x 2 y ′′ + x y ′ + ( x 2 − ν 2 ) y = 0 を y = ∑ a n x n で解こうとすると、a 0 の係数が − ν 2 になって a 0 = 0 が強制される。a 1 も同じで、結局すべてが 0 になる。
先頭に x ν を掛けて y = x ν ∑ a n x n とすれば通る。ν が整数でなくても構わない。
このひと工夫がフロベニウスの方法である。指数 ν をどう決めるかが、方法のすべてを担っている[4 ] 。
特異点の種類
2 階の線形方程式を標準形で書く。
y ′′ + P ( x ) y ′ + Q ( x ) y = 0
P と Q が x = 0 で解析的なら、そこは通常点である。ふつうのべき級数でよい。
P か Q が x = 0 で発散していても、x P ( x ) と x 2 Q ( x ) の両方が解析的なら、x = 0 は確定特異点と呼ばれる[1 ] 。発散の勢いが、x 1 と x 2 1 までに収まっている場合である。
このとき方程式は次の形に書き直せる。
x 2 y ′′ + x p ( x ) y ′ + q ( x ) y = 0
p ( x ) = x P ( x ) 、q ( x ) = x 2 Q ( x ) で、どちらも x = 0 のまわりでテイラー展開できる。
発散の勢いがこれより強い点は不確定特異点 と呼ばれ、フロベニウスの方法が届かない。
e − 1/ x のように、どんな x r を掛けても級数にならない解が現れる。
x r が出てくる理由
p と q を定数 p 0 = p ( 0 ) 、q 0 = q ( 0 ) で置き換えてみる。
x 2 y ′′ + p 0 x y ′ + q 0 y = 0
オイラー型の方程式である。y = x r を入れると x r でくくれて、r の 2 次方程式が残る。
r ( r − 1 ) + p 0 r + q 0 = 0
確定特異点をもつ方程式は、x → 0 でこのオイラー型に近づく。だから解の先頭も x r になる[1 ] 。
級数はその補正である。x r で骨格を決め、∑ a n x n で肉を付ける。
決定方程式の導出
y = n = 0 ∑ ∞ a n x n + r を代入する。a 0 = 0 としておく。
x 2 y ′′ = ∑ ( n + r ) ( n + r − 1 ) a n x n + r , x y ′ = ∑ ( n + r ) a n x n + r
p ( x ) = p 0 + p 1 x + ⋯ 、q ( x ) = q 0 + q 1 x + ⋯ を掛けて足し合わせ、x r の係数だけを見る。n = 0 の項しか寄与しない。
a 0 [ r ( r − 1 ) + p 0 r + q 0 ] = 0
a 0 = 0 なので、括弧の中が 0 。これが決定方程式で、根を r 1 、r 2 とする(Re r 1 ≥ Re r 2 )。
漸化式と、つまずく場所
F ( r ) = r ( r − 1 ) + p 0 r + q 0 と書く。x n + r の係数を並べると、次の形になる[4 ] 。
a n F ( r + n ) + k = 0 ∑ n − 1 a k [ ( k + r ) p n − k + q n − k ] = 0
a n を決めるには F ( r + n ) で割ることになる。割れるかどうかが分かれ目である。
F の根は r 1 と r 2 だけなので、F ( r + n ) = 0 になるのは r + n がもう一方の根に一致するときに限る。
大きいほうの根 r 1 から出発すれば、r 1 + n は n ≥ 1 でどちらの根より大きく、割り算はいつでもできる。r 1 の級数は必ず作れる[1 ] 。
困るのは r 2 のほうで、r 1 − r 2 が正の整数 N のとき、n = N で F ( r 2 + N ) = F ( r 1 ) = 0 になる。
3 つの場合
いま見た割り算がどこで止まるかで、解の形が 3 通りに分かれる。
根の関係 1 つ目 2 つ目 r 1 − r 2 が非整数x r 1 ∑ a n x n x r 2 ∑ b n x n r 1 = r 2 x r 1 ∑ a n x n y 1 ln x + x r 1 + 1 ∑ b n x n r 1 − r 2 が正整数x r 1 ∑ a n x n C y 1 ln x + x r 2 ∑ b n x n
3 行目の C は 0 になることがある[2 ] 。整数差でも対数が出ない例が実際にあり、あとで見る。
例:整数差でない場合
2 x 2 y ′′ + x y ′ + ( x − 1 ) y = 0
