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2 階線形微分方程式……独立な解を 2 つそろえれば一般解は尽きる

2 階線形微分方程式は、標準形で次のように書きます[1]

なら斉次、そうでなければ非斉次です。土台になるのは、斉次方程式の解が 2 本の解の 1 次結合で尽きるという事実[5]

2 本を見つければ終わり。この記事はその「2 本」をどう捉えるかの話です。

重ね合わせの原理

斉次方程式を と書くと、 は線形です。 が成り立つ。

だから が解なら、その 1 次結合も解になる[1]。解の集合は足し算と定数倍で閉じたベクトル空間です。

非斉次では成り立ちません。 のとき となり、右辺が変わってしまう。

解空間はちょうど 2 次元

閉じているだけでなく、次元が正確に と決まる[1,5] が連続な区間で、この主張が成り立つ。

理由は初期値問題の一意性にあります。解 に対して という数の組を対応させると、この対応は 1 対 1 で上へも尽くす。

平面 と解の集合が同じ形をしているので、次元も です。 本目の解を持ってきても、必ず前の 2 本の 1 次結合になる。

存在と一意性は区間の端まで

が区間 で連続なら、 を満たす解が 全体でただ 1 つ存在します[5]

非線形の場合と違い、局所的な主張ではありません。解が途中で発散して消えることがない。

線形であることの見返りがここに現れる。区間を切るのは、標準形にしたときの係数の不連続だけ。

1 次独立と基本解系

でしか起こらないとき、 は 1 次独立です。

1 次独立な解を 2 本そろえたものを基本解系という[5]。解空間の基底にあたる。

の定数倍なら独立ではありません。 を並べても、解を 2 種類そろえたことにならない。

ロンスキー行列式

独立かどうかを行列式で判定します。2 つの関数に対して次を定めたものがロンスキー行列式[2]

という 2 本のベクトルが張る平行四辺形の、符号つき面積です。平行なら 、そうでなければ でない。

同じ斉次方程式の解であれば、ある 1 点で が言えれば、それだけで 1 次独立が従う[3]

アーベルの公式

ロンスキー行列式そのものが、簡単な微分方程式を満たす[4]

1 階線形なので解けます。積分因子を使えば次の形になる。

指数関数は決して にならない。したがって ならどこでも ならどこでも でない[3,4]

判定を 1 点で済ませてよい根拠がこれです。計算しやすい点を選べば足りる。

例:ロンスキー行列式を計算する

の解 について計算します。

どの でも にならない。1 次独立で、この 2 本が基本解系です。

アーベルの公式でも確かめられる。 なので となり、 から 。計算が一致する。

解でない関数には反例がある

なら 1 次従属」は、一般の関数については誤りです[2,7]。有名な反例がある。

を並べます。 では両方 では

どちらも 1 回微分できて、 を計算すると全域で になる。それでも を原点をまたぐ区間で満たすのは だけなので、1 次独立です。

反例が解にならない理由

この 2 つが同じ 2 階線形方程式の解になることはない[2]。解であればアーベルの公式が効き、 から 1 次従属が従うためです。

裏を返すと、 による判定を安心して使えるのは解に限った話。任意の関数の組に持ち込むと足をすくわれる。

判定の向きも整理しておきます。 なら 1 次独立、これは一般の関数でも正しい。逆向きだけが解に限られる。

階数低下法

1 本の解が見つかっているとき、そこから 2 本目を作れる[1] と置いて代入する。

が解であることを使うと、 の項がきれいに消える。

と置けば 1 階になる。変数分離で解けます。

を求めて とすれば完成。2 階の問題が 1 階に落ちるので、階数低下法と呼ばれる。

例:階数低下法で 2 本目を作る

には という解があります。代入すれば確かめられる。

なので です。

となり、2 本目は 。ロンスキー行列式は で、 では にならない。

非斉次は特殊解を 1 つ足すだけ

非斉次方程式の解は、特殊解 1 つと斉次方程式の一般解の和で尽きる[5,6]

がどちらも を満たすなら、差 に飛ぶ。つまり斉次解。

したがって非斉次を解く仕事は、基本解系を求めることと、特殊解を 1 つ見つけることの 2 つに分かれる。

右辺が和のときは分けて解ける

のように右辺が分かれるなら、それぞれの特殊解を足せば全体の特殊解になる[5]

