フェルマーの最終定理と代数的整数 - 代数的整数論

フェルマーの最終定理は、 のとき を満たす正の整数解が存在しないという主張です。この定理への挑戦が代数的整数論を生み出しました。

ソフィー・ジェルマンと初期の進展

18世紀末から19世紀初頭、ソフィー・ジェルマンは特定の条件を満たす素数 に対してフェルマーの最終定理を証明しました。彼女のアプローチは初等的でしたが、問題の難しさを浮き彫りにしました。

の場合は個別に証明されましたが、一般の に対する統一的な方法は見つかりませんでした。

クンマーの円分体アプローチ

1840年代、エルンスト・クンマーは円分体を使った革新的なアプローチを試みました。 の原始 乗根とすると、 は円分体 上で

と因数分解できます。もし円分体の整数環で素因数分解の一意性が成り立てば、この分解から矛盾を導けると考えられました。

素因数分解の一意性の破綻

クンマーは円分体の整数環 で素因数分解の一意性が成り立たない場合があることを発見しました。例えば のとき、 では一意性が成り立ちません。

正則素数

円分体で素因数分解の一意性が成り立つ素数。p < 100 では大半が正則素数。

非正則素数

一意性が成り立たない素数。37、59、67 などが非正則素数。

クンマーは正則素数に対してフェルマーの最終定理を証明しました。非正則素数については追加の議論が必要でしたが、いくつかの場合には成功しています。

理想数からイデアルへ

素因数分解の一意性を回復させるため、クンマーは「理想数」という概念を導入しました。元としては存在しないが、あたかも存在するかのように振る舞う仮想的な数です。

デデキントはこの概念をイデアルとして再定式化しました。イデアルを使えば、任意の代数体の整数環で「素イデアル分解の一意性」が保証されます。

クンマーの貢献

円分体の研究、理想数の導入、正則素数に対するフェルマーの最終定理の証明。

デデキントの貢献

イデアルの概念の整備、デデキント整域の理論の確立。

最終的な解決へ

フェルマーの最終定理は1995年にアンドリュー・ワイルズによって証明されました。その証明は代数的整数論ではなく、楕円曲線とモジュラー形式の理論を用いています。

しかし、クンマーとデデキントの研究は無駄ではありませんでした。彼らが築いた代数的整数論は、現代の整数論の基盤となっています。フェルマーの最終定理という一つの問題が、数学の新しい分野を生み出したのです。