x2y′′−2xy′−4y=0 に y=xm を入れると、3 つの項がすべて xm になる。
m(m−1)xm−2mxm−4xm=0⟹m2−3m−4=0
x が消えて、m の 2 次方程式だけが残った。根は 4 と −1 で、一般解は y=c1x4+c2x−1 である。
変数係数なのに、代数方程式 1 本で片づく。そうなる仕組みが、この方程式の形に埋め込まれている[1]。
次数がそろっている
x2y′′ では x が 2 乗、微分も 2 階。xy′ は 1 と 1、y は 0 と 0。どの項も、x のべきと微分の階数が一致している。
一般には xky(k) という項だけが並ぶ。ここに y=xm を入れてみる。
xkdxkdkxm=xk⋅m(m−1)⋯(m−k+1)xm−k=m(m−1)⋯(m−k+1)xm
xk と x−k が打ち消して、xm に戻った。次数がそろっているとは、この打ち消しが起きるという意味である。
だから全部の項が xm でくくれて、係数の和を 0 と置くだけでよい。
同じ理由で、この方程式は拡大しても形が変わらない。x→λx と伸ばしても、係数はそのまま。
等次元方程式とも呼ばれる。xm が解になるのは、べき関数だけが拡大に対して形を保つからである。
特性方程式
2 階の場合を書いておく。
x2y′′+axy′+by=0
y=xm を入れると m(m−1)+am+b=0、つまり次のようになる[2]。
m2+(a−1)m+b=0
m の 1 次の係数が a ではなく a−1 である。m(m−1) から −m が出てくるためで、ここを落とす間違いが多い。
対数の目盛に移す
t=lnx(x>0)と置くと、この方程式は定数係数になる[4]。
計算を短くするために、演算子 θ=xdxd を用意する。
θy=xy′=dtdy
連鎖律から dtdy=dxdydtdx=xy′ となるので、θ は t での微分そのもの。
2 階を作る。
θ2y=xdxd(xy′)=x(y′+xy′′)=xy′+x2y′′
移項して x2y′′=θ2y−θy=θ(θ−1)y。一般には xky(k)=θ(θ−1)⋯(θ−k+1)y になる。
もとの方程式は θ の多項式に化ける。
[θ(θ−1)+aθ+b]y=0⟹dt2d2y+(a−1)dtdy+by=0
t の世界では定数係数。特性方程式は m2+(a−1)m+b=0 で、xm を直接入れたときと一致する[2]。
3 つの場合
特性方程式の根がどうなるかで、解の姿が分かれる[1]。
| 根 | 一般解 | | 異なる 2 実根 m1, m2 | c1xm1+c2xm2 |
| 重根 m | (c1+c2ln∣x∣)xm |
| 複素根 α±iβ | xα(c1cos(βln∣x∣)+c2sin(βln∣x∣)) |
定数係数の場合の emx、xemx、eαxcosβx と、そっくり対応している。x が lnx に、emt が xm に置き換わっただけである。
重根で対数が出る理由
t の世界で見れば当然である。重根なら (c1+c2t)emt で、t=lnx を戻すと (c1+c2lnx)xm になる。
もう 1 つ、極限として見る道もある。根が m1 と m2 で近いとき、次の組み合わせも解である。
m1−m2xm1−xm2
解の 1 次結合なので、これも解。m2=m1−ε として ε→0 を計算する。
εxm1−xm1−ε=xm1⋅ε1−e−εlnx⟶xm1lnx
対数は、2 本の解が重なる瞬間に現れる。lnx が突然出てくるように見えて、実は連続につながっている。
青い曲線が赤に重なっていく。重根の解は、別々の 2 本が融合した形である。
複素根のとき
m=α+iβ なら xm=xαxiβ=xαeiβlnx となる。
オイラーの公式で実部と虚部に分ける。
xα(cos(βlnx)+isin(βlnx))
三角関数の中身が lnx である点が定数係数との違い。x が 0 に近づくと lnx は −∞ へ走るので、振動が際限なく速くなる。
x を e 倍するごとに位相が β だけ進む。等比数列の目盛で見ると、等間隔の振動になっている。
負の x をまたげない
xm は x<0 で意味を持たないことがある。m=21 なら実数の範囲では定義できない。
そこで ∣x∣m と書き、t=ln∣x∣ とする[4]。x<0 の側でも同じ形の解が並ぶ。
ただし x=0 を含む区間では解けない。x=0 は方程式の特異点で、そこで x2 が消えてしまうためである。
例:3 つの場合を計算する
異なる 2 実根の例から始める。
x2y′′+2xy′−6y=0
m(m−1)+2m−6=m2+m−6=0 から m=2, −3。一般解は y=c1x2+c2x−3 である。
重根の例を見る。
x2y′′−3xy′+4y=0
m2−4m+4=(m−2)2=0 で m=2 の重根。一般解は y=(c1+c2ln∣x∣)x2。
複素根の例はこうなる。
x2y′′+xy′+4y=0
m2+4=0 から m=±2i。α=0、β=2 なので y=c1cos(2ln∣x∣)+c2sin(2ln∣x∣) である。
例:右辺があるとき
x2y′′+xy′−y=x2
同次側は m2−1=0 で y=c1x+c2x−1。右辺が x2 なので yp=Ax2 と置く。
x2(2A)+x(2Ax)−Ax2=3Ax2=x2
A=31 で yp=3x2 になる。
例:右辺が同次解と重なるとき
x2y′′+xy′−y=x
右辺の x は同次解の 1 本である。yp=Ax と置くと左辺が 0 になり、係数が決まらない。
