ディリクレの単数定理:単数群の構造と三次体の基本単数
の 3 乗は だから、次の等式が成り立ちます。
の元 は同じ環の中に逆元 をもつ。このような元を単数と呼びます。
の整数乗もすべて単数で、互いに異なる値をとります。それでも の単数は とこの数の整数乗の積に限られ、単数の群は と同じ形になる[1]。
ディリクレが 1846 年に示した単数定理によると、どの数体でも単数の群は有限巡回群と をいくつか並べたものの積になります[1]。 がいくつ並ぶかは体の埋め込みの個数だけで決まる。
単数はノルムで見分ける
数体 の整数環を とします。 が単数であることと であることは同値です[2]。
となる があれば で、ノルムはどちらも整数だから に限られる。逆に は埋め込みごとの像 個の積で、 なら 自身を除いた残りの積が に等しくなります。その積は代数的整数どうしの積で、 も に入る[2]。
では の 3 つの根 が互いに共役です。整数 について なので、各因数の符号を変えると になります。
| にあたり、ノルム で単数ではない | |
| にあたり、ノルム で単数ではない | |
| にあたり、ノルム の単数 | |
| の逆元で、ノルム の単数 |
定理の主張
を 次の数体とします。 から への埋め込み 個のうち、像が実数に収まるものの個数を とする。残りは複素共役どうしで組になり、その組の数を とすると です。
は に入る のべき根の全体で、有限巡回群です[1]。 個の単数 があって、どの単数も次の形にただ 1 通りに書けます[1,3]。
この が基本単数で、 を単数群の階数と呼ぶ。基本単数の選び方は 1 通りではありませんが、階数は体だけで決まります。
の実の埋め込みは を実数の へ送る 1 つだけで、。 と へ送る 2 つが 1 組になって です( は の虚数の立方根)。階数は で、冒頭の が基本単数になる[1]。
ほかの体の階数と基本単数は次のとおりです[1]。最後の行の は の根を表す。
| 体 | 階数 | 基本単数 |
|---|---|---|
| 、 | ||
| 、 |
なら は実数の中に埋め込めるため、 です[1]。 は実の埋め込みをもたず、 は 個の のべき根からなる。階数が になるのは の場合で、 と虚二次体だけです[1]。
例: が基本単数であること
階数 の三次体では基本単数 と判別式 のあいだに E. Artin の不等式 が成り立ちます[1]。 は の整数環で、判別式は です[1]。
は より大きい単数なので、正の整数 を使って と書ける。 だとすると、不等式の右辺は で抑えられます。
これは Artin の不等式 と食い違い、 に決まる。 そのものが基本単数です[1]。
単数を対数で並べる
単数どうしの積を和に直すため、各埋め込みでの絶対値の対数を並べます[2]。 を実の埋め込み、 を複素共役の組から 1 つずつ選んだ埋め込みとする。
これを成分にもつ は積を和に写します。複素の埋め込みで 倍するのはノルムに が入るため。
成分の和は で、単数なら です。
単数の像は成分の和が になる超平面 にすべて入る[2]。 の次元は で、定理の階数と同じ数です。
の埋め込みは恒等写像 と、 を へ送る の 2 つです。単数 を点 として描くと、ノルムが なので双曲線 か に乗る[1]。 のノルムは で、その整数乗は 2 本の双曲線に交互に並びます。

左では の が大きいほど点どうしの間隔が開きます。対数をとった右では となり、直線 の上に等間隔で並ぶ。 は の値です。
1 のべき根だけが 0 に写る
となる単数はどの埋め込みでも絶対値が です。
共役の絶対値がどれも 以下の 次以下の代数的整数は有限個しかない[2]。最小多項式の係数は共役の基本対称式で絶対値に上限があり、しかも整数だからです。
で に写る単数は有限群をなし、どれも有限位数だから のべき根です[2]。 なら 、 の 4 つがそれにあたる。
絶対値が でも、 のように代数的整数でない数はべきをとっても になりません[2]。
の根で、整数係数に直すと最高次の係数が になる。
像は格子になる
共役の絶対値に上限をつける同じ議論から、 の有界な範囲に入る も有限個に限られます[2]。 の像は の中の離散的な部分群で、 と同型になる。ここで です。
ここまでの議論で独立な単数の個数に という上限がつきました。ちょうどその個数だけ単数があることを示すには、ミンコフスキーの凸体定理を使って単数を実際に見つけます[1,2]。
を 1 つ決め、 番目以外の埋め込みで絶対値が より小さい単数 を次の手順で探す。
番目以外の座標を大きく伸ばし、 番目を縮めた格子に凸体定理をあてる
決まった有界集合に入る元 がとれ、 は一定の値以下になる
ノルムが一定の値以下の単項イデアルは有限個なので、 はその生成元の単数倍になる
その単数は伸ばした 番目以外の埋め込みで絶対値が より小さい
こうして について得た の の値を行にもつ行列から、最後の列を落とした正方行列を考えます。対角成分は正、それ以外は負で、各行の和は落とした成分の符号を変えた値だからこれも正になる[2]。
対角以外が負で行の和が正の行列は正則です[2]。 は一次独立で、像の階数は に達する。
ディリクレが 1846 年に示したときはミンコフスキーの定理(1889 年)がまだなく、代わりに鳩の巣原理を使っていました[1]。扱った環は 1 つの代数的整数 で生成される の形のもので、整数環の定義が整う前のことです[2]。
例: の根が生成する三次体
を の根とします。3 つの根 、、 はすべて実数なので 、 で、階数は です[1]。整数環は になる[1]。
定数項が だから 3 つの根の積は で、 はノルム の単数。 は の根で、こちらはノルム の単数です[1]。
埋め込みを根の小さい順に とすると、2 つの単数は で次の点に写ります[1]。
どちらも成分の和は で、正と負の並び方が違うため互いに比例しない。 と は乗法的に独立です[1]。
格子点は正三角形の頂点に並びます。 の判別式は で平方数なので、この体はガロア拡大です[1]。ガロア群は 3 つの実の埋め込みを巡回させる。 の座標で見ればそのいれかえは の中の の回転にあたり、格子はこの回転で自分自身に重なります。
ほかの単数も と で書けます。 を使うと となり、 です[1]。図の が の 倍の位置にあるのはこのため。
レギュレーター
基本単数 の の値を行にもつ 行列を考えます。そこから列を 1 つ落とした正方行列の行列式の絶対値を のレギュレーター と呼ぶ[1]。
各行の和が なので、どの列を落としても絶対値は同じです[1]。基本単数を選び直すと行列の左から行列式 の整数行列がかかり、やはり値は変わらない[1]。 の と虚二次体では と決めます[1]。
と では行列が で、成分は基本単数 の と です。どちらを残しても になる[1]。
| 、 |
の中で格子 の基本領域がもつ体積は です[4]。三次体の図に塗った平行四辺形の面積は にあたる。
独立な単数 から同じように計算した値を と書くと、 との比は指数になります[1,2]。
で をとると、 で指数は 。 の形の単数に は含まれません。
例: と が基本単数であること
独立な単数の組が基本単数かどうかは の下限があれば判定できます。指数は に等しく、下限を使った評価が より小さければ に決まる。
総実な三次体については判別式 を使った次の下限を Cusick が示しています[1]。
では を入れて次のようになります。
正の整数である指数は に決まり、 と が基本単数になる[1]。 の単数はすべて と書けます。
階数は埋め込みを数えれば決まりますが、基本単数そのものは Artin や Cusick の不等式のような道具で 1 つずつ確かめることになります。










