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ラプラス変換が微分を「掛け算」に変える仕組みと初期値問題

微分方程式を代数方程式に変えてしまう道具がラプラス変換です。時刻 の関数を、複素数 の関数へ移します[1]

この対応のもとで、微分は を掛ける操作に化ける。 の世界では手間のかかる式が、 の世界では分数式の計算になる。

どんな関数に使えるか

積分が無限まで走るので、 の育ち方に条件が要ります。ある定数 について で成り立つとき、 は指数位数であるといいます[5]

区分的に連続で指数位数なら、 でラプラス変換が収束します[2]。この境目 を収束軸と呼ぶ。

は、どれも指数位数。いっぽう は、どんな指数関数よりも速く育つので当てはまらない[5]

例:基本の 3 つを定義から計算する

では、指数関数の積分がそのまま出ます。

で上端が に落ちます。 では指数どうしがまとまる。

こちらは で収束します。 は部分積分を 1 回して 、一般に になる[5]

微分が 倍に化ける

この変換が微分方程式に効く理由は、次の 1 本に尽きます[2]

導き方は部分積分だけ。 を微分側へ渡す。

上端が に落ちるのは、 が指数位数で が十分大きいときです。微分という操作が、 倍から初期値を引くという算術に置き換わる。

2 階でも同じことを 2 回

の公式を 自身に当てれば、2 階の公式が出ます。

一般には 階で次の形になる[3,5]

階数のぶんだけ初期値が並ぶ。 階の初期値問題に必要な条件の個数と、ぴったり一致している。

初期条件が式の中へ入る

ふつうの解き方では、一般解を書いてから初期条件を当てて定数を決めました。ラプラス変換では順序が逆になる。

変換した時点で が式に現れるので、任意定数がそもそも出てこない[4]

そのぶん、初期条件が で与えられていないと使いにくい。境界値問題や、初期時刻がずれている問題では手が回りにくくなる。

解く手順は 3 段

やることは変換、代数、逆変換の 3 つ[3]

方程式の両辺を変換する。微分は 倍と初期値に置き換わる。
について解く。1 次方程式なので割り算で済む。
を部分分数に分け、表を見て逆変換する。

3 段目がいちばん手数のかかるところ。分母を因数分解して、表に載っている形へ崩していきます[4]

例:1 階の初期値問題

を解きます。両辺を変換する。

について解くと です。表を逆に読みます。

一般解を書いてから定数を決める手間がない。初期値の が、最初の式にすでに入っている。

例:2 階の初期値問題

を解きます。

の変換なので、答えは です。

初期値が の多項式の側に入るので、 を別々に扱う場面がありません。

逆変換は部分分数で

は分数式になります。分母を因数分解して部分分数に分けると、表に載っている形が並ぶ[4]

同じ変換を持つ関数は本質的に 1 つしかありません。ルベーグ測度 の集合の上での違いを除いて一致する、というレルヒの定理があります[1,2]

だから表を逆に読む操作に、あいまいさが残らない。複素積分による反転公式もありますが、実務では表と部分分数で済みます[3]

変換表

よく使う対応を並べます。

の行が移動則[5] をずらすだけなので、減衰する振動もこの 1 行で書けます。

極の位置が振る舞いを決める

の分母が になる点を極といいます。極の位置と、 の世界での振る舞いが対応する。

実軸上の負の極は減衰する指数関数、虚軸上の極は振動、正の極は発散。部分分数に分けるとは、この対応を項ごとに読む作業でもある。

たたみ込みは積に化ける

積の逆変換は、積にはならない。かわりにたたみ込みという演算になります[1,3]

部分分数に分けにくい形でも、2 つの積と見れば逆変換できる。 なら のたたみ込み。

部分分数で分けた場合と同じ答え。どちらの道を選んでもよい。

問題 1:定義と表から変換する

のラプラス変換を求めよ。

解答 1

線形性が使えるので、項ごとに変換して足します[5]

収束するのは 3 つの条件のうちいちばん厳しいところ、つまり です。

問題 2:1 階の斉次

を解け。

解答 2

変換すると になる。

極が にあり、正の実数なので解は発散する。極の位置と振る舞いが対応している。

問題 3:1 階の非斉次

を解け。

解答 3

右辺の に変わります。

部分分数に分ける。 です。

を大きくすると へ近づきます。極が にあり、前者が定常値、後者が減衰を担っている。

問題 4:2 階の斉次

を解け。

解答 4

変換すると次のようになる。

表の の行で とすれば一致します。

極は で虚軸の上。減衰しない振動になる。

問題 5:部分分数が要る 2 階

を解け。

解答 5

を整理します。

部分分数に分けると になる。

で、初期条件が復元されました。答えの検算はここでできる。

問題 6:右辺に指数関数がある

を解け。

解答 6

右辺は です。左辺は初期値が両方 なので、 だけが残る。

3 つの 1 次因子に分けます。係数は、それぞれの極を代入した残りの積の逆数。

が斉次解の側、 が右辺から来た側。1 つの分数式に両方が入っている。

問題 7:たたみ込みで逆変換する

を逆変換せよ。

解答 7

の変換です。たたみ込みを計算します。

部分積分すると になる。

部分分数でも同じ答えが出ます。 と分けるだけ。

を変換した式として正しいものはどれか。

__RESULT__

2 階の公式は です。 を入れると になります。 が掛かる点を落とすと、3 番目を選んでしまいます。

よくある誤り

が掛かるのを落とすと、答えが変わります。
初期値の符号を間違えやすい場所です。引き算であって足し算ではありません。
積の変換は変換の積になりません。 は別物で、後者はたたみ込みに対応します。
どんな関数にも変換があるわけではありません。指数位数でないと収束しません。
収束する範囲を書かずに済ませると、 の条件が抜けます。
初期条件が 以外で与えられていると、そのままでは使えません。時刻をずらしてから変換します。
部分分数に分けるとき、分母の重根を 1 次の項だけで書こうとすると足りません。 の項も要ります。

参考文献

Laplace transform - Wikipedia(英語)
Laplace-Transformation - Wikipedia(ドイツ語)
Transformation de Laplace - Wikipédia(フランス語)
Paul's Online Notes, IVPs with Laplace Transforms(英語)
Transformada de Laplace - Wikipedia(スペイン語)
ラプラス変換は $t$ の関数を $s$ の関数へ移し、そこで微分を $s$ 倍と初期値の引き算に置き換えます。だから微分方程式が代数方程式に化ける。変換して、$Y(s)$ について解いて、部分分数から表を逆に読む。この 3 段が手順のすべてです。指数位数でないと収束しないこと、初期条件が変換の時点で式に入ること、極の位置が減衰と振動と発散を決めること、たたみ込みが積に対応することまで、変換表と計算問題つき。