lnx を 1 つ掛けて yp=Axlnx とする[1]。yp′=A(lnx+1)、yp′′=xA を代入する。
Ax+Axlnx+Ax−Axlnx=2Ax=x
lnx の項が打ち消して、A=21。yp=2xlnx である。
定数係数のときに x を掛けるのと同じ手当てで、掛けるものが lnx に替わっただけ。
例:円環の温度を求める
極座標のラプラシアンを書く[3]。
Δu=∂r2∂2u+r1∂r∂u+r21∂θ2∂2u
u=R(r)Θ(θ) と分けると、動径側がオイラー方程式になる。
r2R′′+rR′−n2R=0
特性方程式は m2−n2=0 で m=±n。n≥1 なら R=Crn+Dr−n、n=0 なら重根なので R=C+Dlnr である[3]。
角度によらない定常温度を考える。n=0 の解だけが残る。
内半径 a で温度 Ta、外半径 b で温度 Tb という条件を当てる。
C+DlnaC+Dlnb=Ta=Tb
引き算して D=ln(b/a)Tb−Ta。整理すると次の形になる。
T(r)=Ta+(Tb−Ta)ln(b/a)ln(r/a)
温度は半径に対して直線的ではなく、対数で変わる。配管の断熱材の厚みを決めるときに使う式である。
高階でも同じ
θ 演算子を使うと、高階でも機械的に進む[2]。
x3y′′′+2x2y′′−xy′+y=0
x3y′′′=θ(θ−1)(θ−2)y、x2y′′=θ(θ−1)y、xy′=θy を入れる。
θ(θ−1)(θ−2)+2θ(θ−1)−θ+1=θ3−θ2−θ+1
因数分解すると (θ−1)2(θ+1) になる。根は 1 の重根と −1。
y=c1x+c2xln∣x∣+c3x−1
重根の側にだけ ln∣x∣ が付いた。定数係数で xemx が出るのと同じ役回りである。
確定特異点の原型
x=0 でこの方程式の最高階の係数が消える。x2 で割ると xa と x2b が現れ、確定特異点になる。
確定特異点をもつ一般の方程式は、x→0 でオイラー型に近づく。特性方程式が決定方程式と呼ばれるのはこのためである。
オイラー方程式は、その中で級数の補正がまったく要らない特別な場合にあたる[4]。
定数係数の方程式
emx が基本。重根で x が 1 つ付き、複素根で cosβx が出る
オイラー方程式
xm が基本。重根で lnx が 1 つ付き、複素根で cos(βlnx) が出る
t=lnx という 1 つの置き換えが、右の列を左の列に写している。
検算のしかた
まず m の 1 次の係数を見る。m2+(a−1)m+b の −1 を落としていないか、ここだけ確かめれば大半のまちがいは防げる。
次に根を 1 つ選び、xm をもとの式に入れ直す。x2y′′+2xy′−6y に y=x2 なら 2x2+4x2−6x2=0 で合う。
複素根のときは βln∣x∣ の ln を書き落としやすい。cos2x と書いてしまうと定数係数の答えになる。
x2y′′+5xy′+4y=0 の一般解はどれですか。
- c1x−1+c2x−4
- (c1+c2ln∣x∣)x−2
- c1cos(2ln∣x∣)+c2sin(2ln∣x∣)
__RESULT__
特性方程式は m(m−1)+5m+4=m2+4m+4=(m+2)2 です。m=−2 の重根なので、ln∣x∣ が 1 つ付きます。m の 1 次の係数を 5 のままにすると m2+5m+4 となり、1 番目の誤答が出ます。
次数がそろっているから xm が通り、t=lnx で定数係数に移せる。オイラー方程式の性質は、この 2 つから全部出てくる。
出典
Russell Herman. *Cauchy-Euler Equations*/02%3A_Second_Order_ODEs/2.05%3A_Cauchy-Euler_Equations). A First Course in Differential Equations for Scientists and Engineers. Vladimir Dobrushkin. *Laplace Equation in Polar Coordinates*. Applied Mathematics 34, Brown University. Paul Dawkins. *Euler Equations*. Paul's Online Notes, Lamar University.
$x^2y'' - 2xy' - 4y = 0$ に $y = x^m$ を入れると $x$ が消え、$m^2 - 3m - 4 = 0$ だけが残ります。$x$ のべきと微分の階数が各項でそろっているため。$t = \ln x$ と置けば $x\frac{d}{dx}$ が $\frac{d}{dt}$ になり、定数係数の方程式へ移ります。特性方程式の 1 次の係数が $a$ ではなく $a-1$ になる理由もここから見える。重根で出る $x^m\ln x$ は、2 つの根を近づけた極限 $(x^{m_1}-x^{m_2})/(m_1-m_2)$ そのものです。複素根では $\cos(\beta\ln x)$ になり、原点へ近づくほど振動が速くなる。円環の定常温度が $\ln(r/a)/\ln(b/a)$ で決まる話まで。
特性方程式は m(m−1)+5m+4=m2+4m+4=(m+2)2 です。m=−2 の重根なので、ln∣x∣ が 1 つ付きます。m の 1 次の係数を 5 のままにすると m2+5m+4 となり、1 番目の誤答が出ます。