ラプラス変換で解く初期値問題 - 計算の手順と実例
ラプラス変換の基本性質と公式を学んだところで、いよいよ微分方程式を実際に解いていきます。ラプラス変換による解法の最大の強みは、初期条件が自動的に式に組み込まれる点です。一般解を求めてから定数を決定するという従来の 2 段階を踏む必要がなく、最初から特定の初期値問題の解に一直線で到達できます。
解法の手順
ラプラス変換で初期値問題を解く流れは、毎回同じ 4 ステップで進みます。
微分方程式の両辺をラプラス変換し、 に関する代数方程式を立てる
代数方程式を について解く
を部分分数分解する
各項を逆ラプラス変換して を求める
この手順を頭に入れたうえで、問題の難易度を段階的に上げながら計算していきます。
演習 1:1 階の初期値問題
ステップ 1:ラプラス変換
と を代入すると
ステップ 2: について解く
ステップ 3:部分分数分解
を代入すると 、 を代入すると です。
ステップ 4:逆変換
検算として が初期条件を満たすことを確認できます。
上の解で のとき の挙動を支配する項はどれですか?
- (減衰項)
- (成長項)
- 両方の項が同じ程度に寄与する
演習 2:2 階定数係数(相異なる実根)
両辺をラプラス変換します。
整理すると
なので
部分分数分解すると
で 、 で です。
, で初期条件が確認できます。
演習 3:2 階定数係数(重根)
ラプラス変換すると
なので
重根の部分分数分解は の形です。
で 、 の係数を比較して です。
を使って
重根の場合、 の分母に対応する逆変換は です。一般に に対しては となります。特性方程式の重根が、ラプラス変換の側では部分分数の高次極として現れるわけです。
重根なら の線形結合が解になるという従来の結果と一致する。
演習 4:複素根(振動解)
ラプラス変換すると
分母を平方完成して と変形します。分子の と合わせると
これは で を に置き換えた形です。 なので、 移動定理により
を逆変換する際、 移動定理を適用するために必要な操作はどれですか?
- 分母を因数分解して部分分数に展開する
- 分母を と見て、 をひとまとまりの変数として扱う
- 分子を と分解し、 と の項に分ける
既約二次因子が分母にある場合、平方完成してから 移動定理を使うのが定石です。 は の形なので、逆変換は に を掛けたものです。
演習 5:非同次方程式(多項式の右辺)
ラプラス変換すると
部分分数分解します。
両辺に を掛けると
で 。 の係数を比較すると 、 の係数から 、 の項から (既知)、 の係数は のみで です。よって , となり
逆変換すると
, で初期条件を満たしています。
右辺 による強制力がなければ系は静止したままです。 は時間に比例して増大する成分で、外力に対する定常的な応答に相当します。
固有角振動数 での振動成分です。初期条件をゼロにするために、定常応答とちょうど打ち消し合う振幅で発生しています。
演習 6:非同次方程式(指数関数の右辺)
ラプラス変換すると
なので
が約分されて式が簡潔になりました。部分分数分解すると
で 、 で です。
上の計算で が分子と分母で約分されました。この約分が起こった理由として正しいものはどれですか?
- 初期条件がたまたまゼロだったから
- 初期条件と非同次項の組み合わせにより、 の成分がちょうど相殺されたから
- が同次解の一部だったから
同次解は と ですが、初期条件 , と非同次項 の組み合わせにより、 の係数がゼロになります。別の初期条件を選べば約分は起こらず、解に の項が現れます。
演習 7:不連続な右辺(ステップ関数)
時刻 でスイッチが入る入力に対する応答を求めます。
を外した部分を分解します。
逆変換は であり、第 2 移動定理から
なので 。入力がまだオフのため、系は初期状態のまま静止しています。
となり、 を起点として指数的に に漸近します。1 階の減衰系に定数入力が加わったときの典型的なステップ応答です。
演習 8:衝撃入力(デルタ関数)
ラプラス変換すると
を外した部分を分解します。
逆変換は であり、第 2 移動定理から
時刻 に瞬間的な衝撃が加わり、そこから 2 つの指数関数の差として減衰していく解が得られました。
計算のコツと注意点
ここまでの演習を通じて見えてきた実践的なポイントをまとめておきます。
で に が掛かることを忘れがちです。とくに かつ の場合、符号と係数を丁寧に展開してください。
分解後の式に適当な の値(たとえば )を代入して、元の式と一致するか確認する習慣をつけると計算ミスを防げます。
演習 6 のように、分子と分母で共通因子が現れることがあります。約分してから部分分数分解した方が計算量が大幅に減ります。
不連続入力を含む問題では、 をいったん脇に置き、残りの有理式を部分分数分解・逆変換してから第 2 移動定理を適用する、という手順が最も見通しが良くなります。
, , をラプラス変換すると が得られます。逆変換の結果として正しいものはどれですか?
です。これに係数 を掛けて が得られます。 の逆変換公式 で , としたものです。
ラプラス変換による解法は、手順が機械的で間違いにくいという利点がある一方、部分分数分解や逆変換の公式に慣れるまでは時間がかかります。最初のうちは演習 1〜4 のような基本パターンを繰り返し、部分分数分解が条件反射でできるようになったら、演習 7〜8 のような不連続入力の問題に進むのが効率的です。
e−2t→0 なので減衰項は消え、e3t→∞ の成長項が支配的になります。部分分数分解の各項がそれぞれ過渡応答と定常的な振る舞いに対応しているのが見てとれます。