楕円型・放物型・双曲型はどこで分かれるか|偏微分方程式の分類
偏微分方程式には、常微分方程式のような統一的な解法がありません。かわりに方程式を型に分け、型ごとに理論を組み立てる[1]。
分け方の軸は 2 つ。階数と線形性でまず分け、2 階線形についてはさらに楕円型・放物型・双曲型に分ける[2]。
後者は係数から計算できる 1 つの数で決まります。その数が判別式です。
最高階の導関数がどう現れるか
線形性の分け方は、最高階の導関数の現れ方で 4 段階になる[2]。
境目はいつも最高階のところにある。低い階が汚れていても、最高階が 1 次なら扱いは大きく変わらない。
例:4 段階を見分ける
代表的な方程式を並べます。 が未知関数です。
| 方程式 | 分類 |
|---|---|
| 線形 | |
| 半線形 | |
| 準線形 | |
| 完全非線形 |
3 番目のバーガース方程式は、 の係数が そのもの。最高階は 1 次でも、係数に未知関数が入るので準線形です。
4 番目のモンジュ・アンペール方程式では、2 階の導関数どうしが掛かっている[2]。ここまで来ると線形の理論は届かない。
判別式で 3 つに分かれる
2 階の線形偏微分方程式を、2 変数で次の形に書きます[4]。
型を決めるのは最高階の 3 項だけです。判別式を次で定めます。
なら楕円型、 なら放物型、 なら双曲型[1,4]。 以降の項は型に関わらない。
混合項の係数を と書いている点が落とし穴です。 ではなく と置く流儀なので、 の係数をそのまま に入れると符号や大きさがずれる。

名前は円錐曲線から借りている
楕円・放物・双曲という名前は、方程式の振る舞いを表したものではありません。同じ係数を持つ二次曲線の分類から借りた呼び名です。
が描く曲線は、 の符号で楕円・放物線・双曲線に分かれる。導関数を変数に置き換えると、そのまま対応が付く。
名前から解の性質を読もうとしても手がかりにならない。性質のほうは、型ごとに別に覚えることになる。
例:3 つの代表方程式を判定する
ラプラス方程式 では 、、 です。
楕円型と分かります。熱方程式 は、変数を と にとって と書く。
の項がないので で、、 です。
放物型になる。波動方程式 では 、、 です。
双曲型と決まります。3 つの代表例が 3 つの型にきれいに 1 つずつ対応している[4]。
係数行列の固有値で見る
判別式の言いかえとして、係数を対称行列に並べる見方がある[2]。 に対して次を作る。
なので、判別式のちょうど符号違いです。行列が正定値か負定値なら楕円型、特異なら放物型、不定符号なら双曲型になる。
固有値で言えば、すべて同符号なら楕円型、 つが で残りが同符号なら放物型、 つだけ符号が違うなら双曲型。この形なら 3 変数以上へそのまま伸びる。
例:3 変数の方程式を判定する
を考えます。係数行列は対角行列で、成分は 、、。
固有値のうち つだけ符号が違うので双曲型です。 を時刻と読めば、これは 2 次元の波動方程式そのもの。
なら固有値がすべて で楕円型。3 次元のラプラス方程式にあたる。
型は場所によって変わる
係数が定数とは限らない。、、 が場所の関数なら、判別式も場所の関数になる[2]。
トリコミ方程式 がその例です。、、 なので 。
上半平面では楕円型、下半平面では双曲型、 の直線上だけ放物型になる。1 つの方程式が場所によって顔を変える。
特性曲線の本数で言いかえる
同じ 3 分類を、特性曲線の本数で述べることもできる。特性曲線とは、その上で偏微分方程式が常微分方程式に化ける曲線のこと[5]。
2 階の場合、特性曲線の傾き は次の 2 次方程式で決まる。
解の公式から です。根号の中身が、そのまま判別式になっている。
だから実数の特性曲線は、双曲型で 2 系統、放物型で 1 系統、楕円型では存在しない。判別式の 3 つの場合が、根の個数の 3 つの場合に対応する。
型ごとに解の性格が違う
双曲型では、初期条件の飛びが特性曲線に沿って先まで運ばれる[1]。角のある波はいつまでも角を保つ。
放物型と楕円型では逆に、解がなめらかになる。熱方程式に角のある初期温度を与えても、次の瞬間には丸まっている[3]。
不連続が消えずに伝わる。情報が有限の速さで進み、影響が届く範囲が特性曲線で区切られる。
解がただちになめらかになる。熱方程式では影響が形のうえでは瞬時に全体へ広がる。
この違いは数値計算の作り方にも響く。双曲型では流れの向きに合わせた差分をとり、楕円型では領域全体を一度に解く。
型に合う条件を選ぶ
条件の与え方も型で決まります。楕円型は時間を含まない定常問題なので、境界の全周で値を指定する境界値問題になる[3]。
放物型と双曲型には時間方向があるため、初期条件と境界条件を組み合わせる。熱方程式なら初期温度と両端の温度、波動方程式なら初期の形と初速。
組み合わせを誤ると、解が存在しなかったり、条件の小さな誤差が解を大きく揺らしたりする。適切に立っている問題という言い方は、この不都合を除くための条件です[1]。
問題 1:判別式で型を答える
次の 4 つの型を判定せよ。
解答 1
1 番目は なので 、、 です。 で放物型。
2 番目は 、、 となり 。双曲型です。
3 番目は から で、。楕円型になる。
4 番目は 、 です。 で双曲型。 の一般解が と 2 本の任意関数で書ける形も、双曲型らしい振る舞いです。
問題 2:混合項の係数に気をつける
の型を判定せよ。
解答 2
なので です。、。
双曲型になります。 と読み違えると となり、型の判定自体は変わりませんが値が合わない。
なら で 、楕円型です。混合項を と置いたことを忘れると、ここで結論が反転する。
問題 3:型が変わる方程式
について、平面のどこがどの型になるかを述べよ。
解答 3
、、 なので です。
では で楕円型、 では で双曲型になる。 の直線上が放物型です。
トリコミ方程式の を に置き換えた形。境目が縦の直線に変わっただけで、構造は同じです。
問題 4:特性曲線を求める
の特性曲線を求めよ。
解答 4
、、 です。特性方程式は 。
積分すると と の 2 系統が出ます。 の双曲型なので、実の特性が 2 本という結論と合う。
この 2 方向に沿って、波が形を保ったまま進む。
問題 5:線形性の段階を答える
次の 3 つを、線形・半線形・準線形・完全非線形のどれかに分けよ。
解答 5
1 番目は線形です。 と 、 がすべて 1 次で、係数は定数。
2 番目は半線形になる。最高階の と は 1 次のままで、非線形は右辺の にしかありません。
3 番目は準線形です。最高階は と で、どちらも 1 次。ただし係数に と が入っています。
問題 6:条件の組み合わせを選ぶ
正方形の領域でラプラス方程式 を解くとき、初期条件と境界条件のどちらが適切かを述べよ。
解答 6
境界条件が適切です。楕円型には時間方向がなく、 を時刻と読む理由がありません。
四辺すべてで値を指定すると、内部の解が 1 つに決まる。これがディリクレ問題。
いっぽう 1 辺で と を与える初期値問題にすると、条件のわずかな違いが解を大きく変える。アダマールが挙げた不適切な問題の代表例です[1]。
の型はどれか。
- 楕円型
- 放物型
- 双曲型
- 場所によって変わる










混合項の係数が 2 なので B=1、そして A=C=1 です。Δ=1−1=0 で放物型になります。ux の項は最高階ではないため、型の判定には関わりません。