ノルムを体積の拡大率として読む(掛け算写像の行列式とトレース)
複素数 を掛ける操作は、平面の線形変換です。基底 で行列に直すとこうなります。
行列式が 、対角の和が 。この がノルム、 がトレースです。埋め込みを持ち出さなくても、掛け算を行列と見るだけで定義できます。
掛け算写像の行列式と対角和
を環、 を 加群として階数 の自由 代数とします。 に対し、 倍する写像を と書く[2]。
は 線形なので行列で表せます。その行列式をノルム 、対角の和をトレース 、特性多項式を の特性多項式と呼びます[2]。
行列式もトレースも基底のとり方によりません。基底を変えると行列は に変わりますが、どちらの値も相似変換で不変だからです。

図が示すとおり、ノルムは「掛けたときに体積が何倍になるか」を測っています。行列式の本来の意味がそのまま出ている。
コンパニオン行列で計算する
をモニックな多項式とし、 とします。 が基底になり、 の行列はコンパニオン行列です[2]。
この行列の特性多項式は そのものです。だから のノルムは 、トレースは になります[2]。
一般に、特性多項式を と書くと、定数項が 、 つ下の係数が です[2]。
例:手で計算してみる
で基底を にとります。 を掛けると 、。
行列式が 、対角の和が です[1]。共役 を掛けた積と和に一致します。
次でも同じ手が通ります[1]。
| 、 | |
| 、 | |
| の体 | |
| の体 |
のノルムは という形です[1]。埋め込みを つ並べて掛けても出ますが、行列式のほうが機械的に済みます。
共役の和と積として読む
最小多項式が と完全に分解するとき、次が成り立ちます[1]。
のときは、各 が 回ずつ繰り返されます[1]。だから和も積も、いつも 個の項からできている。
の元 については 、 です[1]。とくに になります。
片方は足し算、片方は掛け算を保つ
トレースは 線形、ノルムは乗法的です[2]。
。行列のトレースが和を保つことから出る
。 と行列式の積の法則から出る
乗法性が効くのは分解を絞り込むときです。 なら なので、 の約数にならないノルムの因子は存在しません。
橙の格子は です。もとの格子の中で密度が になっていて、指数がノルムと一致します。
単数はノルムで見分ける
が で可逆であることと、 が で可逆であることは同値です[2]。 が全単射であることと行列式が可逆であることが同じだからです。
なら の可逆元は だけ。だから整数環の単数は の元にちょうど一致します。
で なので、 は単数です。逆元は 。
ケイリー・ハミルトンから、 は を割るという関係も出ます[2]。
の左辺が でくくれる。
トレースは判別式を作る
トレースには、 変数の対称形式を作るという役目もあります。 をトレース形式と呼び、基底で行列にした行列式が判別式です[2][3]。
で確かめます。、、 なので、行列式は 。 の判別式 と合います。
ノルムが元の大きさを測るのに対し、トレースは形式を通じて環全体の形を測っている。同じ行列から出てくる つの値が、別々の役目を持ちます。
で となる元が存在しないことから、何が言えますか。
- は の単数である
- を非自明に分解できない
- は で分岐しない
掛け算を行列として見る。その一手で、共役の積という定義が行列式に置き換わり、乗法性も単数の判定も線形代数の定理として出てきます。












2=βγ と分けられるなら N(β)N(γ)=N(2)=4 で、どちらも 1 でなければ N(β)=2 が要ります。そんな元がないので、2 は既約です。単数はノルムが ±1 の元なので 2 は単数ではありません。