楕円関数と二重周期、ワイエルシュトラスのペー関数はどこから来るのか
2 つの向きに同じ模様がくり返す関数を、楕円関数と呼びます。
と は比が実数でない 2 つの複素数。三角関数が 1 方向にくり返すのに対し、こちらは平面を埋め尽くすようにくり返します。
条件はもう 1 つ。 が有理型であること、つまり極以外の悪い点を持たないことです[4]。
この 2 つを課すと、関数の形がかなり縛られます。正則なだけの楕円関数は定数しかなく、定数でなければ必ず極を持つ。
周期の格子
と の整数倍を足し合わせた点の集合を、周期の格子と呼びます。
関数は格子ぶんずらしても値が変わりません。だから平行四辺形 1 つの上での値が分かれば、全体が決まる。
この平行四辺形を基本領域と呼びます。とり方は 1 通りではありませんが、面積はどうとっても同じ。
周期の組も 1 通りではありません。格子を張る別の組が無数にあります。本体は格子のほうで、周期の組はその表し方にすぎない。
平面を格子で割ると、輪の面がつながった形になります。楕円関数は、この面の上の関数だと見られます。
リウヴィルの 3 つの定理
二重周期という条件から、強い制限がいくつも出ます。基本領域がコンパクトであることが効きます。
まず、極を持たない楕円関数は定数です。基本領域で有界なので全平面で有界になり、リウヴィルの定理が効く[3]。
次に、基本領域の中での留数の和は です。平行四辺形の周にそう積分が、向かい合う辺で打ち消し合って になるため。
だから 1 位の極を 1 つだけ持つ楕円関数は作れません。留数が打ち消す相手を持てないためです[5]。
したがって定数でない楕円関数の位数は 以上。ここでいう位数は、基本領域の中の極の個数を重複を込めて数えたものです。
零点と極の個数
偏角の原理を平行四辺形の周に当てると、もう 1 つ結論が出ます。
零点の個数と極の個数が、重複を込めて等しい。積分が向かい合う辺で打ち消し合うので、差が になります。
値 をとる点の個数も同じです。 に同じ議論を当てればよく、どの値もちょうど位数の回数だけとられる。
零点の和と極の和の差が、格子の点になる、という主張も同じ筋から出ます。こちらは を積分する形[6]。
ワイエルシュトラスの関数
位数 の楕円関数を、格子から直接組み立てます。
各格子点に 2 位の極を置き、収束させるために を引きます。この引き算がないと和が発散する[1]。
偶関数で、格子ぶんずらしても変わりません。導関数を見ると周期性が確かめやすい。
こちらは格子全体の和で、明らかに周期を持ちます。積分して の周期性が出る、という順序で示せます。
微分方程式
と の間には、代数的な関係があります。
と は格子から決まる定数で、不変量と呼ばれます。アイゼンシュタイン級数から作る。
導き方は、両辺の差が楕円関数で極を持たないと示すこと。原点まわりのローラン展開を比べて、主要部が打ち消し合うように係数を選びます。
極がなければ定数で、 での値を見ると 。したがって等式が成り立ちます。
ローラン展開
原点まわりの展開には、偶数次だけが現れます。 が偶関数だからです。
はアイゼンシュタイン級数で、 と はその最初の 2 つから作られます。
定数項がないところが の定義の効き目です[7]。 を引いたぶん、展開がきれいにそろっている。
楕円曲線
微分方程式を 、 と読み替えると、代数曲線の式になります。
を動かすと、点 がこの曲線の上を動きます。格子で割った面から曲線への写像になっている。
判別式 が でなければ、曲線はなめらか。 になると、曲線に尖った点や交差が現れます。
格子から来る 、 では が保証されます。潰れた曲線は、格子が退化した場合にあたる。
加法定理
を 、 とそれらの導関数で書く式があります。
幾何で読むともっと見やすくなります。曲線上の 3 点 、、 が同一直線上に並ぶ。
分数の部分が、その直線の傾きです。2 点を通る直線と曲線の 3 つ目の交点を求め、上下にひっくり返す、という手順が式になっている。
これが楕円曲線の群構造です。曲線上の点に足し算が入り、無限遠点が単位元になります。
すべての楕円関数は で書ける
同じ格子に対する楕円関数は、 と の有理式として書けます。
偶関数なら だけの有理式。奇関数なら を 1 つ掛けた形になります。一般の関数は、偶部分と奇部分に分ければよい。
証明は、極を打ち消す有理式を作って差を見る流れです。差が極を持たない楕円関数になるので定数。
と が生成元になる、という言い方もできます。格子を決めれば、楕円関数の全体が 1 つの体として決まる。
三角関数との対応
三角関数を思い出すと、対応が見えてきます。 は 1 方向に周期を持ち、 という代数関係で結ばれる。
と も、微分方程式という代数関係で結ばれます。周期が 1 つから 2 つに増えたぶん、関係式の次数が上がった形。
三角関数が円のパラメータ表示を与えるように、 は楕円曲線のパラメータ表示を与えます。円が楕円曲線に置き換わった、と読める。
逆関数の側で見ると、 が平方根の積分だったのに対し、 の逆関数は 3 次式の平方根の積分です。
この積分が楕円積分と呼ばれるもの。楕円関数という名前は、楕円の弧長を求める積分から来ています。
ヤコビの楕円関数
もう 1 つの流儀がヤコビの関数です。、、 の 3 つ。
は の直接の一般化で、 が成り立ちます。 が加わるところが三角関数との違い。
母数と呼ばれるパラメータ を持ち、 で三角関数に戻ります。振り子の運動の厳密解などに現れる。
とは代数的に結ばれていて、どちらからどちらへも移せます。どの流儀を使うかは場面しだい[2]。
周期と不変量の対応
格子を決めると 、 が決まります。逆に を満たす 、 を与えると、それを実現する格子がただ一通り決まる。
格子と楕円曲線が 1 対 1 に対応する、という主張です。数論や代数幾何で楕円曲線が中心的なのは、この対応があるため。
格子を定数倍しても曲線の形は本質的に変わりません。比 だけが効き、さらにモジュラー群の作用で移り合うものは同じと見なします。
よくある誤り
1 方向の周期から 2 方向の周期へ。条件を 1 つ足しただけで、関数の姿が代数曲線と結びつき、群の構造まで現れます。三角関数の次にある世界として、この広がりが楕円関数の面白さです。










