y′′+y=secx の特殊解は yp=cosxln∣cosx∣+xsinx です。secx からは想像しにくい形。
係数を置いて代入する方法では届きません。secx を何度微分しても、有限個の関数では閉じないからです。
定数変化法なら、右辺が何であっても積分の形まで必ず進みます[3]。積分が計算できるかどうかは別の話ですが、手順は止まりません。
定数を関数に変える
同次方程式 y′′+P(x)y′+Q(x)y=0 の一般解を yh=c1y1+c2y2 とします。
非同次の右辺を R(x) と書き、c1 と c2 を関数に替えて特殊解を探す。
yp=u1(x)y1(x)+u2(x)y2(x)
定数を「変化」させるので定数変化法。ラグランジュがこの形を使ったので、パラメータ変化法とも呼ばれます[3]。
補助条件を置ける理由
未知の関数は u1 と u2 の 2 つですが、課される条件はもとの方程式 1 本だけ。自由度が 1 つ余っています。
余りを使って、計算が楽になる条件を自分で足せる。この見方をすると、次の一手が唐突に見えなくなります。
yp を微分すると 4 項に分かれます。
yp′=u1′y1+u2′y2+u1y1′+u2y2′
前半 2 項を 0 と置くのが補助条件です[1]。
u1′y1+u2′y2=0
置かなければ、もう一度微分したときに u1′′ と u2′′ が現れます。2 階の問題を解くために 2 階の問題を作ることになる。
補助条件は u1 と u2 を一意に決めるために足りない 1 本を、こちらから補ったものです。
別の条件を置いても特殊解は作れる。ただ、これがいちばん式が短くなる。
連立方程式が出る
補助条件のもとで yp′=u1y1′+u2y2′ となり、もう一度微分します。
yp′′=u1′y1′+u2′y2′+u1y1′′+u2y2′′
yp′′+Pyp′+Qyp を組み立てると、u1 が掛かる部分は y1′′+Py1′+Qy1 で 0。u2 の側も同じく 0 です。
残るのは u1′y1′+u2′y2′ だけ。これが R に等しくなります。
{u1′y1+u2′y2=0u1′y1′+u2′y2′=R
u1′ と u2′ についての連立 1 次方程式です。係数行列の行列式がロンスキアンになります。
W=y1y2′−y2y1′
クラメルの公式で解きます[3]。
u1′=−Wy2R,u2′=Wy1R
ロンスキアンで割ってよい理由
W が 0 になる点があれば、この割り算は破綻します。実は破綻しません。W 自身が簡単な微分方程式を満たすためです。
W′=y1′y2′+y1y2′′−y2′y1′−y2y1′′=y1y2′′−y2y1′′ を計算します。
y1′′=−Py1′−Qy1 と y2′′=−Py2′−Qy2 を代入する。
W′=y1(−Py2′−Qy2)−y2(−Py1′−Qy1)=−P(y1y2′−y2y1′)=−PW
Q の項がきれいに打ち消しました。変数分離で解けます[4]。
W(x)=W0exp(−∫P(x)dx)
指数関数は決して 0 になりません。したがって W は、どこでも 0 か、どこでも 0 でないかのどちらか。
y1 と y2 が 1 次独立なら 1 点で W=0 なので、区間全体で 0 になりません。割り算はいつでもできます。
積分の形にまとめる
u1′ と u2′ を積分すれば yp が出ます。定積分に直すと、右辺の効き方が見やすくなる。
yp(x)=∫x0xW(ξ)y1(ξ)y2(x)−y1(x)y2(ξ)R(ξ)dξ
被積分関数の分数は x と ξ の 2 変数の関数で、グリーン関数と呼ばれます[1]。
ξ の場所で受けた力が、x の場所にどれだけ効くかを表す量。それを ξ について足し合わせたものが解です。
例:単位の力を並べる
y′′+y=R(x) の場合、y1=cosx、y2=sinx、W=1 になります。
グリーン関数は cosξsinx−cosxsinξ=sin(x−ξ)。
yp(x)=∫0xsin(x−ξ)R(ξ)dξ
時刻 ξ に受けた衝撃が sin(x−ξ) という振動を残し、それが積み重なる。ばねを叩いたときの応答そのものです。
刻みを細かくすると、下の折れ線が滑らかな曲線に近づきます。積分はその極限です。
例:y′′+y=secx
同次解は y1=cosx、y2=sinx で、W=cos2x+sin2x=1。
u1′=−sinxsecx=−tanx,u2′=cosxsecx=1
積分すると u1=ln∣cosx∣、u2=x になります。
yp=cosxln∣cosx∣+xsinx
xsinx の項に注目します。x が単独で出てきたのは、secx が振動と共鳴する成分を含むためです。
一般解は y=c1cosx+c2sinx+cosxln∣cosx∣+xsinx。
例:y′′+y=tanx
u1′=−sinxtanx を整理します。sin2x=1−cos2x を使う。
u1′=−cosxsin2x=cosxcos2x−1=cosx−secx
積分して u1=sinx−ln∣secx+tanx∣。u2′=cosxtanx=sinx なので u2=−cosx です。
yp=cosx(sinx−ln∣secx+tanx∣)−sinxcosx=−cosxln∣secx+tanx∣
sinxcosx が打ち消して、1 項だけが残りました。
例:右辺に 1/x がある
y′′−2y′+y=xex
