局所大域原理はどこまで通じるか?すべての素点で解けても足りない
上の方程式が解けるかを調べるとき、 と全部の で調べてから戻る、という道筋があります。
ハッセが 1920 年代に、ミンコフスキーの二次形式の仕事をこの形に整理しました[1]。局所大域原理と呼ばれます。 が大域体、 と が局所体です[1]。
素点は素数の個数だけ、それに 1 つ
上の自明でない絶対値は、通常の絶対値のべきか 進絶対値のべきに限られます[3]。同値なものをまとめた類を素点と呼ぶ。
つまり素点は、素数ごとの有限素点と、通常の絶対値に対応する無限素点の つで尽きます。
素イデアル に対応。完備化は で、非アルキメデス的
実または複素の埋め込みに対応。完備化は か
数体 でも同じ構造です。有限素点は の素イデアルに、無限素点は の実埋め込みと複素埋め込みの対に対応します。
すべて掛けると 1 になる
各素点で正規化された絶対値をとると、 でない有理数について次が成り立ちます。
証明は素因数分解そのものです。 と書くと、、。掛け合わせると打ち消し合います。
で確かめます。、、、。積は です。

積公式は大域体の特徴です。素点が全部そろってはじめて成り立つので、 つでも欠けると崩れる。
二平方和を局所条件に書き直す
古典的な定理を局所の言葉に翻訳してみます。正の整数 が つの平方数の和になるのは、 を割る の素数がどれも偶数回現れるときです[1]。
なら、 のどの元も つの平方の和になります[1]。 が を法として平方なので、ヘンゼルの補題で が で解けるからです[1]。
は が 回なので平方和になりません。 は が 回なので と書けます[1]。
二次形式では原理が成り立つ
ハッセ・ミンコフスキーの定理が、局所大域原理のいちばん整った例です[1]。
を有理係数の二次形式とすると、 が で解けることと、 とすべての で解けることは同値になります[1]。 の非自明解についても同じ[1]。
無限個の条件に見えますが、実際は有限個です。対角形に直したとき、 と、係数の分子か分母を割る奇素数だけを調べれば足ります[1]。
で解を探すより、完備な体で探すほうがやさしい[1]。
近似解を極限で本物の解に直せるため。 にはその手が使えない。
3 次に上がると破れる
次数が 以上になると、局所大域原理は成り立たなくなります[1]。有名な反例がセルマーの方程式です[1]。
と、すべての に 以外の解があります。それでも には自明解しかない[1]。
局所解の作り方を追うと、原理の限界がよく見えます。 では が解[1]。 では 、 とおいて を解き、 が を満たすことからヘンゼルの補題が使えます[1]。
では とおいて 。 なので持ち上がります[1]。 でも でもない については、 ならすべての元が立方数になるので自動的に解けます[1]。
各素点で解を作れる
局所条件はすべて通る
それでも大域解はない
差を測る量が要る
この差を測るのがシャファレヴィッチ・テイト群です。局所大域原理からのずれを群として捉える。
全部の局所体を同時に扱う
素点ごとにばらばらに見るのではなく、まとめて つの環にする道具がアデール環です。制限直積として定義します。
ほとんどすべての有限素点で となる元だけを集める、という意味の直積です。可逆元の全体がイデール群 になります。
はイデール群に対角に埋め込まれ、商 がイデール類群です。積公式が、この埋め込みがきちんと定義できる根拠になっています。
類体論がつなぎ直す
イデール類群は類体論の中心にいます。 の最大アーベル拡大のガロア群と、 のあいだに正準な写像があります[2]。
のヒルベルト類体は、 の中で の像に対応する体です[2]。その商が類群 に同型なので、 が出ます[2]。
局所の情報を全部束ねると、大域のアーベル拡大が再現できる。局所大域原理が定理として成立する、いちばん深い場面です。
ハッセ・ミンコフスキーの定理を使うとき、実際に調べる素点はいくつですか。
- すべての素数と無限素点、つまり無限個
- と、係数に現れる奇素数と、無限素点だけの有限個
- 無限素点だけの 個
素点を全部並べる、局所で調べる、大域へ戻す。 次までなら戻れて、 次からは戻れない。この境目そのものが、現代の整数論の主題になっています。










対角形に直したとき、p=2 か、係数が Zp× に入らない奇素数でなければ、Qp での可解性は自動的に成り立ちます。だから確認が要るのは有限個の素点だけです。