判別式が −20 の正定値な二元二次形式は、変数の変換で移り合うものを 1 つにまとめると、x2+5y2 と 2x2+2xy+3y2 の 2 つしかありません。この個数 2 が判別式 −20 の類数です。
表せる素数もこの 2 つに分かれる。29=32+5⋅22 は前者で書け、7=2⋅12+2⋅1⋅1+3⋅12 は後者で書けますが、いれかえはききません。
二元二次形式と判別式
整数 a、b、c で f(x,y)=ax2+bxy+cy2 と書ける式を二元二次形式といい、D=b2−4ac を判別式と呼びます[1]。a、b、c の最大公約数が 1 のものを原始的な形式という。
D<0 かつ a>0 なら、(x,y)=(0,0) でつねに f(x,y)>0 になります。この形式を正定値と呼び、以降の形式はすべて正定値で原始的なものとする。
b2 を 4 で割った余りは 0 か 1 なので、D も 4 で割って 0 か 1 余ります。D≡2,3(mod4) の形式は存在しない。
x2+5y22x2+2xy+3y2: D=0−4⋅1⋅5=−20: D=4−4⋅2⋅3=−20
同値な形式
行列式が 1 の整数行列で、変数を (x,y)↦(px+qy, rx+sy) と置きかえます。形式の見た目は変わるが、判別式も、表す整数の集合も変わりません[1]。
こうして移り合う 2 つの形式を同値といい、同値な形式の集まりを類と呼ぶ。判別式 D の類の個数が類数 h(D) です。
x2+5y2 の x を x+y に置きかえると、(x+y)2+5y2=x2+2xy+6y2 になります。判別式は 4−24=−20 のままで、x2+5y2 と同じ類に入る。
同じ類の形式は無数にあるため、各類から代表を 1 つ選んで数えます。
被約形式
正定値の形式 ax2+bxy+cy2 は、次のどちらかを満たすとき被約であるといいます[2]。
−a<b≤a<cまたは0≤b≤a=c
どの形式も、ちょうど 1 つの被約形式と同値になる[2]。だから類数 h(D) は、判別式 D の被約形式の個数に等しい。
被約なら ∣b∣≤a≤c だから、∣D∣=4ac−b2≥4a2−a2=3a2 です。
a≤3∣D∣
a に上限があり、b は −a から a までに限られます[3]。c=4ab2−D も決まるため、調べる組は有限個で済む。
形式の根 τ=2a−b+D を上半平面にとると、条件はそのまま図形になります。実部は −2ab で、∣τ∣2=4a2b2+∣D∣=ac です。
例:判別式 −20
a≤20/3≈2.58 なので a は 1 か 2。D が偶数のため b も偶数に限られます。
a=1 なら b=0 で、c=40+20=5。x2+5y2 が得られる。
a=2 なら b は 0 か 2 です。b=0 では c=820 で整数にならず、b=2 で c=84+20=3 となって 2x2+2xy+3y2 が残ります。
被約形式は 2 つで、h(−20)=2。冒頭の 2 つの形式が、そのまま全部の類の代表になっている。
例:判別式 −23
a≤23/3≈2.77 で、D が奇数だから b も奇数です。a=1 から x2+xy+6y2 が、a=2 から 2x2+xy+3y2 と 2x2−xy+3y2 が得られる。
h(−23)=3 になります。2x2±xy+3y2 は (x,y)↦(x,−y) で移り合いますが、この変換の行列式は −1 です。2 つとも被約なので、行列式 1 の変換では移り合わず、別の類として数える[2]。
例:判別式 −56
a≤56/3≈4.32 なので、a は 1 から 4 まで調べます。b は偶数で、−a<b≤a の範囲に限られる。
整数になって a≤c も満たすのは 4 か所で、x2+14y2、2x2+7y2、3x2−2xy+5y2、3x2+2xy+5y2 の 4 つ。h(−56)=4 です。
類数の表
判別式ごとに被約形式を数えると、類数は次のようになります[4]。
∣D∣ が大きくなるにつれて類数も増える傾向があるものの、単調ではありません。−43 でまた 1 に戻り、−47 では 5 になる。
合成と類群
同じ判別式の類の集合には、ガウスの合成で積が入ります。単位元は主形式の類で、ax2+bxy+cy2 の類の逆元は ax2−bxy+cy2 の類です[5]。
