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初等関数で書けない解はどう書くか?微分方程式のべき級数解法

の解は、初等関数の組み合わせでは書けない。指数関数でも三角関数でも、多項式との積でもない。

それでも級数なら書ける。係数を 1 つずつ求める規則が、方程式そのものから出てくるからである。

3 つ飛びに並ぶ。この飛び方も、係数の規則が決めている[3]

通常点なら必ず書ける

標準形で考える。

で解析的、つまりテイラー展開できるなら、 は通常点である。

このとき級数解が必ず存在する。しかも収束半径は、 の展開の収束半径以上になる[2]

言い換えると、複素平面で からいちばん近い特異点までの距離が、そのまま級数の届く範囲になる。虚軸上の特異点も距離に数える。

「必ず存在する」という部分が効いている。解けるかどうかを試す前に、答えの形が保証されている

確定特異点のように、先頭の指数を探す手間がない。素直に と置いてよい。

添字をそろえる

代入の前に、微分した級数の添字を の形にそろえておく。ここが計算の要である。

が掛かる項も同じように直す。

始まりの番号がずれる点に注意したい。 の項だけ別に書き出す必要が出てくる。

例:指数関数を作り直す

添字をそろえてから代入する。

の係数を比べて から順に が出る。

知っている答えが出た。 も定数なので、収束半径は無限大である。

例:エアリー方程式

代入して の係数を集める。

から始まって、 もすべて になる。残りは 3 つ飛びの 2 系列である。

からは が決まり、 からは が決まる。

2 つの自由な定数 が、2 本の独立な解に対応している。2 階の方程式として辻褄が合う。

エアリー関数

から出るのが から出るのが である。

この 2 本を組み合わせて作る標準解がエアリー関数である[3]

で、どちらもガンマ関数の値で書ける[3]

では単調に減衰し、 では振動する。境目の を転回点と呼ぶ。方程式の の符号が変わる場所である。

右側は数項で形が決まるのに、左の振動を再現するには多くの項が要る。級数はどこでも収束するが、収束の速さは場所で違う。

例:収束半径が有限になる

標準形に直すと である。実軸の上では何事も起きないが、 で分母が消える[2]

原点からの距離は 。したがって原点まわりの級数の収束半径は で、 では使えない。

実数の世界だけを見ていると、なぜ で級数が壊れるのか分からない。複素平面に出て初めて理由が見える。

例:ルジャンドル方程式

代入して の係数を集めると、2 つ飛びの漸化式が出る[4]

分子に注目したい。 が整数なら、 のところで分子が になる。

そこから先の係数がすべて になり、級数が多項式で止まる。これがルジャンドル多項式である[1]

となるように定数倍を決める約束になっている。

打ち切らないとどうなるか

の形でなければ、級数は止まらない。このとき で解が発散する[1]

球面上の物理では、極()で解が有限でなければならない。そこで に限られる。

方程式を解いた結果として、パラメータの値が飛び飛びに決まった。この構造が次の例でもっとはっきりする。

例:エルミート方程式と量子化

漸化式はやはり 2 つ飛びである。

以上の整数なら で分子が消え、多項式で止まる。エルミート多項式である。

止まらない場合を見る。 が大きいところで比を見積もる。

の係数比も である。 と同じ勢いで増える。

量子力学ではこの が掛かる形で波動関数が作られる[1]。積は となって発散し、規格化できない。

規格化できる解が残るのは、 が整数のときだけ。調和振動子のエネルギーが と飛び飛びになる理由が、この打ち切り条件である。

級数が止まるとき

多項式になり、遠方でも行儀がよい。パラメータが特定の値のときだけ起きる

級数が止まらないとき

指数関数の勢いで増える。物理の要求を満たさず、捨てられる

パラメータの離散化は、方程式を解いた結果として自動的に現れた。仮定として置いたものではない。

検算のしかた

漸化式を得たら、まず に小さい値を入れて手で係数を並べる。 の 3 つで足りることが多い。

次に、その係数でできた多項式をもとの方程式に代入する。低い次数の項から順に消えるかを見る。

多項式解が出た場合は、 を入れて既知の値と比べるのが早い。ルジャンドルなら である。

収束半径は、標準形にしてから分母の零点を探す。 で割るなら で割るなら である。

の解に多項式が含まれるのは、なぜですか。

  • なので漸化式の分子が で消えるから
  • 収束半径が だから
  • が特異点だから
__RESULT__

の形になる があるかを見ます。 なので で、 以降が全部消えます。残るのは の定数倍です。収束半径が であることは別の話で、多項式解の有無とは関係しません。

添字をそろえ、漸化式を作り、分子が消える条件を探す。べき級数解法でやることは、この 3 つだけである。

出典

*Series Solutions and Orthogonal Polynomials*. Advanced Mathematics, University of Manchester.
Series Solutions and Convergence/Ordinary_Differential_Equations/6%3A_Power_Series_and_Laplace_Transforms/6.3%3A_Series_Solutions_and_Convergence). Ordinary Differential Equations, LibreTexts.
Airy Functions: Differential Equation. NIST Digital Library of Mathematical Functions.
Legendre Differential Equation. Wolfram MathWorld.
$y'' = xy$ の解は指数関数でも三角関数でも書けませんが、級数なら $1 + x^3/6 + x^6/180 + \cdots$ と並びます。通常点では級数解の存在が先に保証され、収束半径は複素平面でいちばん近い特異点までの距離になる。代入の前に添字を $x^n$ にそろえるのが要点で、あとは係数を比べるだけです。エアリー方程式では係数の鎖が 3 つ飛びに 2 本でき、$a_2$ の鎖は最初から消える。ルジャンドル方程式は $\lambda = l(l+1)$ で漸化式の分子が $0$ になり、多項式で止まります。エルミート方程式で止まらない解は $e^{x^2}$ の勢いで増えるため、調和振動子のエネルギーが飛び飛びになる。