分数に見える数を整数に数える(代数的数と代数的整数はモニックで分かれる)
黄金比 は分数の形をしていますが、整数の側に入ります。 の根で、最高次の係数が だからです。
いっぽう は整数の側に入りません。同じ「分数に見える数」でも扱いが分かれる。この線引きが代数的整数という言葉の中身です。
係数の条件が 1 か所だけ違う
複素数 が代数的数であるとは、 でない有理数係数の多項式 があって となることです[1]。分母を払えば整数係数にできるので、整数係数で考えても同じ。
そのうち、最高次の係数を にできるものが代数的整数です。最高次の係数が の多項式をモニックと呼びます。
整数係数の の根。 に条件はない
モニックな の根。 に固定される
は の根なので代数的数です。 はモニックですが係数が整数でない。整数係数でモニックなものは作れません。
有理数の中では に戻る
なぜ作れないのか。有理数に話をしぼると、答えは完全に決まります。
を既約分数(、)とし、モニックな整数係数多項式の根だとします。
両辺に を掛けると、分母がすべて払われます。
先頭の項を移すと で、右辺は の倍数です。よって 。
なので と も互いに素、したがって です。 は整数になる。
モニックという条件だけで、有理数のうち残るのは だけになります。
最高次の係数を自由にすると が の根として全部入り、 に戻ってしまう。
「整数」という名前が付いている理由がここにあります。新しい世界に持ち込んでも、もとの世界では と一致する。
最小多項式が次数を決める
を根に持つ有理数係数の多項式のうち、次数が最小でモニックなものはただ つに決まります[1]。これを最小多項式と呼び、その次数を の次数と呼ぶ。
最小多項式は既約です。もし分解できたなら、どちらかの因子がより低い次数で を根に持ってしまう。
| 、次数 、代数的整数 | |
| 、次数 、代数的整数 | |
| 、次数 、代数的整数 | |
| 、次数 、代数的整数 | |
| 、次数 、代数的整数ではない | |
| 、次数 、代数的整数ではない |
最後の つは、最小多項式の係数に整数でない数が残っています。代数的数が代数的整数になる条件は、最小多項式の係数がすべて整数になることだと言いかえられます[1]。
和と積で閉じている
と はどちらも代数的整数です。では はどうか。モニックな多項式を手で探すのは骨が折れますが、線形代数を使うと機械的に出ます。
鍵になるのは、整であることの言いかえです。 が 上整であることと、 が 加群として有限生成であることは同値になる[4]。
をとると、、、、 が生成元です。 を掛けても の外へ出ません。
つの式を係数だけ抜き出すと、整数行列 が立ちます。ベクトル に対して 、つまり です。
の第 1 成分が なので 、したがって 。 は の固有多項式 の根で、この多項式は整数係数でモニックです。
計算すると になります。実際 、 なので、 と確かめられます。
図の つの根は です。 と の符号の選び方が 通りあり、そのまま 次という次数になっています。
同じ手が一般に通ります。、 が代数的整数なら も も代数的整数で、全体が環をなす[4]。この環を と書きます。
体にはなりません。 の逆元 が入っていないためです。いっぽう代数的数の全体 は体で、 の代数閉包になります。
数体はここから作る
の有限次拡大を代数体、または数体と呼びます[2]。二次体 や円分体 がその代表。
数体 を決めたら、 に入る代数的整数だけを集めます。 が の整数環です。

に対する の関係を、 に対して作り直したものが です。図の左下と右下が、同じ操作の つの例になっている。
代数的でない数のほうが多い
代数的数は、次数と係数の組で数え上げられます。整数係数の多項式は可算個で、それぞれの根は有限個。だから代数的数の全体は可算です[3]。
実数は非可算なので、代数的でない数、つまり超越数のほうが圧倒的に多いことになります。カントールはこの比較から超越数の存在を示しました[3]。
具体的な超越数を作るのはずっと難しく、歴史は逆順に進みます。
代数的無理数は有理数で「とてもよく」近似できない、という性質から、具体的な超越数を作る。
が超越数であることを証明する。
が超越数であることを証明し、代数的数の対数についても一般の結果を得る。
が代数的、 が代数的無理数なら は超越数。ヒルベルトの第 7 問題が解ける。
リンデマンの結果は、円積問題に決着をつけました。 が代数的でないので、定規とコンパスで円と同じ面積の正方形は作れません。
について正しいのはどれですか。
- 代数的数でも代数的整数でもない
- 代数的数だが代数的整数ではない
- 代数的数でも代数的整数でもある
条件の違いは係数 か所だけ。それが と の違いをそのまま任意の数体へ持ち上げ、整数論を続けられる場所を作ります。










2x2−1=0 の根なので代数的数です。最小多項式は x2−21 で、定数項が整数になりません。モニックな整数係数多項式の根にはならないので、代数的整数ではない。