ポアソン方程式の境界条件とグリーン関数〜源の寄与と境界の寄与に分ける
ラプラス方程式 は源のない場を表しますが、現実には電荷や質量や熱源があります。その源を右辺に置いた形がポアソン方程式です。
はラプラシアン、 は源の分布を表す既知の関数。ラプラス方程式は の場合にあたり、ポアソン方程式はその一般化です。
ポアソン方程式が出てくる場所
代表は静電場です。電荷密度 が与えられたとき、静電ポテンシャル は次の方程式に従う。
は真空の誘電率。電荷のない領域では になり、方程式はラプラス方程式に戻る。
重力ポテンシャル も同じ形で、質量密度 に対して に従います。内部に熱源がある定常熱伝導の温度分布も、同じ形に書ける。
源のない領域の場を表す。解は調和関数と呼ばれ、最大値原理を満たす
源のある領域まで含めた場を表す。右辺 が源の強さになる
境界条件の分類
微分方程式だけでは解が決まりません。領域の境界 の上で何かを指定する必要があり、その指定が境界条件です[1]。
境界で関数の値そのものを指定します。 の形で、境界の温度が既知、導体表面の電位が一定、といった状況にあたる。
境界で法線方向の微分を指定します。 の形で、熱の流れない断熱壁や、電場の法線成分が の絶縁面を表す。
値と法線微分の線形結合を指定します。 の形で、物体表面と周囲の流体とのあいだの熱交換がこれにあたる。
どれを選ぶかは解の存在と一意性に直結する。ディリクレ条件なら解は 1 つに決まる。ノイマン条件では事情が変わります。
ノイマン問題には解ける条件がつく
ノイマン条件では、 と を勝手に決めると解が存在しません。方程式を領域全体で積分すると、両者が結びついているからです[2]。
3 つ目の等号が発散定理。左端と右端だけを見ると、次の等式が必要だと分かる。
源が領域の中で生む量と、境界から出ていく量が釣り合っていなければならない。
この等式が成り立つときでも、解は 1 つに決まりません。 が解なら も同じ方程式と同じ境界条件を満たすため、領域の平均値を固定するといった条件を足して 1 つに絞る。
1 次元のポアソン方程式を解く
区間 の上で、次の方程式を考えます。
境界条件は 、 のディリクレ条件。右辺を 2 回積分する。
から 。 に入れると で、 だから です。
中央の で最大値 をとり、両端で になる。源 が中央で最も強いことと合う。

境界条件を変えると解が変わる
同じ方程式でも境界条件を替えれば解は別物になる。、 にしてみる。
一般解 に入れると 、 で、次の形になります。
源による に、境界条件による が重なった形。上の図の青と緑が、この 2 つの解です。
1 次元でノイマン条件を試す
同じ に、今度は 、 を課す。
1 次元では境界が 2 点だけのため、可解条件は次の形になる。外向きの法線は で 、 で 。
左辺を計算します。
右辺は で、左辺の と合いません。この境界条件では解が存在しない。
にすると釣り合う。 に を入れると で、解は次の形。
はどんな値でもよく、ここに定数分の自由が残ります。ノイマン条件だけでは、グラフの上下の位置が決まりません。
源の寄与と境界の寄与に分ける
ポアソン方程式は線形なので、解を 2 つに分けられる。ディリクレ問題 、 を次の 2 つに割る。
| 源の寄与 | 、境界で |
| 境界の寄与 | 、境界で |
足した は を満たし、境界では になる。だからこれがもとの問題の解。
のほうはラプラス方程式だから、源を忘れて境界だけを見ればよい。1 次元では調和関数が 1 次関数になるため、、 なら です。
さきほどの は、まさにこの分け方になっている。前半が 、後半が です。
グリーン関数による解の表現
を系統的に求める道具がグリーン関数です[1]。領域 のディリクレ問題を考える。
これが の中で成り立ち、境界 の上では とします。
グリーン関数 は、点 に置いた単位の点源への応答。これが求まれば、任意の に対する解を積分 1 本で書ける。
は、点 に集中した源が境界条件を満たしながら領域全体へ及ぼす影響を表します。 と ()を満たす基本解に、境界の補正を足したものです。
はディラックのデルタ関数で、点 に集中した源を表す。
符号の約束に気をつける。ここでは ととったので、 は負の値をとる。 の形で書く教科書では の符号が逆になります。
1 次元のグリーン関数
区間 では を手で書けます。 を固定したとき、次の形。
と を満たす。 で微分すると では 、 では で、 での跳びがちょうど 。だから 2 回微分すると になる。
を入れて積分すると に戻ります。手で解いた答えと一致した。
円盤の上で解く
2 次元の具体例を 1 つ置く。単位円盤 の上で、次の問題を解く。
源が一定だから、解も中心のまわりで対称になると見当がつく。 を試します。
と書けば 、 で、足して 。 では 。

極座標でも確かめられる。中心のまわりで対称な関数なら で、 を入れると になる。
高次元への拡張
2 次元以上では解析的に解ける場合が限られます。それでも方程式と境界条件の構造は同じ。
の形。長方形や円盤では、フーリエ級数や極座標を使った変数分離で解を組めます。
の形。自由空間のグリーン関数は で、クーロンポテンシャルそのものです。
3 次元のグリーン関数がクーロンの法則と一致するのは偶然ではありません。点電荷 を原点に置くと で、方程式は になる。
グリーン関数を使うと になる。
点電荷のポテンシャルの式に一致しました。1 次元で決めた符号の約束が、ここでも合っています。
解の一意性
ディリクレ問題の一意性は、エネルギーを使って示せます。 と が同じ方程式と同じ境界条件を満たすとして、差 をとる。
で、境界では 。グリーンの第一恒等式を当てる。
右辺は境界で 、内部で だから、どちらの項も になる。左辺の被積分関数は 以上なので、 です。
は定数で、境界で だから 。つまり になる。
ポアソン方程式 のディリクレ問題で、解の一意性を示すときに使う議論はどれですか。
- 2 つの解の和がラプラス方程式を満たすことを使う
- 2 つの解の差がラプラス方程式を満たすことを使う
- 2 つの解の積がポアソン方程式を満たすことを使う
にノイマン条件 を課すとき、解が存在するために必要な等式はどれですか。
方程式を領域全体で積分し、発散定理を当てると左辺が右辺に移ります。 の断熱壁の場合だけ、条件は に縮みます。
適切性
一意性の議論は、適切性(well-posedness)の一部です。アダマールは 1902 年の論文で、物理的に意味のある問題は解けること(possible)と 1 つに決まること(déterminé)の 2 つを満たすと述べました[3]。
データへの連続依存を加えた 3 条件で適切性を定義するのは、今の言い方です。解がデータの小さな変化で大きく動くなら、測定誤差や丸め誤差が答えを壊してしまう。
ポアソン方程式のディリクレ問題は 3 条件をすべて満たします。ノイマン問題のほうは、可解条件を課して平均値を固定したうえで適切になる。
境界条件は方程式にあとから足すものではなく、解の存在と一意性を決める側です。どの条件を課すかで、解が 1 つに決まるか、定数分ずれるか、そもそも存在しないかが変わる。











差 w=u1−u2 をとると Δw=f−f=0 でラプラス方程式になります。和では Δ(u1+u2)=2f になり、f が消えません。