のとき です。線形性がここでも効いている。

右辺が のような形なら、指数の部分と三角関数の部分を別々に片付けられる。

問題 1:解であることと独立性

の解であることを確かめ、基本解系になるかを判定せよ。

解答 1

では です。 では

ロンスキー行列式を計算します。

にならないので 1 次独立で、基本解系です。一般解は になる。

問題 2:初期値を当てる

問題 1 の方程式で、 を満たす解を求めよ。

解答 2

とすると です。

を代入して連立します。

解くと になる。

係数行列の行列式が でないから、この連立はいつでも解ける。基本解系であることが、初期条件を必ず満たせることを保証している。

問題 3:アーベルの公式を使う

の 2 つの解のロンスキー行列式を、解そのものを求めずに書け。

解答 3

なので、アーベルの公式に入れます。

の形です。解が初等関数で書けなくても、ロンスキー行列式だけは分かる。

の範囲で にならない。この区間では、2 本の解が独立なら独立のままです。

問題 4:階数低下法

には という解がある。2 本目を求めよ。

解答 4

標準形へ直すと です。

したがって となり、 です。

一般解は になる。重解のときに が出てくる仕組みが、ここに見えている。

問題 5:非斉次の構造

の一般解を求めよ。

解答 5

右辺が定数なので、特殊解も定数と見当を付けます。 と置くと

斉次方程式 の解は です。ロンスキー行列式は にならない。

特殊解 1 つと基本解系 2 本、これで解が尽きています。

問題 6:右辺を分けて解く

の一般解を求めよ。

解答 6

右辺を に分けます。前半の特殊解は問題 5 で求めた

後半は と置くと から です。

2 つの特殊解を足したものが、和の右辺に対する特殊解になっている。

問題 7:独立性の判定を誤らない

について、区間 でのロンスキー行列式と 1 次独立性を調べよ。

解答 7

では なので では です。

では が微分できないため、 が定義されません。定義される範囲では

それでも で満たすのは だけなので、1 次独立です。

この 2 つが同じ 2 階線形方程式の解になることはありません。 が原点で微分できず、 が連続という前提から外れる。

が区間 で連続な について、正しいものはどれか。

  • ロンスキー行列式が のある点で なら、別の点では でないこともある
  • ロンスキー行列式は 全体で か、 のどこでも でないかのどちらか
  • 解空間の次元は初期条件の与え方によって変わる
  • 3 本の解が 1 次独立になる場合がある
__RESULT__

アーベルの公式から で、指数関数は になりません。したがって は途中で符号を変えることも、一部だけ になることもありません。解空間は常に 2 次元なので、3 本目は必ず前の 2 本で書けます。

よくある誤り

解が 2 本あれば基本解系、とは言えません。1 次独立であることを確かめます。
ロンスキー行列式が だから 1 次従属、と結論できるのは同じ方程式の解に限られます。
非斉次方程式で重ね合わせをそのまま使うと誤ります。閉じているのは斉次方程式の解だけです。
特殊解を 2 つ足しても非斉次の解になりません。右辺が 2 倍になります。
標準形へ直さずに を読むと、アーベルの公式も階数低下法も合いません。
解空間が 2 次元であることは、係数が連続な区間の上での主張です。不連続点をまたぐと崩れます。
階数低下法で を求めたあと、 を掛け戻すのを忘れると 2 本目になりません。

参考文献

Linear differential equation - Wikipedia(英語)
Wronskian - Wikipedia(英語)
Wronskien - Wikipédia(フランス語)
Abel's identity - Wikipedia(英語)
Lineare gewöhnliche Differentialgleichung - Wikipedia(ドイツ語)
Ecuación diferencial lineal - Wikipedia(スペイン語)
Wronski-Determinante - Wikipedia(ドイツ語)
標準形は $y'' + p(x)y' + q(x)y = r(x)$。斉次なら解の集合は 2 次元のベクトル空間で、次元がちょうど 2 になる理由は初期値問題の一意性にあります。独立かどうかはロンスキー行列式で判定でき、アーベルの公式から、その値は区間全体で $0$ か、どこでも $0$ でないかのどちらかに決まる。ロンスキー行列式が $0$ でも独立な関数の組があること、1 本の解から 2 本目を作る階数低下法、非斉次を特殊解と斉次解に分ける構造まで、計算問題つき。