イデアル類群はミンコフスキーの限界より下の素イデアルで決まる
で の分解が 通りになるのは、単項でないイデアルが 種類あるからです。その「 種類」を数える不変量が類数で、この環では 。
類数が なら元の一意分解が成り立ち、大きいほど崩れ方が激しい。 が単項イデアル整域からどれだけ離れているかを測る物差しです。
単項なものを潰して作る
でない分数イデアルの全体 は掛け算について群になります。そのうち ()の形のものを単項分数イデアルと呼び、部分群 をなす[2]。
商群がイデアル類群です。
つのイデアル が同じ類に入ることと、ある について となることは同値です[1]。
作り方は完全列で書くと見通しがよくなります[2]。
から への写像が同型にならない理由が、左の単数群と右の類群の つに分かれている、と読めます[2]。
類群の位数 が類数です。 は が単項イデアル整域であることと同値で、整数環では単項イデアル整域と一意分解整域も一致します。
限界を決めれば計算できる
類群が有限であることは、ミンコフスキーの限界から出ます[2]。どの類も、次の値以下のノルムを持つイデアルで代表される。
は次数、 は複素埋め込みの対の数です。ノルムが有限の値以下のイデアルは有限個しかないので、類群も有限になります[2]。
二次体では式が簡単になります[1]。実二次体なら 、虚二次体なら です。
限界より小さいノルムの素イデアルだけを調べれば、それらが類群を生成します[1]。あとは関係式を探す作業になる。
では限界が で、 にすら届きません。調べる素イデアルが つもないので、その場で類数 が確定します。
限界が を切ると、調べるべき素イデアルが つもなくなる[1]。
虚二次体なら 、実二次体なら のとき。この場合は即座に類数 。
例: の類数を出す
なので限界は です。ノルムが 以下の素イデアルだけを見ればよい。
で 、ノルムは です。候補はこれだけ。
が単項なら となる元が要りますが、そんな整数の組はありません。だから は単項でない。
いっぽう は単項なので、 の位数は です。類群は位数 の巡回群で、 になります。
例: で位数 4 を出す
もう一段複雑な場合を見ます[1]。 で限界は約 なので、 と の上の素イデアルを調べます。
を で見ると 、 で見ると 。だから 、 です[1]。
は にも にもならないので、 も も単項ではありません[1]。
関係式は元のノルムから拾います。 で、 は の倍数ではないので、 と の片方だけで割れる[1]。
そちらを と名づけると が単項になり、 です。 の位数が なので、 の位数は 。類群は になります[1]。

図の緑が単位元、つまり単項イデアルの類です。 を 回掛けると の類にあたり、 回でもとに戻ります。
実二次体では単数が邪魔をする
同じ手順を実二次体でやると、最後の一歩が重くなります。 で見てみます[1]。
で限界は約 なので、 の上を調べます。 の因数分解から 、 で、 と は分解しません[1]。
から が単項になり、 の位数は の約数と分かります[1]。
問題は が単項でないことの証明です。 に解がないと言いたいのですが、 なので平方剰余では矛盾が出ません[1]。
そこで単数を使います。 の単数は で、 のノルムは [1]。ノルムが の正の単数は のべきに限られ、すべて平方数です。
とすると で、単数の平方は括弧の中へ吸収できます。すると となって矛盾する[1]。よって類群は です。
虚二次体では単数が だけ、ときに 個か 個なので、ノルムの方程式に解がないと言えばすみました。実二次体では単数が無限にあり、そのぶん議論を足すことになります。
類数は判別式とともに増える
判別式の絶対値が大きいほど、格子が粗くなって類数も増えやすくなります。ただし単調ではありません。
で急に に跳ね、 で に戻る。判別式が と で、絶対値の大小と類数の大小が逆転しています。
類数 1 の虚二次体は 9 個で終わり
虚二次体で になるのは の 個だけです[3]。この一覧が完全であることの証明には長い時間がかかりました。
最後の には有名な副産物があります。 の整数環が一意分解整域であることから、 が から まで素数を出し続ける[2]。
判別式 が大きいので、ノルムの小さい素イデアルが存在できない。その隙間が、小さい合成数を作れないという形で現れています。
実二次体は分かっていない
実二次体では様子が変わります。 となる体が無限にあると予想されていますが、証明されていません[3]。
いっぽう、与えられた自然数で類数が割り切れる二次体は、実でも虚でも無限に存在することが分かっています[3]。片方だけが未解決という、ねじれた状況が続いている。
類群は拡大として実現する
類群は抽象的な商群ですが、体の拡大として姿を現します。 上の最大不分岐アーベル拡大をヒルベルト類体 とすると、次が成り立つ[4]。
拡大次数が類数そのものになります。 であることと、 に不分岐アーベル拡大がないことが同値[4]。
の中では の素イデアルが完全分解することと単項であることが同値になり、 のどのイデアルも へ上げると単項になります[4]。単項でないという性質が、上の体では解消される。
の類数を求めるとき、調べる必要がある素イデアルはどれですか。
- ノルムが 以下のものすべて
- ノルムが 以下のもの
- と の上のものすべて
限界を計算する、その下の素イデアルを並べる、単項かどうかを判定する、関係式を拾う。この 手順で、抽象的な商群の位数が具体的な数として出てきます。










ミンコフスキーの限界は π220≈2.847 です。どの類もノルムがこの値以下のイデアルで代表されるので、ノルム 2 の p=(2,1+−5) だけを調べれば足ります。