無限乗積と正則関数の表現
無限乗積は、整関数や有理型関数を零点情報から構成する強力な道具だ。ワイエルシュトラスの因数分解定理の背景にある無限乗積の収束理論を理解しておくと、様々な関数の表示が見通しよくなる。
無限乗積の収束
複素数列 に対する無限乗積 が収束するとは、部分積 が で 0 でない有限値に収束することをいう。
収束の判定には次の基本定理が役立つ。\sum |a_n| < \infty ならば は絶対収束する。ここで絶対収束とは が収束することだ。
が収束するかを調べる
\sum |a_n| < \infty で絶対収束が保証される
対数を用いた解析
無限乗積と無限級数は対数で結びつく。形式的に
が成り立つ。 が小さいとき なので、 の収束と の収束は密接に関係する。
ただし分枝の選び方に注意が必要で、主値対数を取りつつ の変化を追跡する必要がある。
正則関数の無限積表示
領域 上の正則関数列 に対して、 が収束するための条件を考えよう。 と書いて が のコンパクト部分集合上で一様収束すれば、 は 上の正則関数に広義一様収束する。
各 が で正則ならば、積 も で正則。
ならば、積も で零点を持つ。零点の位数は各因子の位数の和。
具体例
三角関数の無限積表示を見てみよう。 は
と表される。両辺の零点は ()で一致し、右辺が収束することは \sum 1/n^2 < \infty から分かる。
同様に
と書ける。 の零点は で、これが因子の零点と対応している。
ガンマ関数の無限積表示
ガンマ関数 は無限積でも表せる。ワイエルシュトラスの表示は
ここで はオイラー・マスケローニ定数だ。 は整関数で、 に 1 位の零点を持つ。
この表示から という相反公式を導くこともできる。
収束因子の役割
単純な因子 だけでは収束しない場合、 や などの収束因子を掛ける。これがワイエルシュトラスの基本因子 の本質であり、零点を保ちながら無限積の収束を実現する仕組みだ。