行列の指数関数と解法

行列の指数関数 は、連立微分方程式の解を美しく表現する道具です。スカラーの指数関数の自然な拡張であり、制御理論や量子力学でも重要な役割を果たします。

行列の指数関数の定義

スカラーの指数関数 を行列に拡張して、

と定義します。この級数は任意の正方行列 に対して収束します。

連立微分方程式の解

の解は、

と書けます。これはスカラーの場合 の解 の自然な一般化です。

の計算方法

を直接計算するにはいくつかの方法があります。

対角化可能な場合

なら は対角成分を指数関数にするだけです。

ケイリー=ハミルトンの定理

の特性多項式が を零化することを利用し、 の低次多項式で表します。

ラプラス変換

の逆ラプラス変換として を求めます。

対角化による計算例

対角行列なので、

です。

対角化できない場合

(ジョルダンブロック)の場合、

となります。 の多項式が現れるのが特徴です。

非同次方程式への応用

の解は、

で与えられます。第1項が同次解、第2項(デュアメルの公式)が非同次の寄与です。

行列指数関数の性質

性質内容
零行列の指数は単位行列
逆行列は符号反転
のときのみ成立
微分は を掛けるだけ

注意すべきは、 のとき であることです。これは行列の非可換性から来る本質的な違いです。

物理への応用

量子力学の時間発展演算子 はまさに行列指数関数です。ハミルトニアン の固有値・固有ベクトルを求めることが、量子系の時間発展を理解する鍵となります。