主形式 x2+5y2 の値どうしをかけると、ふたたび x2+5y2 の値になる。
(x2+5y2)(z2+5w2)=(xz−5yw)2+5(xw+yz)2
2x2+2xy+3y2 の値どうしの積も、x2+5y2 で書けます。2、3、7 はどれも 2x2+2xy+3y2 の値です。
| 積 | x2+5y2 での書き方 | | 2×3=6 | 12+5⋅12 |
| 3×3=9 | 22+5⋅12 |
| 2×7=14 | 32+5⋅12 |
| 3×7=21 | 12+5⋅22 |
| 7×7=49 | 22+5⋅32 |
2x2+2xy+3y2 の類を 2 回合成すると主形式の類に戻り、判別式 −20 の類群は位数 2 の巡回群になる。
逆元の形から、b=0、b=a、a=c のどれかを満たす被約形式の類は、自分自身が逆元です。ax2−bxy+cy2 を被約にすると、もとの形式に戻るため。
| D=−23 | 2x2±xy+3y2 が互いに逆元で、類群は Z/3 |
| D=−56 | 3x2±2xy+5y2 が位数 4 で、類群は Z/4 |
| D=−84 | 4 つの被約形式がどれも自分自身の逆元で、類群は (Z/2)2 |
D=−84 の被約形式は x2+21y2、3x2+7y2、2x2+2xy+11y2、5x2+4xy+5y2 です。類数が同じ 4 でも、−56 とは群の形が違う。
イデアル類群との対応
判別式 D の形式 ax2+bxy+cy2 に、Q(D) の整数環のイデアル (a, 2−b+D) を対応させます。D が基本判別式なら、この対応で形式の類群とイデアル類群が同型になる[5]。
D=−20 では整数環が Z[−5] で、2x2+2xy+3y2 にはイデアル I=(2, 1+−5) があたります。I の元 2x+(1+−5)y のノルムを 2 で割ると、もとの形式が戻る。
N(2x+(1+−5)y)=(2x+y)2+5y2=4x2+4xy+6y2
I は単項イデアルではありません。単項なら生成元のノルムは 2 ですが、x2+5y2=2 は整数解を持たないため。Q(−5) の類数も 2 で、形式の類数と一致します。
例:x2+5y2 で表せる素数
素数 p が x2+5y2 で書けるのは、p=5 か p≡1,9(mod20) のときに限られる[6]。2x2+2xy+3y2 で書けるのは、p=2 か p≡3,7(mod20) のときです[7]。
p≡11,13,17,19(mod20) の素数は、どちらの形式でも表せない。表せる素数が 20 で割った余りだけで 2 つの形式に振り分けられます。
判別式 −23 の被約形式ではないものはどれですか。
- x2+xy+6y2
- 2x2+xy+3y2
- 3x2+xy+2y2
__RESULT__
3x2+xy+2y2 は a≤c を満たしません。(x,y)↦(−y,x) で置きかえると 2x2−xy+3y2 になり、こちらが同じ類の被約形式です。
素数 61 を表すのはどの形式ですか。
__RESULT__
61 を 20 で割った余りは 1 なので、x2+5y2 で書けます。実際 61=42+5⋅32 です。
被約形式を数えれば類数が決まり、類の積を見れば類群の形まで分かります。
出典
判別式 $-20$ の正定値な二元二次形式は、同値なものをまとめると $x^2+5y^2$ と $2x^2+2xy+3y^2$ の 2 つで、類数は $2$ です。被約形式の条件 $|b| \le a \le c$ から $a \le \sqrt{|D|/3}$ が導け、判別式ごとに有限個を書き出せば類数が決まる。$-23$ では 3 つ、$-56$ と $-84$ では 4 つになり、類群は $\mathbb{Z}/3$、$\mathbb{Z}/4$、$(\mathbb{Z}/2)^2$ と形が分かれます。素数 $p$ が $x^2+5y^2$ で書けるのは、$p=5$ か $p \equiv 1, 9 \pmod{20}$ のとき。
3x2+xy+2y2 は a≤c を満たしません。(x,y)↦(−y,x) で置きかえると 2x2−xy+3y2 になり、こちらが同じ類の被約形式です。