まっすぐ進める方向は 2 本だけ(連立 1 階線形微分方程式を固有値で解く)
2 つの量が互いを引っぱり合うとき、平面上のどの点にも「次に進む向き」が 1 本ずつ決まります。
たいていの点では、進む向きと原点から見た向きが食い違う。だから軌道は曲がります。
食い違わない方向が 2 本だけあります。 の固有ベクトルの向きで、その直線に乗った点は直線から出ません[1]。
まっすぐ進む方向を探す
という形の解を仮定します。 は定ベクトルです。
が消えて、固有値問題だけが残りました。 が固有ベクトルなら、この形の解が作れます。
意味を絵にすると分かりやすい。固有ベクトルの直線上では、速度 が位置 と平行になります。
平行なので、その直線から外れる成分がない。乗ったら最後、直線に沿って進むだけです。
例:固有値の符号が違う場合
特性方程式は 、つまり です。根は と 。
では を解いて 。 では になります。
の向きには遠ざかり、 の向きには近づきます。原点は鞍点です[2]。
初期値がちょうど の直線上にあれば原点へ落ちますが、少しでもずれると の項が育つ。
例:複素固有値のとき
特性方程式は で、根は 。固有ベクトルも複素数になります。
に対して がとれます。解を書き下してみる。
係数が実数なので、複素数の解の実部と虚部は、それぞれ単独で実数の解になります。展開して分けます。
が振幅を、 が回転を担う。まわりながら遠ざかる渦になります[2]。
実部が正なら外向き、負なら内向き。 ちょうどなら閉じた楕円を描きます。
例:固有ベクトルが 1 本しかない場合
特性方程式は 。 の重根です。
を作ると、行がどちらも同じ式になります。固有ベクトルは の 1 本だけ。
解が 1 本しか作れません。2 本目を探すために、次の形を試します。
微分すると 。一方 です。
の項は両辺で一致しています。残りを比べると、 が満たすべき式が出ます。
右辺が ではなく 。こういう を一般化固有ベクトルと呼びます[3]。
この例では がとれます。
一般化固有ベクトルの式は、 が「 で 1 段落ちた先」にいることを言っています。
重複度が 3 なら鎖がもう 1 段伸び、 の項まで現れる。
相図を分類する
固有値の組み合わせで、原点まわりの絵が決まります。トレースと行列式の 2 つの数だけで判定できる。
判別式は です。特性方程式 の判別式そのもの。
| 条件 | 原点の呼び名 |
|---|---|
| 鞍点 | |
| 、、 | 安定な結節点 |
| 、、 | 安定な渦状点 |
| 、 | 中心 |
の側は、同じ形のまま向きが逆になります。近づく代わりに遠ざかる[1]。
安定性の判定
すべての固有値の実部が負なら、解は原点へ収束します。2 次の場合、条件は と の 2 つにまとまる。
理由は根と係数の関係です。 なら 2 つは同符号か、共役な複素数。
が加われば、同符号のときは両方が負、複素数のときは実部が負になります。
行列の成分をぜんぶ見なくても、2 つの数を計算するだけで安定かどうかが決まる。
高階の方程式を連立に直す
を 、 と置いて書き直します。
トレースは 、行列式は 。判別式 は になります。
2 階の方程式で見慣れた判別式が、そのまま出てきました。振動するかしないかの判定が、渦状点か結節点かの判定と同じものだと分かります。
非線形の系を近づける
現実の問題では、右辺が線形とは限りません。それでも平衡点のまわりでは、線形の系で近似できます[4]。
捕食者と被食者の数を と とする、次の形を考えます。
右辺が になるのは 、 のとき。ここでヤコビ行列を作ります。
対角成分が なので 。行列式は です。分類表では中心にあたります。
閉じた軌道が予想されます。実際、被食者が増えると捕食者が増え、捕食者が増えると被食者が減る、という循環が起きる。
捕食者の山が、被食者の山より少し遅れて来ます。この遅れが循環を生んでいる。
ただし線形近似で中心が出た場合は、注意が要ります。実際の系が中心のままか、わずかに巻きこむ渦になるかは、近似の外側で決まるためです。
近似で出た結論が、もとの非線形の系でもそのまま通る
近似では判定しきれない。捨てた高次の項が向きを決める
検算のしかた
固有値を求めたら、まずトレースと行列式に足し算と掛け算で戻れるかを見ます。 と が合っていれば、計算違いはほぼありません。
固有ベクトルは を実際に計算し、 になるかを確かめる。成分が 2 つとも合う必要があります。
複素固有値のときは、実部と虚部に分けた 2 本をそれぞれ代入します。片方だけ合うことはないので、どちらかで確かめれば十分です。
、 のとき、原点はどの型になりますか。
- 鞍点
- 安定な結節点
- 安定な渦状点
固有ベクトルの向きを 2 本探し、そこからの外れ方で軌道が決まる。連立の方程式は、線形代数の言葉に置き換えると見通しがよくなります。










detA>0 なので鞍点ではありません。判別式は (−2)2−4⋅5=−16 で負なので、固有値は複素数になります。trA<0 から実部が負で、まわりながら原点へ近づく渦状点です。