特性方程式が重根 1 なので y1=ex、y2=xex。ロンスキアンを計算します。
W=ex(ex+xex)−xex⋅ex=e2x
R=xex を入れます。
u1′=−e2xxex⋅ex/x=−1,u2′=e2xex⋅ex/x=x1
積分すると u1=−x、u2=ln∣x∣。
yp=−xex+xexln∣x∣=xex(ln∣x∣−1)
ln∣x∣ が現れました。係数を置いて代入する方法では、この形を最初から予想できません。
例:係数が定数でない場合
x2y′′−2xy′+2y=x3
同次解は y=xm を入れて m2−3m+2=0 から y1=x、y2=x2 です。
ここで注意が要ります。R は標準形にしてから読むこと。両辺を x2 で割ります。
y′′−x2y′+x22y=x⟹R=x
x3 をそのまま R にすると答えが合いません。W=x⋅2x−x2⋅1=x2 を使って計算します。
u1′=−x2x2⋅x=−x,u2′=x2x⋅x=1
u1=−2x2、u2=x から yp=−2x3+x3=2x3。
検算します。y′′=3x、y′=23x2 を入れると 3x3−3x3+x3=x3 で、右辺に戻りました。
高階への拡張
n 階でも同じです。未知関数が n 個、余る自由度が n−1 個なので、補助条件を n−1 本置きます[2]。
u1′y1+⋯+un′ynu1′y1′+⋯+un′yn′=0=0
(n−2) 階微分までを 0 にそろえ、(n−1) 階微分の行だけが R に等しくなります。
係数行列は n 次のロンスキアン行列。クラメルの公式で uk′ が出ます[2]。
uk′=WWkR
Wk は k 列目を右辺で置き換えた行列式です。
例:3 階の方程式
y′′′+y′=tanx
特性方程式 λ3+λ=0 の根は 0 と ±i なので、y1=1、y2=cosx、y3=sinx。
ロンスキアンを計算すると W=1 になります。クラメルの公式から次が出ます。
u1′=tanx,u2′=−sinx,u3′=cosx−secx
積分すると u1=−ln∣cosx∣、u2=cosx、u3=sinx−ln∣secx+tanx∣。
yp=−ln∣cosx∣+cos2x+sin2x−sinxln∣secx+tanx∣
cos2x+sin2x=1 は定数なので、同次解に吸収できます。
yp=−ln∣cosx∣−sinxln∣secx+tanx∣
検算のしかた
微分して代入するのがいちばん確実です。3 階の例なら yp′=−cosxln∣secx+tanx∣ になり、tanx の項が消えます。
もう 1 回微分して yp′′=sinxln∣secx+tanx∣−1、さらに yp′′′=cosxln∣secx+tanx∣+tanx。
yp′′′+yp′ を作ると対数の項が打ち消し、tanx だけが残る。右辺と一致しました。
係数を置いて代入する方法
右辺が多項式・指数・三角関数のときだけ。予想の形が当たれば計算は速い
定数変化法
右辺を選ばない。ロンスキアンと積分が要るぶん、手間はかかる
まず前者が使えるかを見て、使えなければ後者に移る。この順で考えると無駄がありません。
y′′+4y=R(x) の特殊解を定数変化法で書くとき、グリーン関数はどれになりますか。
- sin(x−ξ)
- 21sin(2(x−ξ))
- 21cos(2(x−ξ))
__RESULT__
同次解は cos2x と sin2x で、ロンスキアンは W=2 です。Wy1(ξ)y2(x)−y1(x)y2(ξ) を計算すると 2sin2xcos2ξ−cos2xsin2ξ となり、加法定理でまとまります。W が 1 でないぶん、係数 21 が付きます。
同次解を 2 本そろえ、ロンスキアンを作り、割って積分する。右辺の形を心配しなくてよいのが、この方法のいちばんの強みです。
参考
Russell Herman. *The Method of Variation of Parameters*/08%3A_Green's_Functions/8.01%3A_The_Method_of_Variation_of_Parameters). A Second Course in Ordinary Differential Equations.
$y'' + y = \sec x$ の特殊解は $\cos x\ln|\cos x| + x\sin x$ です。係数を置いて代入する方法では届きません。$y_p = u_1y_1 + u_2y_2$ と置くと未知関数が 2 つで条件が 1 本なので、自由度が 1 つ余る。そこへ $u_1'y_1 + u_2'y_2 = 0$ を当てると連立 1 次方程式になり、クラメルの公式から $u_1' = -y_2R/W$ が出ます。$W' = -PW$ より $W = W_0e^{-\int P}$ なので、ロンスキアンは決して $0$ を通らず、割り算はいつでもできる。定積分に直すとグリーン関数が現れ、$y''+y$ なら $\sin(x-\xi)$。$\tan x$ や $e^x/x$ のように予想の形が立たない右辺でも、手順は途中で止まりません。
同次解は cos2x と sin2x で、ロンスキアンは W=2 です。Wy1(ξ)y2(x)−y1(x)y2(ξ) を計算すると 2sin2xcos2ξ−cos2xsin2ξ となり、加法定理でまとまります。W が 1 でないぶん、係数 21 が付きます。