等高線をたどるだけで解ける完全微分方程式と積分因子の見つけ方
の解は です。
左辺は の全微分そのもの。方程式は「 の高さが変わらない向きへ進め」と言っています。
進んだ跡は等高線になります。解の曲線群は、1 つの関数の等高線をぜんぶ並べたものです[1]。
全微分として読む
2 変数関数 の全微分を書きます。
がこの形に一致するなら、。 が動かないので が解です。
積分の作業はほとんど要りません。 を復元するだけで終わる。

完全であるための条件
、 だとすると、2 階の混合偏微分が両側から作れます。
連続なら順序を入れかえてよいので、2 つは一致します。
これが完全性の判定条件です[1]。必要であることは、いま見たとおり。
十分であることの証明
逆に が成り立てば が作れることを示します。長方形の領域を考え、次の関数を定めます。
で微分すると、第 1 項は を含まないので消え、第 2 項が になります。こちらは自動的に合う。
問題は での微分です。第 2 項の積分の中に が入っているので、積分記号の下で微分します。
ここで条件を使います。 を に置き換えると、積分が計算できる形になる。
が残りました。 かつ なので、 は求めるものです。
小さな長方形で見る
判定条件が何を測っているかは、微小な長方形の周を 1 周してみると分かります。
を周に沿って足すと、 方向の 2 辺からは の 方向の差が、 方向の 2 辺からは の 方向の差が出ます。

1 周の総和が になります。これが なら、どこを通っても値が変わらない。
行き道と帰り道で結果が同じなら、位置だけで決まる量 が定義できます。判定条件はそのための条件でした。
穴があると崩れる
十分性の証明で「長方形の領域」と断りました。この断りは飾りではありません。
判定条件を計算します。どちらも同じ式になる。
条件は満たされています。ところが は原点を中心とする角度 で、1 周まわると 増えてしまう。
同じ点に戻ったのに値が違う。 は 1 価の関数として定義できません。
原点が抜けた平面には穴があり、まわりこむ道があるためです[3]。判定条件は局所の話で、大域では領域の形が効いてきます。
解き方の手順
を復元します。 から で積分する。
を定数とみなした積分なので、積分定数のところに の関数 が入ります。
次に を使って を決める。ここで が残ったら、どこかで計算を間違えています[4]。
例:多項式の場合
、 で完全です。 を で積分します。
を と比べて 。 です。
例:三角関数の場合
、 で完全。 を で積分します。
が に等しいので、、。
積分因子
完全でない方程式に、 でない関数 を掛けます。掛けても解の曲線は変わりません。
これが完全になる条件は 。展開すると についての偏微分方程式になります[2]。
一般にこれを解くのは、もとの方程式より難しい。そこで の形を絞りこみます。
積分因子は存在するけれども見つからない、という種類の道具です。
解 が分かっていれば が積分因子になる。ただし解を知っていることが前提になる。
だけの関数を探す
が だけなら です。式が常微分方程式に落ちます。
右辺が だけの関数になっていれば、積分して が求まります。 が残っていたら、この形はあきらめる。
だけの関数を探す場合は を見ます。
例:1 階線形方程式
と書き直します。、 です。
、 なので完全ではありません。判定式を計算します。
だけの関数になりました。 です。
1 階線形方程式でおなじみの積分因子が、完全性の枠組みから出てきました。特別な技ではなく、この方法の一例だったことになります。
例:積分因子は 1 つに決まらない
、 で完全ではありません。 が だけの関数なので、 がとれます。
| 積分因子 | 完全にした式 | 解 |
|---|---|---|
| の 倍 | ||
3 つとも違う を与えますが、等高線の形は同じ。原点を通る直線の族です。
積分因子は無限にあります[2]。どれを選んでも解は変わらず、式の見た目だけが変わる。
保存力との対応
をベクトル場と見ます。 は、この場が渦を持たないという条件です。
単連結な領域で渦がなければ、ポテンシャル があって 。仕事が経路によりません。
解の曲線 は等ポテンシャル線で、 はそこに直交します。力を出さずに動ける方向が、解の進む向きです。
原点を抜いた平面の例は、渦がないのにポテンシャルが作れない場合にあたります。穴のまわりを回ると、仕事が ずつ溜まっていく。
どの点のまわりでも、小さな円板の中では が作れる
領域に穴があると、1 価の が全体では作れないことがある
検算のしかた
を求めたら、 と の両方で微分し直して と に戻るかを見ます。片方だけでは足りません。
積分因子を使った場合は、掛けたあとの と で判定条件を確かめます。ここを飛ばすと、間違った に気づけない。
答えが を含む陰関数のとき、両辺を で微分してもとの方程式に戻るかを見る方法もあります。 を の関数として扱い、連鎖律を使います。
の解はどれですか。
判定条件を確かめ、 を復元する。完全でなければ を探す。手順はこれだけですが、 を見つける一般の方法はありません。










My=1、Nx=1 で完全です。M を x で積分すると x2+xy+g(y) になり、y で微分した x+g′(y) を N=x+2y と比べて g=y2 が出ます。xy の係数を 2 にすると、y で微分したとき N と合いません。