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x を何回掛けるかは根の重なりが決める|微分方程式の未定係数法

を入れると、左辺が になって が決まりません。

でも同じことが起きます。 にして、ようやく が出る。

を何回掛けるかは、あてずっぽうで決めるものではありません。特性方程式の根の重なり方が、その回数をきっちり決めています[1]

予想が当たる関数の共通点

多項式、指数関数、正弦と余弦。この 3 つは、何度微分しても同じ仲間の中に留まります。

を微分すると 、さらに 、そして 。有限回で消えます。

と巡回して、もとの 2 つの関数の組み合わせから出ません。

対して を微分すると 、次に 。項の種類が増え続けて閉じない。

閉じている側なら、答えも同じ仲間の中にあると期待できます。未定係数法が効くのは、この性質を持つ右辺だけです。

消滅演算子

と書きます。ある関数 に対して となる演算子を、 の消滅演算子と呼びます[2]

関数消滅演算子

回微分すれば になるので で消えます。

で消える。2 回微分して 倍を足すと、確かに打ち消し合います。

予想の形が出てくる仕組み

方程式を と書きます。 の消滅演算子 を両辺に掛ける。

右辺が消えて、同次方程式になりました。次数は上がりましたが、定数係数の同次方程式なら解の形が分かります[2]

の特性根から作られる関数の組み合わせです。そのうち 側の根から来る部分は同次解なので、残りが特殊解の候補になる。

つまり予想の形は、 の根が持ちこむ部分です。当てずっぽうではなく、演算子の掛け算から出てきます。

同じ答えを、下三角の連立 1 次方程式を解く形にまとめる書き方も提案されています[4]。予想を立てる段階を式に押しこめてしまう方向です。

根が重なると が生える

の根が の根とぶつかると、積 の側では重根になります。

定数係数の方程式で重根が出ると、 が並ぶ。この が、予想に掛ける の正体です[2]

側で重複度 の根とぶつかれば、 を掛けることになります。

予想の一覧

右辺 ぶつからない場合の予想
定数
または

ぶつかる場合は を掛けます。 の予想に も入れておく点に注意したい。片方だけでは足りません。

例:右辺が多項式

と置きます。 を代入する。

係数を比べて

右辺が だけでも、予想には と定数を入れておく必要があります。微分で下の次数が生まれるためです。

例:定数の右辺がぶつかる

特性方程式は で、根は 。右辺の定数を消すのは で、その根も です。

が重なるので、 ではなく とします。

を入れて になります。

定数の右辺なのに答えが の 1 次式になる。この形は、ぶつかりを見落とすと絶対に出てきません。

例:重根とぶつかる

特性方程式は で、 が重複度 の根。 の消滅演算子 の根も です。

重複度が なので を掛けて 。代入すると次のようになります。

です。

複素指数を使う近道

三角関数の右辺は、指数関数として扱うと計算が短くなります。鍵になるのは次の等式です。

に置き換えるだけ。 なら、特殊解がすぐ書けます。

なら です。

の虚部をとって になります。係数を 2 つ置いて連立させる手間が要りません。

共鳴の公式

のときは、さきほどの式が使えません。 が単根なら、次の形になります。

導出は 1 行です。 の両辺を で微分する。

なので第 2 項が消え、 が残ります。

例:共鳴する強制振動

。共鳴しています。 なので

虚部をとって です。

振幅が で伸びていきます。押す周期が固有の周期にそろうと、揺れが際限なく育つ[3]

近い振動数ではうなりが出て、振幅が大きくなっては戻ります。一致した瞬間だけ、戻る動きが消える。

減衰があるとき

現実の系には摩擦があります。減衰項を入れると、振幅は有限で止まります[3]

が減衰の強さ。 なら で分母が になり、無限大に発散します。

なら分母が にならず、最大値は で達する。固有振動数よりわずかに低い場所です。

右辺が足し算のとき

なら、それぞれについて特殊解を求めて足せば済みます。方程式が線形だからです。

なら、 を別々に出して足す。

ぶつかりの判定も別々に行います。片方だけ共鳴していることがよくあります。

使えない右辺

。これらには消滅演算子がありません[2]

微分しても有限個の関数で閉じないので、予想の形が立たない。こういう右辺では別の方法に移ることになります。

予想が立つ右辺

多項式、指数、正弦と余弦、およびその積と和。代入と係数比較だけで終わる

予想が立たない右辺

微分で閉じない関数。形を予想する土台がなく、この方法では手が出ない

検算のしかた

まず特性方程式の根を書き出し、右辺の指数(定数なら なら なら )と見比べます。

ぶつかっていれば を掛ける。この確認を代入の前に済ませておくと、係数が決まらない事態を避けられます。

答えが出たら微分して代入し、右辺に戻るかを見る。 の両方の係数が合っているかを、別々に確かめます。

の特殊解はどの形になりますか。

__RESULT__

特性方程式は で、 が重複度 の根です。右辺の の指数も なので、重複度のぶんだけ を掛けて になります。代入すると から が出ます。

微分で閉じる右辺だけを相手にし、根がぶつかるかを先に見る。未定係数法の手順は、この 2 つの判断でできています。

参考文献

Vladimir Dobrushkin. *Method of Undetermined Coefficients*. Applied Mathematics 33, Brown University.
Undetermined Coefficients: Annihilator Approach/04%3A__Higher_Order_Linear_ODEs/4.06%3A_Undetermined_Coefficients_-_Annihilator_Approach). Differential Equations, LibreTexts.
Jiří Lebl. *Forced Oscillations and Resonance*/2%3A_Higher_order_linear_ODEs/2.6%3A_Forced_Oscillations_and_Resonance). Differential Equations for Engineers.
*An Alternative Method for the Undetermined Coefficients and the Annihilator Methods*. arXiv:1110.4425.
$y'' - 2y' + y = e^x$ に $Ae^x$ を入れると左辺が $0$ になり、$Axe^x$ でも係数が決まりません。$Ax^2e^x$ で初めて $A = 1/2$ が出ます。掛ける回数を決めているのは特性方程式の根の重複度で、$D$ 演算子で書くと理由がはっきりする。右辺を消す演算子 $A(D)$ を両辺に掛けると同次方程式になり、予想の形は $A(D)$ の根が持ちこむ部分そのものです。根がぶつかれば重根になり、そこから $x$ が生える。$L(D)e^{sx} = L(s)e^{sx}$ を使えば $y_p = e^{sx}/L(s)$ と一気に書け、共鳴のときは両辺を $s$ で微分して $y_p = xe^{sx}/L'(s)$ になります。