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微分を掛け算に読み替える〜特性方程式と高階線形微分方程式の一般解

の解は 3 本ある。 と、 と、 である。

もとは の 3 つの根。 と が、そのまま 3 本の解に化けている。

微分方程式を解く作業が、代数方程式を解く作業に置き換わった。この置き換えがどこまで通用するかを見ていく。

微分を掛け算に変える

と書く。 に を当てると が前に出る。

微分が掛け算になった。 を何度当てても同じことなので、多項式にしても成り立つ[1]。

となる を探せばよい。これが特性方程式である。

を に置き換えられるのは、 が微分演算子の固有関数だからである。

行列で固有ベクトルを当てると、行列が固有値という数に化けるのと同じ仕組み。

演算子を因数分解する

を因数分解すると、 も同じ形に分かれる。

定数係数なら、この因子は順序を入れかえてよい。 が成り立つ。

展開して確かめられる。 となり、 と の役割が対称である。

変数係数ではこうはいかない。 と は違う演算子になる。定数係数だけの特権である。

1 つの因子が消せばよい

因子が可換なので、どの因子でも先頭に持ってこられる。 を満たす は、全体を にする。

は なので、解は 。根 1 つにつき解 1 本が対応する。

canvas: 式は呼び出しにそのまま書いてください。この引数は焼けません -> drawMath(… factorCell[index][0] …)

因子が重なったとき

を解く。ここで役に立つのが、次の書き換えである。

を外に出すと、 がただの に変わった。 が 1 回微分されるだけである。

同じ操作を 回くり返す。

左辺が になるのは のとき。つまり が 次以下の多項式であればよい[2]。

重複度 の根から、ちょうど 本の解が出た。場合分けを覚えなくても、この 1 行で全部の重複度に答えられる。

canvas: 式は呼び出しにそのまま書いてください。この引数は焼けません -> drawMath(… order === 0 ? 'e^{-x}' : (order === 1 ? 'xe^{-x}' : 'x^{' + order + '}e^{-x}') …)

本数がちょうど足りる理由

階の方程式には 本の独立な解が要る。特性方程式は 次なので、代数学の基本定理から、複素数の範囲で重複を込めて根が 個ある。

重複度 の根が 本を出すので、合計はちょうど 本。過不足がない。

独立性はロンスキアンで確かめられる。根が全部違う場合、 での値がヴァンデルモンド行列式になる。

根が相異なれば にならない。重根が混じる場合も、多項式の係数の一意性から独立が言える[2]。

実数に直す

係数が実数なら、複素根は共役の対で現れる。 の 2 本から、実数の解を 2 本作る。

重複度 の共役対なら、 を掛けたものが から まで並び、合計 本になる[2]。

例:1 の 3 乗根

である。根は と 。

3 つの根は複素平面の単位円上に 度おきに並ぶ。実軸から離れた 2 つが、振動しながら減る解を出している。

例:4 階の方程式

を解く。絶対値は 、偏角は から おきである。

根は 、、、 の 4 つ。共役の対が 2 組できる。

弾性の土台に載せた梁のたわみが、この形になる。片側は遠ざかるほど増え、もう片側は減る。実際の梁では、減るほうだけを残して係数を決める。

例:重根が混じる

特性方程式を因数分解する。

が重複度 、 が重複度 である。合わせて で、階数と一致する。

からは と が出る。 からは 、、。

の根が多項式を出すところが見落とされやすい。 が になるだけの話である。

連立 1 階に直すと

、、、 と置くと、 元の連立 1 階方程式になる。

この形をコンパニオン行列と呼ぶ。 を計算すると、もとの特性多項式にそのまま一致する[3]。

コンパニオン行列には特徴がある。どの固有値についても固有ベクトルが 1 本しかない。ジョルダン標準形では、1 つの固有値につき細胞が 1 個だけになる。

だから重複度 の固有値は、大きさ の細胞 1 つを作る。 から までが並ぶ理由が、行列の側からも説明される。

5 次以上では根が書けない

理論の上では、 階の方程式の解は 本そろう。ところが、その 本を具体的に書けるかは別の話である。

特性方程式が 5 次以上になると、一般には四則と根号だけでは根を表せない[4]。ルフィニが 1813 年に、アーベルが 1826 年に示した。

特性方程式がうまく因数分解できる形なら手で解ける。ところが係数を少し動かすと、その手がかりが消える。

解の存在は保証されているのに、書き下す手段がない。ここから先は数値計算に頼ることになる。

おもしろいのは、その数値計算のやり方である。多項式の根を求めるとき、コンパニオン行列を作って固有値を計算する方法が広く使われている[3]。

微分方程式を代数方程式に直し、その代数方程式を行列に直して解く。ひとまわりして戻ってきた形になる。

理論が言えること

次方程式には 個の根があり、解も 本そろう

実際にできること

4 次までは根号で書ける。5 次以上は数値で求めるしかない

検算のしかた

まず根の個数を数える。重複を込めて階数と一致していなければ、因数分解のどこかで落としている。

が根かどうかを確かめる。定数項が なら でくくれる。ここを見落とすと、多項式の解が抜ける。

複素根では共役の相手も根になっているかを見る。係数が実数なのに片方だけ出てきたら、計算違いである。

最後に、解を 1 本選んで代入する。 のような形は、積の微分を 2 回くり返すので、符号を間違えやすい。

の一般解はどれですか。

__RESULT__

特性方程式は です。 と がそれぞれ重複度 なので、どちらにも を掛けた解が付きます。重複を見落とすと 1 番目の誤答になります。

微分を掛け算に読み替え、演算子を因数分解し、因子ごとに解を数える。特性方程式の役割は、この 3 段をつなぐことにある。

参考文献

*The D Operator: Solving Linear Differential Equations with Constant Coefficients*. Applying Maths in the Chemical and Biomolecular Sciences.
Jiří Lebl. *Higher Order Linear ODEs*/2%3A_Higher_order_linear_ODEs/2.3%3A_Higher_order_linear_ODEs). Differential Equations for Engineers.
Companion matrix. Encyclopedia of Mathematics.
Abel's Impossibility Theorem. Wolfram MathWorld.
$y''' - y = 0$ の解 3 本は、$\lambda^3 = 1$ の根がそのまま化けたものです。$De^{\lambda x} = \lambda e^{\lambda x}$ なので $L(D)e^{\lambda x} = L(\lambda)e^{\lambda x}$ になる。定数係数なら演算子を $(D-\lambda_1)\cdots(D-\lambda_n)$ と因数分解でき、因子の順序も入れかえられます。重根の扱いは $(D-\lambda)(e^{\lambda x}u) = e^{\lambda x}u'$ の 1 行で片づく。$k$ 回くり返せば $u^{(k)} = 0$ となり、$k-1$ 次以下の多項式が掛かります。連立 1 階に直せばコンパニオン行列が現れ、行列の側からも同じ結論が出る。5 次以上は根号で書けないという壁まで。