ノルムとトレース - 代数的整数論
数体の元に対してノルムとトレースという2つの重要な写像が定義できます。これらは整数環の構造を調べる基本的な道具です。
定義
を次数 の数体とし、 を の 上の埋め込みとします。 に対し、ノルムとトレースを次で定義します。
これらは の最小多項式の係数と関係しています。 の 上の最小多項式を とすると、ノルムは 、トレースは に等しくなります。
二次体での計算
の場合を考えます。埋め込みは2つあり、、 です。 に対して、
| ノルム | |
| トレース |
複素数での絶対値の二乗 に似た構造が見えます。実際、虚二次体 (d < 0)では となります。
乗法性と加法性
ノルムは乗法的であり、トレースは加法的です。
ノルム
(乗法的)
トレース
(加法的)
特にノルムの乗法性は、元の分解可能性を調べるときに威力を発揮します。 と分解できるなら が成り立つので、 の約数を調べることで分解の可能性を絞り込めます。
整数環への制限
が代数的整数ならば、 と は通常の整数になります。これは最小多項式がモニックな整数係数多項式であることから従います。
逆は一般には成り立ちませんが、二次体の場合は部分的に逆が成り立ちます。 が代数的整数であることと、 かつ であることは同値です。
単数の特徴付け
整数環の可逆元(単数)はノルムで特徴付けられます。 が単数であることと であることは同値です。
これは単数の逆元も代数的整数でなければならないことから従います。 より ですが、両方とも整数なので となります。
例えば では は単数です。実際 であり、 なので の逆元は です。