2 で割ると p 0 = 2 1 、q 0 = − 2 1 。決定方程式は 2 r 2 − r − 1 = 0 で、r = 1 , − 2 1 である。
差は 2 3 で整数ではない。両方の根から級数が作れる。
代入して x n + r の係数を集めると、次の漸化式が出る。
a n ( 2 ( n + r ) + 1 ) ( ( n + r ) − 1 ) = − a n − 1
r = 1 では a n ⋅ ( 2 n + 3 ) ⋅ n = − a n − 1 となる。
y 1 = x ( 1 − 5 x + 70 x 2 − 1890 x 3 + ⋯ )
r = − 2 1 では a n ⋅ 2 n ⋅ ( n − 2 3 ) = − a n − 1 、つまり a n = n ( 2 n − 3 ) − a n − 1 になる。
y 2 = x − 1/2 ( 1 + x − 2 x 2 + 18 x 3 − ⋯ )
y 2 は原点で発散する。x − 1/2 が付いているためで、級数のほうは行儀がよい。
例:ベッセル方程式
x 2 y ′′ + x y ′ + ( x 2 − ν 2 ) y = 0
p 0 = 1 、q 0 = − ν 2 なので、決定方程式は r 2 − ν 2 = 0 。根は r = ± ν である[3 ] 。
漸化式は x 2 の項から 2 つ飛びになる。
a n [ ( n + r ) 2 − ν 2 ] + a n − 2 = 0
n = 1 を見ると a 1 [( 1 + ν ) 2 − ν 2 ] = 0 で、括弧は 1 + 2 ν = 0 。したがって a 1 = 0 で、奇数番はすべて消える。
r = ν での漸化式は a n ⋅ n ( n + 2 ν ) = − a n − 2 となり、Γ 関数で書きくだせる[3 ] 。
J ν ( x ) = k = 0 ∑ ∞ k ! Γ ( ν + k + 1 ) ( − 1 ) k ( 2 x ) ν + 2 k
例:整数差でも対数が出ない場合
ν = 2 1 をとる。根は 2 1 と − 2 1 で、差はちょうど 1 。整数差である。
規則どおりなら、小さいほうの根で n = 1 の割り算が止まるはずだ。実際に係数を見る。
( 1 − 2 1 ) 2 − 4 1 = 0
確かに 0 になった。ところが漸化式の相方は a − 1 で、これは 0 である。0 ⋅ a 1 = 0 という式になり、a 1 は何でもよい。
割り算が止まっても、矛盾が出ない。a 1 = 0 と選べば、対数なしで級数が完成する。
J 1/2 ( x ) = π x 2 sin x , J − 1/2 ( x ) = π x 2 cos x
x 1 が付いているだけで、中身は三角関数そのものである。
例:重根で対数が出る場合
ν = 0 をとる。決定方程式は r 2 = 0 で、r = 0 の重根である。級数解は 1 本しか作れない。
J 0 ( x ) = 1 − 4 x 2 + 64 x 4 − 2304 x 6 + ⋯
2 つ目の解は対数を含む形になる[3 ] 。
Y 0 ( x ) = π 2 [ ( ln 2 x + γ ) J 0 ( x ) + k = 1 ∑ ∞ ( k ! ) 2 ( − 1 ) k + 1 H k ( 2 x ) 2 k ]
γ はオイラーの定数、H k = 1 + 2 1 + ⋯ + k 1 は調和数である。
x → 0 で Y 0 は ln x の速さで下へ抜ける。円形の膜の振動で中心が有限であるべきときは、この解を捨てる理由になる。
なぜ対数が出るのか
場合分けを覚えるより、なぜそうなるかを 1 度たどるほうが早い。使うのは階数低下法である。
y 1 が 1 つ目の解のとき、2 つ目は次の積分で作れる。
y 2 = y 1 ∫ y 1 2 e − ∫ P d x d x
P ( x ) = x p ( x ) なので ∫ P d x = p 0 ln x + ( 解析的 ) となり、e − ∫ P = x − p 0 ( c 0 + c 1 x + ⋯ ) 。
y 1 2 = x 2 r 1 ( 1 + ⋯ ) だから、被積分関数の先頭の指数は − p 0 − 2 r 1 である。
決定方程式の根と係数の関係から r 1 + r 2 = 1 − p 0 、つまり p 0 = 1 − r 1 − r 2 。代入する。
− p 0 − 2 r 1 = − 1 + r 1 + r 2 − 2 r 1 = − 1 − ( r 1 − r 2 )
N = r 1 − r 2 と書けば、被積分関数は x − 1 − N ( d 0 + d 1 x + d 2 x 2 + ⋯ ) の形になる。
積分したとき ln x が出るのは、x − 1 の項があるときだけ。x − 1 − N ⋅ d N x N がそれにあたる。
