楕円関数入門
楕円関数は、複素平面上で二重周期を持つ有理型関数だ。三角関数の一般化とも言え、数論、代数幾何、物理学など広範な分野で登場する。
二重周期性
関数 が楕円関数であるとは、 上の有理型関数で、線形独立な 2 つの複素数 , に対して
を満たすことをいう。, を基本周期と呼ぶ。
実周期を 1 つ持つ()
複素平面で独立な 2 周期を持つ。三角関数の 2 次元版
基本周期から生成される格子 を周期格子と呼ぶ。楕円関数は商空間(トーラス) 上の有理型関数と見なせる。
基本平行四辺形
, , , を頂点とする平行四辺形を基本領域と呼ぶ。楕円関数の振る舞いは基本領域内で完全に決まり、周期性で全体に拡張される。
リウヴィルの定理の系として、定数でない楕円関数は必ず極を持つ。また、基本領域内の極の位数の総和と零点の位数の総和は等しい。
ワイエルシュトラスの 関数
最も基本的な楕円関数がワイエルシュトラスの 関数だ。
は で 2 位の極を持ち、基本領域内で他に極はない。
(, は格子で決まる定数)
任意の楕円関数は と の有理式で表せる
楕円曲線との関係
微分方程式 は楕円曲線を定義する。写像 はトーラス から楕円曲線への同型を与える。
この対応により、楕円関数論と楕円曲線の代数幾何が結びつく。フェルマーの最終定理の証明で有名になったモジュラー形式も、楕円関数と深く関連する。
ヤコビの楕円関数
ワイエルシュトラス流とは別に、ヤコビは , , という楕円関数を導入した。これらは三角関数 , の一般化で、楕円積分の逆関数として定義される。
ここで (0 < k < 1)は楕円モジュラスと呼ばれるパラメータだ。 で , となる。
応用
楕円関数は振り子の厳密解、非線形波動のソリトン解、暗号理論(楕円曲線暗号)など多方面で現れる。複素解析の観点からは、二重周期関数という豊かな構造を持つ典型例として、理論的にも興味深い対象だ。