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分岐する素数は判別式の約数しかない - 冪零元と覆いの折り目

で素数を分けていくと、 だけが特別です。 となり、同じ素イデアルが 回現れる[1]

ほかの素数は重なりません。 のように相異なる因子に分かれるか、 のように分かれないままです。この重なりを分岐と呼びます。

重なりは剰余環に現れる

と分けたとき、どれかの 以上なら で分岐する。全部 なら不分岐です[1]

指数を数えずに判定する方法があります。中国剰余定理で と分けて、その中身を見る[1]

なら でない冪零元が出ます。 に入って に入らない元をとれば、 乗して になる。

が全部 なら、 は有限体の直積です。体の直積に冪零元はありません。

つまり が分岐することと、 でない冪零元があることは同値です[1]

分解を計算しなくても、 で割った環がつぶれているかどうかを見れば分かる。

判別式が答えを持っている

分岐する素数の一覧は、判別式を素因数分解するだけで出ます。 で分岐することと は同値です[1]

デデキント自身の記録によれば、この結果を最初に発表したのは 1871 年 9 月 20 日でした[1]

判別式は でない整数なので、素因数は有限個。分岐する素数も有限個に限られます。

覆いが折り重なる点

幾何で見ると、分岐は覆いの折り目です。複素平面の写像 を考えると、 以外のどの点にも原像が つあります。

だけが例外で、原像は 点。 枚が 枚に潰れているので、ここが分岐点です。

素イデアルの分岐は、この折り目の代数版です。 は何枚が重なっているかを数えている。

例:3 次体で 2 と 3 が分岐する

の根とし、 とします[1] なので と書けます。

ノルムを計算すると なので、 はどれも です[1]

これらを素イデアルに分けて と突き合わせると、次が出ます[1]

のほうは指数が で混ざっています。分岐といっても、上に乗る素イデアルが全部重なるとは限らない。

左では 枚重なった素イデアルと 枚だけの素イデアルが同居しています。右は 枚が か所に集まっていて、これが完全分岐です。

アイゼンシュタインなら全部重なる

となるとき、 は完全分岐すると言います[2] がそうです[2]

見分け方があります。 の最小多項式が でアイゼンシュタイン、つまり定数項以外の係数が で割れて定数項が で割れないとき、 は完全分岐します[2]

さきほどの で見ると、 の倍数で、 で割れません。アイゼンシュタインの条件を満たすので になる。

円分体でも同じことが起きます。 について が成り立ち、 は完全分岐する[5]

緩いか激しいか

分岐の中にも段階があります。分岐指数 が割るかどうかで分けます[3]

緩分岐

のとき。剰余体の側だけで説明がつく素直な重なり

激分岐

のとき。標数と指数がぶつかり、差積の計算が重くなる

境目は具体例で見るのが早い[3]

なので緩分岐
の体の なので激分岐
の体の なので緩分岐
なので緩分岐
で割れるので激分岐

不分岐な素数も緩分岐に含めます[3] なら を割らないので、定義をそのまま当てはめれば緩い側に入る。

どこでも分岐しない拡大

の拡大 で、 のすべての素イデアルが不分岐なものを不分岐拡大と呼びます。 の上では、そういう拡大は 自身しかありません。判別式が より大きくなるためです。

ところが でなければ話が変わります。 上の最大不分岐アーベル拡大をヒルベルト類体 と呼び、次が成り立つ[4]

不分岐アーベル拡大が 自身しかないことと、 の類数が であることは同値です[4]。分岐しない拡大がどれだけあるかが、そのまま類群の大きさになっている。

の中では、 の素イデアルが完全分解することと、それが単項であることが同値になります[4]。しかも のどのイデアルも、 へ上げると単項になる。

の分岐はどちらですか。

  • 緩分岐。 を割らない
  • 激分岐。 を割る
  • 不分岐。 の素因数だが重ならない
__RESULT__

なので は完全分岐し、 です。 なので激分岐になります。 のときだけ緩分岐です。

判別式を素因数分解する、剰余環に冪零元を探す、最小多項式のアイゼンシュタイン性を見る。同じ現象に 通りの入口があり、どれも計算で確かめられます。

参考文献

Keith Conrad, *Discriminants and ramified primes*, University of Connecticut
Keith Conrad, *Totally ramified primes and Eisenstein polynomials*, University of Connecticut
Keith Conrad, *The different ideal*, University of Connecticut
Class field theory - Encyclopedia of Mathematics
C M Ringel, *Algebraische Zahlentheorie, Teil III: Kreisteilungskörper*, Universität Bielefeld
$\mathbb{Z}[i]$ で重なるのは $(2) = (1+i)^2$ だけ。分岐は $\mathcal{O}_K/(p)$ に $0$ でない冪零元があることと同値で、判別式を素因数分解すれば一覧が出ます。デデキントがこれを最初に発表したのは 1871 年 9 月 20 日。$z$ を 2 乗する写像で原点だけ 2 枚が重なるのと同じ現象です。$T^3 - 9T - 6$ の体では $(2) = \mathfrak{p}^2\mathfrak{p}'$、$(3) = \mathfrak{q}^3$ と型が混ざる。アイゼンシュタイン多項式が完全分岐を作ること、$p \mid e$ で分かれる緩分岐と激分岐、$\mathrm{Gal}(F/K) \cong \mathrm{Cl}_K$ となるヒルベルト類体まで。