺が連続であればよい。解が 1 本とは限らず、枝分かれを許す。

一意性まで言う定理

右辺が についてリプシッツ連続であることを追加で要求する。そのぶん結論が強い。

条件が強いほど結論も強い、という素直な関係。どちらの定理も局所的な主張で、解が区間の端まで延びるかどうかは別に調べる。

方向場を描くと解かなくても形が見える

は、平面の各点で解曲線の傾きを指定しています。点 に傾き の短い線分を置いたものが方向場です[6]。

解曲線は、この線分に沿って進む曲線。方程式が解けなくても、増える向き・減る向き・落ち着く先は図から読める。

傾きが同じ値になる点を結んだ曲線を等傾斜線という。 とおけば求まるので、方向場を手で描くときの下書きになります。

例:方向場から行き先を読む

の方向場では、どの解も右へ行くほど 1 本の直線に寄っていく。その直線が です。

一般解を書き下すと、図から読んだとおりの形になる。

が大きくなると が消え、残るのは だけ。出発点が違っても、行き先は共通になる。

解ける方程式のほうが珍しい

初等関数で解を書き下せる微分方程式は、ごく一部にすぎません[4]。残りは数値計算で近似するか、解かずに性質だけを調べることになる。

そのため微分方程式の勉強は、解ける形を見分ける練習から始まります。変数分離形、同次形、1 階線形といった型に当てはめる作業です。

型に入らなければ、級数で表す、変換で別の形へ移す、定性的に振る舞いを追う、と道が分かれる。

どこから来たのか

微分方程式は微分積分学と同時に生まれました。ニュートンは 1671 年ごろの『流率法』で 3 つの型を挙げ、無限級数を使って解いています[1]。

ヤコブ・ベルヌーイが 1695 年に を提出し、翌年ライプニッツが解を与えました[1,4]。

ダランベールが 1746 年に 1 次元の波動方程式を見つけ、10 年のうちにオイラーが 3 次元へ広げた。フーリエが熱伝導の方程式を『熱の解析的理論』に載せたのは 1822 年[1,7]。

問題 1:階数と線形性を判定する

次の 4 つについて、階数を答え、線形かどうかを判定せよ。

。
。
。
。

解答 1

1 番目は 2 階で線形です。未知関数とその導関数が 1 次で現れ、係数は だけの関数になっている。

2 番目は 1 階ですが、 があるので非線形。3 番目は 3 階で線形で、係数の は未知関数ではないため問題ない。

4 番目は 1 階の非線形です。 が 2 次なので、階数は 1 のまま線形性だけが壊れる。

問題 2:重ね合わせを確かめる

と がともに の解であることを確かめ、 も解になることを示せ。

解答 2

では 、 です。

でも同様に 、 となり、。

左辺は について 1 次なので、2 つの解を定数倍して足したものも解になる。 を代入すれば、それぞれの結果が定数倍されて足されるだけ。値は のままです。

問題 3:解が定義される範囲

が の解であることを確かめ、 を満たす解と、その解が意味を持つ範囲を答えよ。

解答 3

商の微分から で、これは に一致する。

で とすると 、つまり です。

で分母が になるため、初期条件を含む範囲は に限られる。

右辺が全平面で滑らかなのに、解は有限の で発散する。方程式の見た目からは範囲が読めない例。

問題 4:2 階の初期値問題

の一般解を求め、 と を満たす解を決定せよ。

解答 4

両辺を積分すると 、もう一度積分して次の一般解を得ます。

、 です。

2 階なので任意定数が 2 個あり、条件も 2 つ要りました。階数と条件の個数がそろっている。

問題 5:定数を消して方程式を作る

が満たす 1 階微分方程式を作れ。

解答 5

微分すると です。ここから を消します。

もとの式より なので、代入して整理します。

得られた が答えです。任意定数を含む関数の族から出発して、微分と消去で方程式を作る。解く作業とちょうど逆向きの操作になる。

問題 6:一意性が壊れる初期値問題

、 を満たす解を 2 つ挙げよ。

解答 6

恒等的に の関数がまず 1 つ。両辺とも になります。

も解です。 で、右辺は となり一致する。

さらに で 、 で とつないだ関数も、 ならすべて解になる。同じ初期条件から無数の解が出る。右辺がリプシッツ条件を満たさないときに起きる現象。

の階数と線形性の組として正しいものはどれか。

  • 1 階・線形
  • 2 階・非線形
  • 2 階・線形
  • 3 階・非線形
__RESULT__

最高階の導関数は なので階数は 2 です。 が 2 次で現れているため線形ではありません。右辺の は未知関数を含まないので、線形性の判定には関係しません。

よくある誤り

解を 1 つの関数だと思い込むと外します。任意定数のぶんだけ族になっていて、条件を課してはじめて 1 本に決まります。
階数と次数を混同しないようにします。 は 3 次ですが階数は 2 のままです。
右辺が全平面で滑らかでも、解が全平面で定義されるとは限りません。有限の で発散する解があります。
一般解を書けばすべての解が尽きる、とは言えません。特異解が外に残る場合があります。
初期条件を与えれば必ず解が 1 本に決まる、というのも誤りです。リプシッツ条件が要ります。
線形かどうかは、右辺に の関数があるかでは決まりません。未知関数とその導関数について 1 次かどうかで決まります。

参考文献

Differential equation - Wikipedia(英語)
Ordinary differential equation - Wikipedia(英語)
Differentialgleichung - Wikipedia(ドイツ語)
Équation différentielle - Wikipédia(フランス語)
Ecuación diferencial ordinaria - Wikipedia(スペイン語)
Slope field - Wikipedia(英語)
微分方程 - 维基百科(中国語)
方程式を解くとは、ふつう数を探すこと。微分方程式では関数そのものが答えになります。代入して成り立てば解であること、階数は最高階の導関数で決まること、任意定数のぶんだけ解が族になることを順に確かめ、初期条件がその中から 1 本を選ぶところまでを追います。方向場を描けば、解かずに行き先が読める。一般解の外に特異解が残る場合もあり、同じ初期条件から無数の解が出ることもある。階数の判定から定数の消去まで、計算問題つき。