L 関数とディリクレ指標(代数的整数論)
ライプニッツの級数として知られるこの等式は、法 のディリクレ指標に付随する L 関数の での値である。
符号が と交代し、偶数の項が抜けている。この係数の並びが指標であり、 をかけて足したものが L 関数になる。
法 4 の指標を書き出す
と互いに素な整数は、 で割った余りが か である。 の 2 元。
この群から への準同型は 2 つしかない。 なので、 は に限られるからである。
が主指標、 が非自明な指標である。ライプニッツの級数の係数は、 をそのまま並べたもの。
と互いに素でない では値が になり、偶数の項が消える。
ディリクレ指標の定義
正整数 を法とするディリクレ指標とは、群準同型 を、 のとき と定めて 全体へ広げた関数である[1]。
この による拡張のおかげで、性質が 2 つに整理される。
どの についても が成り立つ。互いに素という条件はいらない。
が成り立つ。値は 個の余りだけで決まる。
値は の冪根になる。 は位数 の有限群なので、 が従うためである。
法 の指標は全部で 個ある。有限アーベル群の指標群がもとの群と同型になることから決まる個数。
例:法 5 の指標は 4 つ
は を生成元とする位数 の巡回群である。冪を並べると 、、、。
生成元の行き先を決めれば指標が決まる。 は のどれかで、4 通り。
主指標 はすべて 、残る は の複素共役である。
だけが の値をとる実指標である。 を法とする平方剰余は と で、確かにそこだけ になっている。
これはルジャンドル記号 にほかならない。実指標と平方剰余が結びつくのは偶然ではなく、あとで二次体の話につながる。
直交関係
指標どうしの内積をとると、 か になる。
法 で確かめる。 と の組では 、同じ指標どうしなら である。
向きを変えた形も使う。 を固定して指標全体を足すと、 のときだけ が残る。
法 なら、 で 、 で 。この式が、特定の剰余類だけを取り出すふるいになる。
L 関数の定義
指標 に対して、係数を にしたディリクレ級数を L 関数という。
なので、 で絶対収束する。完全乗法的であることから、オイラー積にも書き直せる[1]。
積は素数全体を走るが、 の因子は で になり、実質は と互いに素な素数だけの積になる。
例:法 4 の L 関数
を入れると、係数が と並ぶ。
オイラー積のほうは、素数を で割った余りで 2 つに分かれる。
を入れた値が である。冒頭の等式は、この L 関数を で評価したものにあたる。

主指標はゼータ関数に戻る
を入れると、 と互いに素な だけを残した級数になる。オイラー積で見ると、 を割る素数の因子を抜いた形である。
は で極を持つので、 も で発散する。有限個の因子をかけただけでは、この極は消えない。
非自明な指標では事情が変わる。級数の符号が交代するため収束がよくなり、 でも有限の値をとる。
原始指標と導手
法 の指標を並べると、この違いが見える。 で、指標は 4 つある。
主指標のほかにもう 1 つ、積 があり、 の値をとる。
表の は、値が だけで決まっている。 と が同じ値、 と が同じ値だからである。
これはさきほどの法 の指標を、法 の指標として読み直したものにすぎない。このように小さい法の指標から来ているものを非原始、来ていないものを原始指標という。
原始指標が属する最小の法を導手という。 の導手は 、 と の導手は である。
L 関数の関数等式や解析接続の形は、法ではなく導手で決まる。非原始な指標の L 関数は、原始指標のものから有限個の因子を抜いただけの形になる。
実指標は二次体から来る
値が と しかとらない指標を実指標という。 をみたす指標のことでもある。
原始的な実指標は、二次体の判別式と 1 対 1 に対応する。基本判別式 に対してクロネッカー記号 を対応させたものが、導手 の原始実指標である。
| 二次体 | 導手 | |
|---|---|---|
が法 の 、 が法 の にあたる。
の値が、 の二次体での分解のしかたを示す。 なら 2 つの素イデアルに分解し、 なら惰性のまま、 なら分岐する。
の符号は指標の偶奇に現れる。 なら偶指標で 、 なら奇指標で になる。
なので、法 の指標は奇指標である。虚二次体 に対応することと合っている。
L 関数が 0 にならないこと
非自明な指標について が成り立つ。これがディリクレの算術級数定理を支える一点である[1]。
法 で筋道を追う。 をとってオイラー積を開くと、素数についての和になる。
2 つを足して で割れば、 で割って 余る素数だけの和が残る。直交関係が符号でふるいをかけた形である。
で は に飛ぶ。 が でなければ は有限にとどまるので、左辺の和も発散する。
発散するということは、 で割って 余る素数が無限にあるということ。一般の法 でも、指標をすべて足し合わせて同じ議論を通す。
指標の直交関係で剰余類を取り出す
オイラー積の対数を素数の和に開く
主指標の項が発散する
残りが有限なら素数は無限個
類数へつながる
実指標では が でないことを、類数公式が保証する。虚二次体 ()では次の形になる[2]。
が類数、 は に含まれる の冪根の個数である。 なら 、 なら 、それ以外は 。
で確かめる。、、 を入れると になり、ライプニッツの級数の値と一致する。
右辺はいつも正なので、 が従う。解析の側の値が、類数という代数の量で書けている。
ヘッケ指標への拡張
ディリクレ指標は 上の話である。一般の数体 でイデアル群の指標を考えたものがヘッケ指標で、対応する L 関数がヘッケ L 関数になる。
で自明な指標をとればデデキントゼータ関数、ディリクレ指標をとればディリクレ L 関数に戻る。解析接続と関数等式は、いずれの場合も同じ形で成り立つ。
法 の指標のうち、導手が でないものはどれか。
が で発散するのはなぜか。
- の極が有限個の因子では消えないため
- 係数の符号が交代しないため
- 主指標の値が の冪根でないため
で、 は に単純極を持つ。かけているのは有限個の因子だけなので、極はそのまま残る。符号の交代は非自明な指標が収束する理由のほうで、主指標にはあてはまらない。
係数を指標に取り替えると、素数を剰余類ごとに数えられるようになる。ライプニッツの級数から二次体の類数まで、同じ 1 本の級数がつないでいる。










χ−4 は nmod4 だけで値が決まり、1 と 5、3 と 7 が同じ値になる。法 4 の指標から誘導された非原始指標なので、導手は 4 である。χ8 と χ−8 は mod8 を見ないと値が決まらないので、導手は 8 になる。