有限和で類数が決まる(ディリクレの類数公式とレギュレーター)
類数はイデアル類を数えた個数です。数え上げの量なのに、無限級数の極限から出てきます。
デデキントゼータ関数 の での留数に、類数がそのまま現れる[1]。この橋渡しが類数公式です。
留数に 5 つの量が同居する
を 次の数体、 を実埋め込みの個数、 を複素埋め込みの対の個数とします。 は に 位の極を持ち、留数は次の値です[1][2]。
右辺に出るのは 種類の量です。
| 類数。イデアル類の個数 | |
| レギュレーター。単数の対数から作る行列式 | |
| に入る のべき根の個数 | |
| 判別式 | |
| 実埋め込みと複素埋め込みの対の個数 |
代数的な量が つ、解析的な量が左辺に つ。どれか つが分かればもう つが決まる、という形になっています。
レギュレーターは単数の大きさ
だけ聞き慣れない量です。単数群の自由部分の階数を とし、基本単数 をとります。
を並べた 行列の行列式の絶対値がレギュレーターです。単数が対数空間でどれだけ広がっているかを測る量になる。
虚二次体では なので、行列が空になり です。実二次体では で、基本単数 をとると になります。
虚二次体で式を書き下す
虚二次体では 、、 です。いっぽう と分解し、 の留数が なので、留数は になります[2]。
は判別式に付随するクロネッカー記号で、法 の指標です。 は無限和なので、このままだと近似計算になります。
無限和は有限和に落ちる
ところが には閉じた形があります。虚二次体では、次の有限和で類数がぴったり決まる。
個の項を足すだけです。無限級数が消えて、割り算 回で終わります。
例:判別式 を最後まで
をとります。、 です。
は と互いに素でない で になり、残りは 個。値を並べると次のようになります。

になるのは 、 になるのは です。 の総和は 。
公式に入れると になります。ミンコフスキーの限界で素イデアルを調べて出した と一致する[3]。
関数の値も確かめられます。 で、。無限和の側からも同じ答えが出ます。
図のとおり収束は遅い。有限和の公式が用意されている理由がここにあります。
実二次体はレギュレーターが混じる
実二次体では 、、 なので、留数は です。 の分解と合わせると次が出ます。
左辺が と の積なので、片方だけを切り離せません。ここが虚二次体との決定的な違いです。
で確かめます。、 なので右辺は 。
基本単数は黄金比 で、。ぴったり一致するので 、つまり です。
なので類数が直接出る。有限和の公式も使える
の積しか出ない。基本単数を別に求めて割る必要がある
実二次体で類数 が無限にあるかが未解決なのも、この分離の難しさと無関係ではありません[3]。レギュレーターが大きいと類数は小さくなり、両者が競合します。
副産物のほうが有名になった
類数公式は を含んでいます。 かつ なので、右辺が になりようがないためです。
この非消滅から、ディリクレの算術級数定理が出ます。 なら、 に素数が無限に含まれる。
留数に類数が現れる
類数は 1 以上なので L(1) は 0 でない
指標の直交性で素数を数える
等差数列に素数が無限にある
類数という代数の量が、素数の分布という別の問題を支えています。橋を渡ったあとで、もとの岸のほうが広がった形です。
虚二次体で類数公式が有限和になるのはなぜですか。
- 類数が有限だから
- レギュレーターが で、 に閉じた形があるから
- 判別式が負だから









虚二次体では単数群の自由部分の階数が 0 なので RK=1 です。残る L(1,χd) は χd(a)⋅a の有限和で書けるため、無限級数を計算せずに済みます。実二次体では hKRK の積しか出ません。