モンテルの定理と正規族

正規族の理論は、正則関数の列がいつ収束部分列を持つかを調べる枠組みだ。実解析におけるアルツェラ・アスコリの定理の複素解析版とも言え、リーマンの写像定理の証明で本質的な役割を果たす。

正規族の定義

領域 上の正則関数族 が正規族(正規家族)であるとは、 の任意の点列 が、 のコンパクト部分集合上で広義一様収束する部分列を持つことをいう。

ここで広義一様収束とは、通常の一様収束に加えて、 への一様収束(発散)も許す概念だ。正則関数の極限として有理型関数が現れる可能性を取り込んでいる。

モンテルの定理

正規族の判定に決定的な役割を果たすのがモンテルの定理である。

を領域 上の正則関数族とする。 の異なる 2 点 , が存在して、すべての を値に取らないならば、 は正規族である。

ピカールの定理

整関数が取らない値は高々 1 つ。真性特異点の近くでも同様。

モンテルの定理

2 つの値を取らない関数族は正規。ピカールの定理の「族版」と言える。

特に有界な正則関数の族は正規族である(, とすれば |f| < M の関数は両方を取らない)。

証明の方針

モンテルの定理の証明には、楕円モジュラー関数 を用いる方法がある。上半平面を に写す被覆写像 を構成し、 を取らなければ は上半平面に持ち上がる。上半平面では双曲計量を用いた評価ができ、正規性が従う。

局所一様有界性

より使いやすい十分条件として、局所一様有界があげられる。

で局所一様有界、すなわち任意のコンパクト集合 に対して \sup_{f \in \mathcal{F}} \sup_{z \in K} |f(z)| < \infty ならば、 は正規族である。

一様有界

領域全体で という評価がすべての で成り立つ。

局所一様有界

コンパクト集合ごとに有界性の定数 が存在する。定数は集合に依存してよい。

この結果は、コーシーの積分公式と対角線論法(カントールの対角線論法)を組み合わせて証明される。

リーマンの写像定理への応用

リーマンの写像定理は、単連結な真の領域が単位円板と等角同値であることを主張する。証明の要点は以下の通りだ。

まず、単位円板への正則単射全体の族 を考え、ある点 での微分の絶対値を最大化する関数を探す。 が正規族であることからモンテルの定理により収束部分列が取れ、その極限関数が求める等角写像となる。

正規族の理論がなければ、この「最大化する関数の存在」を示すことが困難になる。

関連概念:同程度連続

実解析のアルツェラ・アスコリの定理では「一様有界かつ同程度連続」が条件となる。複素解析では、コーシーの積分公式により有界性から導関数の評価が自動的に得られるため、同程度連続性は有界性から従う。これが複素解析における正規族の理論が実解析より扱いやすい理由の一つだ。