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有理型関数はどこまで自由に極を置けるか(ミッタク・レフラーの定理と部分分数分解)

極のほかに悪い点を持たない関数を、有理型と呼びます。

正確には、領域から孤立した点の集まりを除いて正則で、除いた点がすべて極であること。真性特異点も分岐点も許しません[1]

有理関数、、ガンマ関数がその例です。 は原点が真性特異点なので外れる。

多項式に対する有理関数のような位置に、整関数に対する有理型関数があります。分母を持てるようになった、というだけの拡張。

それでも、極をどこにどう置けるかという問いは、思ったより奥があります。

極は孤立していなければならない

上の関数は で極を持ちます。この列は原点へ集まる。

原点を含む領域では、この関数は有理型ではありません。原点のどんな近傍にも極が入るので、原点が孤立特異点にならないためです[6]

原点を抜いた領域なら有理型です。どこまでを領域と見るかで、有理型かどうかが変わる。

孤立という条件から、極は高々可算個。コンパクト集合の中には有限個しか入りません。

体になる

領域が連結なら、その上の有理型関数は体を作ります。和、差、積に加えて、恒等的に でないものによる商も有理型。

商が有理型になるのは、零点が孤立するからです。分母の零点が分子の零点で打ち消されなければ極になり、それだけで済む。

正則関数の全体は環にしかなりません。 が正則でないので、割り算が閉じない。極を許した瞬間に、割り算が使えるようになります。

球面への写像として見る

極での値を だと認めると、有理型関数はリーマン球面への連続な写像になります。

恒等的に でない、球面への正則写像。これが有理型関数のもう 1 つの定義です。

この見方では、極が特別な点でなくなります。値が になるだけの、ふつうの点。

零点と極が対等になるのも同じ事情です。 の極は の零点で、球面の回転で を入れ替えれば移り合う。

球面全体で有理型なら有理関数

領域を球面全体にとると、話が一気に絞られます。

球面はコンパクトなので、極は有限個しかありません。極が無限にあれば集積してしまう。

各極の主要部を集めて引くと、球面全体で正則な関数が残ります。それは有界なので定数。

したがって関数は、有限個の主要部と定数の和。整理すれば有理関数です。球面で有理型な関数は有理関数しかない[4,5]

個数がそろう

有理関数 の次数を とします。このとき、球面上で はどの値もちょうどこの回数だけとる。

も含みます。極の個数も零点の個数も、重複を込めて次数に等しい[7]

上の図の例は です。零点は と無限遠点、極は で、どちらも 2 個。

平面だけを見ると零点が 1 個で数が合いません。無限遠点まで込めて数えると合う。

極を自由に置けるか

零点を自由に置けることは、ワイエルシュトラスの定理が保証していました。極についても同じことが言えます。

極の位置と、そこでの主要部を先に決める。集積点を持たない列でありさえすれば、それを実現する有理型関数が作れます。

これがミッタク・レフラーの定理です[2]。主要部を並べて足すだけでは収束しないので、補正を入れる。

補正の入れ方

主要部を並べた和 は、そのままでは収束しないことがあります。

各項から、多項式を引いて調整します。 のまわりでテイラー展開し、頭のいくつかの項を引く。

は多項式なので、引いても極は増えません。ワイエルシュトラスが指数因子を掛けたのに対し、こちらは多項式を引く。

引く項数を極の位置に応じて選べば、収束させられます。 が遠いほど、少ない項数で足りる。

例:コタンジェント

の極はすべて整数にあり、留数はどれも です。主要部は

そのまま足すと発散するので、 を組にします。

組にすると で、 が大きいところで の程度に小さくなります。これで収束する。

例:

の極も整数にありますが、留数の符号が交互に変わります。

符号が交代するので、組にしなくても収束します。交代級数として扱えるため。

なら極が半整数に並びます。

どれも、極の位置と留数を並べただけで関数が復元されている形です。

整関数の商として

有理型関数は、共通零点を持たない 2 つの整関数の商として書けます。

極の位置を零点に持つ整関数を、ワイエルシュトラスの定理で作って分母にする。掛け合わせると分子が整関数になり、商の形が得られます。

多項式の商が有理関数だったのに対応します。次数が無限でも、同じ構造が保たれる[3]

2 つの定理は対数微分で結ばれる

ワイエルシュトラスは積で零点を作り、ミッタク・レフラーは和で極を作ります。この 2 つは無関係ではありません。

サインの積表示を対数微分すると、コタンジェントの部分分数分解が出てきます。積が和に、零点が極に移る。

一般に、 の対数微分 は、 の零点と極のところに 1 位の極を持ちます。留数はそこでの位数。

だから積表示から部分分数分解が作れ、逆に部分分数分解を積分すれば積表示が復元できます。

極の分布と関数の増大

極が密に並ぶほど、関数は激しく振る舞います。零点と位数の関係と同じ話。

の極は等間隔に並び、半径 の中の個数は に比例します。伸び方はおとなしい。

ガンマ関数の極は負の整数に並び、こちらも個数が に比例します。片側だけに並ぶところが違う。

極が集積してしまうと、有理型の枠から外れます。個数が急に増えるのは、その手前の兆候になる。

値の分布を測る

零点と極を数える議論を、すべての値へ広げた理論があります。ネヴァンリンナ理論と呼ばれるもの。

有理型関数がある値を何回とるかを、増大度と比べて測ります。ピカールの定理が言う例外値も、この枠の中で説明される[8]

有理関数がどの値も同じ回数とる、という性質の一般化にあたります。値ごとの回数の差が、どれくらい小さいかを定量的に押さえる。

よくある誤り

極が集積すると有理型ではありません。孤立が条件です
どこまでを領域と見るかで判定が変わります。原点を抜けば有理型になる例があります
真性特異点があれば有理型ではありません。 が例
球面で有理型なら有理関数。それ以外の関数は球面全体には広がりません
零点と極の個数がそろうのは、無限遠点まで込めて数えたときです
主要部をそのまま足すと発散することがあります。多項式を引いて調整します
コタンジェントの分解は組にして足します。片側ずつでは収束しません
ワイエルシュトラスは零点、ミッタク・レフラーは極。役割が違います

極を許すという小さな拡張で、割り算が使えるようになり、球面への写像として見通しがつき、極の配置を自由に指定できるようになりました。零点の側と極の側が、対数微分でひとつながりになっているところも面白いところです。

参考文献

Meromorphic function - Wikipedia
Mittag-Leffler's theorem - Wikipedia
Weierstrass factorization theorem - Wikipedia
Riemann sphere - Wikipedia
Riemannsche Zahlenkugel - Wikipedia(ドイツ語)
Isolated singularity - Wikipedia
Argument principle - Wikipedia
Picard theorem - Wikipedia
極のほかに悪い点を持たない、という条件ひとつで割り算が閉じ、関数の集まりが体になります。極が集積したとたんに枠を外れるので、どこまでを領域と見るかで判定が変わる。極での値を無限大と認めれば球面への写像になり、零点と極が対等になります。球面全体で有理型なら有理関数しかなく、両者の個数もそろう。後半は、極の位置と主要部を好きに指定できるミッタク・レフラーの定理、コタンジェントや 1/sin の部分分数分解、そして零点を作る定理と極を作る定理が対数微分でつながっていることまで。