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p 進数と p 進絶対値〜有理数の完備化とヘンゼルの補題

、。 で割り切れる回数が多いほど小さい、という物差しです。

この距離で を完備化すると が出ます。 とは別の完備化があり、しかも素数ごとに つずつ並んでいる。

割れる回数を距離にする

素数 を固定します。 でない有理数を ()と書いたとき、 を 進付値と呼びます。

絶対値は と決めます[3]。 とおく。

で が 回
で が 回
で割れないので
で

付値は と を満たします。 つ目を絶対値で書くと、通常の三角不等式より強い形になる。

これを強三角不等式、非アルキメデス的と呼びます。

どの三角形も二等辺になる

強三角不等式からは、直感に反する事実がいくつも出ます。 なら等号が成り立つので、 点のうち 辺の長さが必ず一致する。

球の中のどの点も中心になります。半径が離散的な値しかとらないので、球は入れ子になるか、たがいに交わらないかのどちらかです。

図のように は つの球に分かれ、それぞれがまた つに分かれます。木構造がそのまま距離を表している。

完備化は実数と 進数しかない

の上に絶対値はいくつあるか。答えは意外なほど少ない。

自明でない絶対値は、通常の絶対値のべきか、ある素数 の 進絶対値のべきに限られます[1]。オストロフスキーが 1916 年に示しました[1]。

だから の完備化は か のどれかです[1]。ヘンゼルが 19 世紀の終わりに 進数を作ってから約 20 年後に、その自然さが説明された形になります[1]。

実数

通常の絶対値による完備化。素点は つだけ

進数

進絶対値による完備化。素数の個数だけある

展開は逆向きに無限

の元は級数で書けます[3]。

小数と逆で、負の方向が有限、正の方向が無限です。 は が大きいほど小さいので、この級数はきちんと収束します。

の元を集めたものが 進整数環 です。射影極限としても書けます[3]。

を法とする情報を全部そろえたもの、という読み方になります。

近似を改良し続ける

進の世界では、合同式が近似です。 と が同じ意味になる[2]。

近似を 段上げる手続きがヘンゼルの補題です。1904 年にヘンゼルが証明しました[2]。

と が かつ を満たすなら、 かつ となる がただ つ存在します[2]。

微分が でない、つまり単純根であることが条件です。ニュートン法と同じ構造で、 回の反復で精度が上がっていく。

例: 進の世界で を作る

を で見ます。 なので が根、 なので条件を満たします。

順に持ち上げると 、、、、 と伸びます。 なので、 を法として に一致している。

進展開に直すと です。この無限級数が の中で になります。

には が入り、 にも入る。ところが には入りません。

に解がなく、持ち上げる出発点そのものがない。

数体でも同じことをする

数体 の素イデアル に対しても、 進絶対値で完備化できます。 なら は の有限拡大です。

拡大次数が になり、 が成り立ちます。素イデアル分解の情報が、完備化の次数として現れる。

分岐や分解の議論は、完備化してからのほうが軽くなります。素イデアルが つだけの環になるので、 と同じ扱いができる。

の中に は存在しますか。

  • 存在しない。 は平方数ではないから
  • 存在する。 から持ち上がるから
  • 存在するが、ヘンゼルの補題では作れない
__RESULT__

について 、 です。ヘンゼルの補題の条件を満たすので、 となる で となるものが存在します。

で何回割れるかを距離に読み替える。それだけで、合同式が近似になり、無限級数が収束し、素数ごとに別々の解析の場が立ち上がります。

参考

Keith Conrad, *Ostrowski's theorem for Q*, University of Connecticut
Keith Conrad, *Hensel's lemma*, University of Connecticut
p-adic number - Encyclopedia of Mathematics
$|6|_2 = \frac{1}{2}$、$|48|_2 = \frac{1}{16}$。$2$ で何度も割り切れる数ほど小さくなる絶対値です。$|x+y|_p \leq \max\{|x|_p, |y|_p\}$ という強三角不等式から、球は入れ子か交わらないかの二択になり、$\mathbb{Z}_3$ は 3 分岐の木になる。オストロフスキーが 1916 年に示したとおり、$\mathbb{Q}$ の完備化は $\mathbb{R}$ か $\mathbb{Q}_p$ しかありません。ヘンゼルの補題で $\sqrt{2}$ を $\mathbb{Z}_7$ の中に作ると $3, 10, 108, 2166$ と精度が上がり、$3 + 7 + 2 \cdot 7^2 + 6 \cdot 7^3 + \cdots$ に落ち着きます。