アダマールの3円定理
アダマールの 3 円定理は、同心円上での正則関数の最大値が対数凸であることを主張する。この定理は最大値原理を精密化したもので、関数の増大度を評価する際に威力を発揮する。
定理の主張
を閉環状領域 で正則かつ連続な関数とする。r_1 < r < r_2 に対して
と定義する。このとき は の凸関数である。すなわち
が成り立つ。
は内部で最大値を取らない
が について凸。最大値原理のより精密な評価
幾何学的解釈
3 つの同心円 , , を考える。定理の名前はここに由来する。中間の円上での最大値 は、両端の円上での最大値 , から内挿的に評価できる。
グラフで見ると、 の点を \log r_1 < \log r < \log r_2 の範囲でプロットしたとき、これらの点は両端を結ぶ直線の下側(または直線上)に位置する。
証明の概略
を実数として を考える。 上で なので
となる。最大値原理により、この値は または の円上で達成される。したがって
を適切に選ぶと、両端で等しくなる条件から凸性の不等式が導かれる。
応用:増大度の評価
整関数の増大度を調べる際に 3 円定理が活躍する。 が整関数で とすると、 の に関する振る舞いから、 の位数や型を決定できる。
3 円定理から、 が急激に振動することはなく、滑らかに増大することが分かる。
一般化:n 円定理
3 円定理は任意個の同心円に一般化できる。r_1 < r_2 < \cdots < r_n に対して の点列は凸包の境界上にある。
また、環状領域だけでなく帯状領域版も知られている。帯状領域 \{z : a < \mathrm{Re}\, z < b\} における最大値を とすると、 は の凸関数となる。これをフラグメン・リンデレーフの定理と呼ぶ。
等号成立条件
不等式で等号が成立するのは ( は定数、 は整数)の場合に限る。このとき となり、 は の一次関数(凸でも凹でもない直線)だ。