円分多項式から円分体へ〜整数環はちょうど Z[ζ] になる
を有理数の範囲で既約な因子に分けると、 個の多項式が出ます。そのうち 乗してはじめて になる数を根に持つのが です。
この が 番目の円分多項式で、根を つ添えた体が円分体。次数は で、 という と互いに素な数の個数と一致します。
円分多項式は割り算で作れる
とし、 乗してはじめて になる数を原始 乗根と呼びます。円分多項式 は、原始 乗根だけを根に持つモニックな多項式です[2]。
の根は 個あり、それぞれちょうど つの約数 について原始 乗根になります。だから根を約数ごとに仕分けると、次の等式が出ます[2]。
この式は計算法そのものです。 から始め、 を小さい約数の で順に割っていけば が残る。
でやってみます。約数は なので、 を で割る。次数は で、商が です。
| 、次数 | |
| 、次数 | |
| 、次数 | |
| 、次数 | |
| 、次数 | |
| 、次数 | |
| 、次数 | |
| 、次数 | |
| 、次数 | |
| 、次数 |
素数 のときは形が単純で、 です。 はどれも整数係数で、有理数体上で既約になります[2]。

図の橙が原始 乗根です。 と が互いに素な 個だけが該当し、残りはもっと小さい約数で に戻ります。
係数はいつまでも小さいわけではない
上の表を眺めると、係数が と しか出てきません。しばらく計算を続けても同じ状態が続きます。
破れるのは です。 は次数 の多項式で、係数に が現れる。 以下では しか出ないので、ここが最初の例になります。
で、奇素数 つの積としても最小です。相異なる奇素数が つ揃ってはじめて、係数が大きくなる余地が生まれる。
整数環はちょうど
二次体では の整数環が より大きくなることがありました。円分体ではそういうことが起きません。
が整数環の 基底になります[1]。 を添えるだけで整数環全体が手に入る。
という形は、べき基底を持つという強い性質です[1]。
一般の数体では、 が 元のべきで生成されるとは限らない。
ガロア群も単純な形をしています。()が自己同型のすべてで、 となる[1]。可換群なので、円分体はアーベル拡大です。
は完全に潰れる
のとき、 の振る舞いが完全に決まります。 とおくと、単数 があって次が成り立つ[3]。
導き方は に を代入するだけです。 を展開すると項が 個並ぶので、[3]。
いっぽう なので、 を入れて です。
ここで なので、 は整数環の元。 なら となる があり、 と の役を入れ替えると逆向きも整数環の元になります[3]。
つまり は単数です。全部くくり出すと上の式になる。
で確かめると、 本の弦の長さは 、、、 です。掛け合わせるとちょうど になる。
この式から、 がノルム の極大イデアルで、 が完全分岐すること、そして が既約であることまで一度に出ます[3]。 では で、素イデアルが つに潰れます。
分岐する素数は の素因数だけ
の場合の判別式は という形で、 のべきです[1]。 なら指数が に落ち、 なら になります。
一般に、 が で分岐することと であることは同値です[1]。判別式の素因数が の素因数と一致する。
分岐しない素数 の分かれ方も、 を法とする位数だけで決まります。 となる最小の をとると、 は 個の素イデアルに分かれ、どれもノルムが になる[1]。
の素因数だけ。 では で完全分岐
の位数 が分かれ方を決め、 個に割れる
平方剰余の相互法則も、円分体のこの分解則から導けます。 という具体的な群が相手なので、群論の計算に落ちる。
正 17 角形が作図できるわけ
ガウスはゲッティンゲン在学中の 1795 年から 1798 年のあいだに、定規とコンパスで正 角形が作図できることを発見しました[4]。ギリシア以来この分野で最大の前進と呼ばれ、『整数論研究』の第 7 章として公表されます[4]。
理由は円分体の構造にあります。 のガロア群は で位数 の巡回群。 なので、次数 の拡大を 回重ねる形に分解できます。
次拡大は平方根をとる操作で、これは定規とコンパスでできる作業です。 が のべきであることが、そのまま作図可能性になっている。
で分岐する素数はどれですか。
- だけ
- と
- 、、
多項式を割る計算から始めて、整数環の形、分岐、ガロア群、作図問題までが一本につながります。円分体が代数的整数論でくり返し登場するのは、これだけの構造が具体的に書けてしまう場所がほかにないからです。










分岐する素数は n の素因数に限られます。12=22⋅3 なので 2 と 3 が分岐し、5 は分岐しません。52=25≡1(mod12) なので 5 の位数は 2 で、(5) は φ(12)/2=2 個の素イデアルに分かれます。