N が整数でなければ、x − 1 はどこにも現れない。積分はべきのまま済み、対数は出ない。
N が整数なら d N が存在する。d N = 0 なら対数が出て、d N = 0 なら出ない。重根の N = 0 では d 0 = 0 が保証されるので、対数は必ず出る[2 ] 。
x − 1 の項が作れない。2 本ともきれいな級数になる
x − 1 の項が作れる位置にある。係数が 0 なら対数は出ず、0 でなければ出る
3 つの場合分けは、この 1 本の積分から自動的に出てくる。
収束半径
級数がどこまで使えるかは、複素平面で決まる。原点以外の特異点のうち、いちばん近いものまでの距離が収束半径である[1 ] 。
ベッセル方程式では x = 0 以外に有限の特異点がないので、級数は全平面で収束する。
( 1 − x 2 ) y ′′ − 2 x y ′ + λ y = 0
ルジャンドル方程式なら x = ± 1 が特異点で、原点からの距離は 1 。原点まわりの級数は ∣ x ∣ < 1 でしか使えない。
同じ手順で出る関数
確定特異点をもつ方程式は、名前の付いた関数を次々に生む。
ベッセル方程式は x = 0 に確定特異点をもち、J ν と Y ν を与える。
ルジャンドル方程式は x = ± 1 に確定特異点をもち、多項式解が球面調和関数につながる。
超幾何方程式は 0 、1 、∞ の 3 点だけに確定特異点をもつ。
合流型超幾何方程式は 1 と ∞ を融合させたもので、クンマー関数を与える。
ラゲール方程式やエルミート方程式も、この枠に収まる。
超幾何方程式が特別なのは、確定特異点が 3 点だけの方程式が本質的にこれ 1 つに限られるからである。3 点は座標変換で 0 、1 、∞ に送れる。
検算のしかた
級数を出したら、決定方程式の根と先頭の指数が一致しているかをまず見る。ここがずれていれば、代入のどこかで添字を間違えている。
次に、最初の数項を方程式に入れて x の低いべきから順に消えるかを確かめる。x r 、x r + 1 、x r + 2 の 3 つで足りることが多い。
整数差の場合は、n = N の行を必ず書き出す。F ( r 2 + N ) = 0 の両側に何が残るかを見て、0 = 0 なら対数は要らない。
x 2 y ′′ + x y ′ + ( x 2 − 9 1 ) y = 0 の 2 つの解は、どの形になりますか。
どちらも対数なしの級数
片方に ln x が付く
どちらにも ln x が付く __RESULT__
決定方程式は r 2 = 9 1 で、根は ± 3 1 です。差は 3 2 で整数ではないので、両方の根から対数なしの級数が作れます。対数が出るかどうかは、根の差が整数かどうかだけで決まります。
決定方程式で骨格を決め、根の差が整数かを見る。フロベニウスの方法は、この 2 つの判断でできている。
参考文献
Singular Points and the Method of Frobenius /06%3A_Series_Solutions_of_Linear_Equations/6.03%3A_Singular_Points_and_the_Method_of_Frobenius). Differential Equations, LibreTexts.
*The Method of Frobenius III* . Ximera, The Ohio State University.
Bessel Functions of the First and Second Kinds . NIST Digital Library of Mathematical Functions.
Frobenius Method . Wolfram MathWorld.
$x^2y''+xy'+(x^2-\nu^2)y=0$ を素のべき級数で解こうとすると、係数がすべて $0$ になります。先頭に $x^{\nu}$ を掛ければ通る。指数を決めるのは決定方程式 $r(r-1)+p_0r+q_0=0$ で、$x \to 0$ でこの方程式がオイラー型に近づくからです。漸化式で $a_n$ を出すには $F(r+n)$ で割ることになり、$r_1-r_2$ が整数のときだけ割り算が止まる。階数低下法の積分を書くと被積分関数が $x^{-1-N}$ で始まり、$x^{-1}$ の項が作れるかどうかが対数の有無を決めます。$\nu=1/2$ は整数差でも対数なし、$\nu=0$ は重根で $Y_0$ に $\ln x$ が出る。
決定方程式は r2=91 で、根は ±31 です。差は 32 で整数ではないので、両方の根から対数なしの級数が作れます。対数が出るかどうかは、根の差が整数かどうかだけで決まります。